更新日: 2022.07.23 相続税
不動産を活用した相続対策とは? メリットを解説
相続対策として不動産を活用した方法は、最も人気な方法です。不動産の購入費用は高いですが、その分、相続税の減少効果も大きいです。
また、一口に不動産を活用した節税対策といっても、さまざまな方法があり、自身の資産状況やリスク許容度に応じて、活用方法を決定できます。
この記事では、不動産を活用した相続対策や相続税の減税効果について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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なぜ不動産が相続対策になるのか
不動産を使って相続対策をする方法はいくつかありますが、そのほとんどが、不動産の評価方法が現金と異なることを利用しています。
例えば、1億円の現金の価値は1億円です。相続が発生して、相続財産に現金1億円があれば、相続税の評価額も1億円です。
しかし、不動産の場合は異なります。不動産には、時価があります。時価とは、その不動産を現時点で売却したときの売却価額です。不動産の相続税の評価額は時価よりも低くなります。
つまり、1億円の不動産が相続財産に含まれていると、相続財産1億円とはみなされず、時価×70%~80%に換算されます。したがって、1億円を現金で持っているよりも、不動産で持っている方が相続財産を圧縮し、相続税を減らすことができるのです。
相続税では、課税額が高いほど適用される税率が上がる累進課税方式が採用されているので、評価額を抑えられれば大きな効果があります。
不動産を活用した相続対策とメリット
上述のとおり、不動産を活用した相続対策のほとんどは、現金と不動産の評価額の差を巧みに利用したものです。
ただし、それぞれ方法はメリットが少し異なるので、詳しくみていきましょう。
現金で不動産を購入する
不動産の評価額を算定する方法を活用した、最も単純な方法です。
不動産のうち、建物は固定資産税評価額が相続税評価額となり、時価の7割程度です。土地は路線価方式や倍率方式などが用いられますが、おおむね時価の8割です。
例えば、現金2000万円でワンルームマンションを購入したとします。現金2000万円を持っていると、相続税評価額は1億円ですが、不動産であれば、おおむね1500万円程度になります。相続税評価額を500万円下げることに成功します。
相続税率は図表1のとおりです。
図表1
相続財産評価額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
国税庁 相続税の税率
日本の相続税は累進課税ですので、500万円の効果がいかに大きいかが分かります。相続財産の金額が大きいほど、不動産を購入することによる節税効果は大きいです。
不動産を賃貸する
不動産を保有しているだけではなく、賃貸すると、相続税評価額をさらに下げることができます。すでに不動産を所有している場合、またはこれから購入する場合でも活用できる相続対策です。
例えば、住居を賃貸していると、賃借人は借地借家法の保護を受けます。これは賃借人の保護を目的としており、賃貸人の契約の更新や立ち退き要求の権利を制限しています。
このため、不動産を所有者の思うとおりに使用したり、処分することが制限されるので、活用の選択肢が限られるということで、資産価値および相続税評価額が下がります。下がる割合は借地権割合といわれ、全国で一律で30%の評価減が適用されます。
ただし、賃貸では、「空室リスク」があります。空室があると、賃貸収入が得られないだけではなく、相続時に評価額を計算するときに借地権割合が差し引かれます。そのため、30%よりも低い効果しか得られないのです。
住宅ローンを組んで不動産を購入する
不動産が相続時に低い評価額で評価されることを利用した方法以外にも、不動産を活用する方法があります。
不動産を購入するときに住宅ローンを組んで購入しましょう。この場合、借入金の分だけ相続財産から控除されます。
例えば、自己資金2000万円のときに住宅ローン2000万円を借り入れて、4000万円の不動産を購入したとしましょう。相続発生時の相続財産について、現金が1000万円、不動産4000万円×評価割合70%=2800万円、残債1000万円とします。
このときの相続財産は1000万円+2800万円-1000万円=2800万円となります。このように借入金がマイナス計上され、結果として相続財産が圧縮されるのです。
ただし、この方法には注意点があります。不動産投資用の金利は通常の住宅ローンと比べて高いので、金利が負担になります。純粋に不動産投資だけで見た場合、自己資金をメインに購入する方がいいでしょう。
小規模宅地等の特例を利用する
小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住もしくは賃貸、事業の用に供していた土地について、一定の要件を満たす人が相続したときに相続税評価額を最大80%減額できる制度です。
また、賃貸収入を目的とする投資不動産については、貸付事業用宅地として200平方メートルまで評価額を50%減額できます。
種類 | 用途 | 限度面積 | 減額率 |
---|---|---|---|
特定居住用宅地等 | 自宅 | 330平方メートル | 80% |
特定事業用宅地等 | 事業用(工場や店舗) | 400平方メートル | 80% |
貸付事業用宅地等 | 賃貸 | 200平方メートル | 50% |
例えば、時価1億円、相続税評価額が7000万円の賃貸用の土地を相続するときに小規模宅地等の特例を適用すると、80%が減額されて、評価額は1400万円となります。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4602 土地家屋の評価
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4155 相続税の税率
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4126 相続財産から控除できる債務
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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