相続税・贈与税申告の時効成立は何年? 悪質な場合はどうなる?
配信日: 2022.07.07
実際には、相続税や贈与税の時効成立は容易なことではなく、無申告が発覚した際にはペナルティーも課されます。本記事では、相続税・贈与税の時効の年数や悪質な税金逃れとみなされた場合の取り扱いについてまとめました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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相続税・贈与税の時効は原則5年
相続税の申告・納税期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。一方、贈与税の申告・納税は原則として、贈与があった翌年の2月1日~3月15日となっています。この期間内に申告しなかった場合、加算税の課税などの処分が行われます。
しかし、申告期限から一定期間が経過して時効が成立すると、税務署は徴税や処分を行う権利(徴収権)を失います。相続税や贈与税などの国税の時効は、「国税通則法」という法律で法定申告期限の翌日から原則として5年と定められています。
ただし、次のような場合は時効の成立が猶予されたり時効が更新されたりすることになり、5年が経過しても時効は成立しません。
・催告書や差押予告通知書の送付などによる納付の催告が行われた
・滞納処分による差し押さえが行われた
・差し押さえのための捜索が行われた
・期限後申告、納税の猶予や延納の申請など納税義務者に納付義務を認識していると認められる行為があった
・税金の一部納付
つまり、申告期限の翌日から5年間、税務署側から徴税に関する働きかけが一切なく、納税義務者側からも相談や納税などのアクションを起こさなかった場合のみ、時効が成立することになります。
悪質な税金逃れとみなされた場合の時効は7年
相続税・贈与税申告の時効は、猶予や更新に該当する事項がなければ原則5年で成立しますが、悪質な脱税行為であるとみなされた場合は例外です。
国税通則法では「偽りその他不正の行為」によって税額を逃れた場合、法定納期限から2年間は時効が進行しないことが定められています。つまり、多額の相続財産を意図的に隠して申告しない場合などは、本来の5年+時効が進行しない2年間=7年に時効が延びる可能性があるのです。
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相続税・贈与税を申告・納付しなかった場合のペナルティー
相続税や贈与税を申告しなかったことが判明し、あとから申告・納税する場合、ペナルティーとして本来の納税額に加えて延滞税や無申告加算税が課税されます。
延滞税の税率は、次のとおりです。
・納期限(期限後に申告した場合は申告書提出日)の翌日から2ヶ月経過まで:原則年7.3%
・納期限の翌日から2ヶ月経過以後:原則年14.6%
また、確定申告をしなかった場合の無申告加算税の税率は、本来の税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
また、意図的に財産を隠した、申告・納税義務を知りながら申告を怠ったなどとみなされ悪質と判断されると、無申告加算税の代わりに重加算税が課せられることもあります。重加算税は税率40%と大変重いペナルティーです。
5年または7年の時効が成立すれば、相続税・贈与税の申告・納税の義務はなくなりますが、税務署は独自の資料に基づいて税務調査を行っており、何年もアクションがないことはあまり考えられません。無申告が判明した際のペナルティーは決して軽くなく、納税の負担が増大する可能性が高いでしょう。
たとえうっかり申告期限を過ぎてしまった場合でも、時効の成立を狙って意図的に無申告を続けるようなことは、避けるのが懸命です。
相続税・贈与税の時効は5年または7年だが成立は難しい
相続税・贈与税は申告期限の翌日から5年、または7年が経過すれば時効が成立し、申告・納税の義務がなくなります。しかし、税務署から催告などの働きかけがあれば時効の猶予や更新が行われること、細やかな税務調査が実施されていることを考えると、時効はそう簡単には成立しないでしょう。
意図的な無申告は脱税行為であるうえ、無申告が判明すると重いペナルティーが課せられるリスクがあります。時効の成立を狙ったりすることなく、相続税・贈与税は正しく申告しましょう。
出典
国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税
e-Gov法令検索 国税通則法
国税庁 第72条関係 国税の徴収権の消滅時効
国税庁 No.9205 延滞税について
国税庁 相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部