更新日: 2022.06.07 贈与
親族から古い宝飾品を譲り受けるとき、贈与税の申告は必要?
この場合、宝飾品の価値(時価)によっては、もらった方(孫)が贈与税の申告と納税をする必要があります。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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贈与税について
1月1日から12月31日までの1年間の合計で、基礎控除額110万円を超える贈与を受けた場合には贈与税が発生します。
贈与税の税率は図表1と図表2のとおり、一般贈与財産(一般税率)と特例贈与財産(特例税率)で区分が異なります。
相続時精算課税制度を利用すれば、2500万円までは贈与税はかかりませんが、毎年の110万円の基礎控除は使えなくなります。
●図表1:一般税率
※国税庁 「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」より筆者作成
●図表2:特例税率(18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)
※国税庁 「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」より筆者作成
祖母から大学を卒業した孫への贈与は、18歳以上の者が直系尊属(親や祖父母など)からの贈与で取得した財産にかかる特例税率が適用されますので、例えば譲り受けた宝飾品の時価が500万円の場合には、以下の贈与税が発生します。
贈与税=(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5000円
宝飾品の時価
現金の贈与であれば、その金額で贈与税を計算できます。また、金地金のように流通価格が公表されている物も計算は簡単ですが、宝飾品の時価はどのように評価すればいいのでしょうか。
この点について、国税庁のホームページに「財産評価」ということで説明があります。宝飾品とは記載はありませんが、「一般動産」「書画骨とう品」に関しては以下のように説明されています。
(一般動産の評価)
129 一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平20課評2-5外改正)
(書画骨とう品の評価)
135 書画骨とう品の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
(1) 書画骨とう品で書画骨とう品の販売業者が有するものの価額は、133≪たな卸商品等の評価≫の定めによって評価する。
(2) (1)に掲げる書画骨とう品以外の書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
出典:国税庁 「財産評価」(第6章 動産)
宝飾品の場合も、売買実例価額(実際に売買されている価額)、精通者意見価格(専門家の鑑定結果による価格)などを参考にして評価することになります。
具体的には、買い取り業者や質屋などの査定によることになると思いますが、査定価格はばらつきがありますので、複数の業者の査定が必要です。自分で評価できない場合には、税理士を通じて査定を依頼すると安心でしょう。
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贈与ではなく購入とした場合は?
贈与の場合は贈与税がかかるので、購入にしたらどうでしょうか?
今回のケースで、例えば孫が1万円を払って祖母から時価500万円の宝飾品を購入したという場合、贈与ではないようにみえます。
しかし、この場合には500万円の物を1万円でもらったことになりますので、差額分の499万円が贈与と見なされ、贈与税の課税対象となります。
贈与税の申告と納付手続き
贈与税は、贈与を受けた方が申告と納付をしなければなりません。祖母から孫へ贈与された場合には、孫が贈与税の手続きをすることになります。
・申告と納税の期間
贈与税の申告書の受付期間は、原則として贈与により財産を取得した翌年の2月1日から3月15日までとなっており、提出先は贈与を受けた方の住所地を管轄する税務署です(e-Taxや郵送での提出も可能)。
贈与税の納付についても上記の期間内に行う必要がありますが、税務署や金融機関、コンビニ、クレジットカードでの納付のほか、e-Taxを通じてインターネットで納税の手続きをすることもできます。
・特例税率の適用に必要な書類
基礎控除額(110万円)を差し引いた後の課税価格が300万円を超える贈与で、特例税率の適用を受ける場合には、贈与税の申告書とともに贈与者の直系卑属であることを証明する書類(戸籍謄本など)を提出します。
なお、相続時精算課税制度を使う場合にも、同じ時期に手続きが必要になります。
まとめ
現金の贈与と違って、宝飾品は時価額の評価が難しいことが多くなります。
贈与する側が事前に査定まで行って、「時価額は500万円だよ」ということはめったにないでしょう。高価な物と知らずにもらってしまうと、後日、面倒なことになる可能性も考えられるので注意が必要です。
贈与を受ける側が「その宝飾品が欲しい」ということでなければ、売却して現金を贈与する方が喜ばれるかもしれません。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 財産評価
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士