相続時精算課税制度は有利な反面、制約もある。相続時精算課税制度のメリット・デメリットを解説
配信日: 2022.06.12
2500万円まで非課税なので、早期にまとまった資金を子や孫に贈与できるメリットはありますが、相続時には2500万円の非課税分も含めて相続税を支払わなければならず、制度を一度選択したら撤回ができないという制約もあります。
この記事では、相続時精算課税制度の概要とそのメリット・デメリットについて解説したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
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早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
相続時精算課税制度とは?
1.相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度とは、満60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の子または孫に贈与をする際の制度です。受贈者である子または孫は、2500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者である父母または祖父母が亡くなった時点で、一括して相続税として納税することができます。
相続の際には、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から、相続税額を算出します。相続税額を算出した際、相続税の納税が不要であれば、さかのぼって贈与税がかかることはありません。
ただし、2500万円を超えた贈与には、贈与時に20%の贈与税がかかりますが、相続税を算出する際に、すでに支払った贈与税相当額を控除することができます。 また、贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
2.相続時精算課税制度の適用要件
(1)贈与者は贈与をした年の1月1日において、60歳以上の父母または祖父母であること。
(2)受贈者は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人または孫であること。
(3)贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までの贈与税の申告期間内に、受贈者は、贈与税の申告とともに「相続時精算課税選択届出書」の届け出をすること。)
相続時精算課税制度による税額計算の仕組み
祖父から孫に2000万円を贈与した場合、相続時精算課税制度を利用した時点では、贈与税はかかりません。
数年後、祖父が他界し、相続した資産が5000万円だとすれば、先に同制度を使って贈与された2000万円を加算し、計7000万円の相続財産に対して相続税を計算するということになります。
もし、贈与が3000万円であれば、相続時精算課税制度を利用することで2500万円までの贈与税は非課税、残りの500万円に20%の贈与税が発生します。この支払った贈与税100万円が、相続税が発生した場合の税額から控除されます。
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相続時精算課税制度活用のメリット
贈与者ごとに利用できるため、例えば父母からそれぞれ贈与を受ければ、最大5000万円まで、贈与税は当面発生しません。ただし、父母からの相続時に相続税が発生します。
相続時精算課税制度のメリットとしては、次の点が挙げられます。
(1)課税の繰り延べができること。
(2)父母の両方またはいずれか片方からの相続が基礎控除内に収まれば、最終的に税金を支払わないで済むこと。
(3)相続時に相続財産と合算する贈与財産の価額は贈与時の時価なので、土地や株式等を贈与し、相続時までに評価が上がっている場合、相続財産の圧縮ができ、節税効果が出てくること。
相続時精算課税制度活用のデメリット
相続時精算課税制度活用のデメリットは、次のとおりです。
(1)相続時精算課税選択届出書を一度提出すると、撤回できず、同じ贈与者からの暦年贈与との併用が不可となること。
(2)「小規模宅地等の特例」も利用できなくなること。
この特例は、居住用等の宅地を相続する際、一定の要件を満たしていれば、その評価額を80%減額して税額が算出される規定であり、評価額の高い宅地を相続する可能性のある人は、大きな節税効果がある。
(3)相続時に相続財産と合算する贈与財産の価額は贈与時の時価なので、土地や株式等、価格が変動するものを相続時精算課税制度の対象に選び、その価格が相続時までに値下がりした場合は、相続税の払い過ぎになること。
(4)受贈者を孫にした場合は、相続税が2割増しになる場合がある。
まとめ
相続時精算課税制度を選択する際には、上記に挙げたメリット・デメリットをよく検討して、自分自身や子、孫にとって、どんな方法が最良かを考える必要があります。
相続財産の金額、子や孫にいくら贈与する必要があるかなどをきちんと検討した上で、方針を決定することをお勧めします。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4103 相続時精算課税の選択
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー