「相続開始3年前」の贈与の取り扱いは要注意!? 「5つのポイント」をFPが解説!【前編】
配信日: 2022.06.07
この場合、贈与税と相続税が二重に課税されるわけではなく、基本的に支払った贈与税は控除され、最終的に相続税だけが課税されることになります。これは死亡直前に身内に財産を贈与する、いわゆる、かけこみ贈与による節税をけん制したものと言われています。
この記事では、制度の概要と注意点について2回に分けて解説したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
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現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格への加算とは? 基本的考え方と注意点
相続税法 第19条には、以下のような規定があります。
相続や遺贈によって財産を取得した者が、その相続の開始前3年以内に、その相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した上で、相続税の総額や各相続人等の相続税額を計算する。
そして、その贈与によって取得した財産について課せられた贈与税があるときは、相続税額から控除される(これを贈与税額控除という)。原文を読むとややこしいですが、ポイントは次のとおりです。
1. 基本的考え方
被相続人の死亡前の3年以内に贈与した財産には、贈与税ではなく、相続税が課税される。
2. 相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格への加算対象者の範囲
相続税の課税価格の加算の対象となるのは、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受け、かつ、その被相続人から相続や遺贈により財産を取得した人に限られます。
3. 加算対象の財産の評価額
「贈与により取得した財産の価額」とは、その財産に係る贈与時における価額によるものとする。
4. 加算の対象とならない財産の範囲
贈与財産のうち、贈与税の配偶者控除などの非課税措置の適用を受けた部分があるときには、その部分の金額は加算の対象とはならない。
5. 具体的課税の方法
支払い済みの贈与税は、相続後に支払う相続税から控除される。ポイントは以上ですが、それぞれに関する考え方および注意点について、順を追って解説していきます。
基本的考え方
基本的な考え方は、「かけこみ贈与の防止」ということです。資産家の被相続人の臨終間際に、暦年贈与の基礎控除額を利用して相続人である配偶者や子に贈与を行えば、贈与をしない場合と比較して、基礎控除相当分の相続税の支払いを逃れることができます。
また、被相続人が亡くなる以前から定期的に毎年贈与を行っていれば、基礎控除相当分×その回数だけ上記と同様、相続税を免れることができます。
相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格への加算は、そのような相続税逃れについて、少なくとも被相続人が亡くなる前3年以内は防止するために設けられているということができます。
例えば、贈与税基礎控除額の110万円を相続人である配偶者や子に贈与すれば、「110万円×贈与した人数分」だけ相続税の課税価格が少なくなります。
200万円を贈与した場合、贈与税の金額は「(200万円-110万円)×10%=9万円」となり、贈与金額の4.5%で済むので、相続財産の20%~30%の相続税を支払わなければならないような資産家であれば大きなメリットがあります。
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まとめ
今回は、相続開始前3年以内の贈与財産の相続税の課税価格への加算における基本的な考え方を説明しました。次回「その2」では加算対象者の範囲をはじめ、それ以外のポイントについて引き続き解説していきたいと思います。
出典
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー