信託銀行等で遺言書のサポートしてくれる「遺言信託」とはどんなサービス?
配信日: 2022.10.17
遺言書の作成から執行までをサポートする「遺言信託」は、信託銀行や大手銀行などが取り扱っています。本記事では、遺言信託のサービス内容や費用の目安、申し込み方法と利用の流れなど、基本的な情報をまとめました。相続対策を考えている人は、選択肢のひとつとしてチェックしてみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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遺言書の作成から執行までをサポートしてくれる「遺言信託」とは
「遺言信託」とは、信託銀行などの金融機関が提供する遺言書の作成や保管・執行などを総合的にサポートするサービスです。遺言信託には、主に次のようなサービスが含まれます(銀行によって詳細は異なる)。
■遺言書(公正証書遺言)の作成
依頼者や弁護士、税理士などの専門家と相談しながら、公正証書遺言を作成するサービスです。
■遺言書の保管
作成した公正証書遺言の正本・謄本を信託銀行などの金融機関で保管するサービスです。 遺産の対象になる有価証券や不動産の権利証なども貸金庫に預けられます。
■遺言書の交付
事前に届け出ておいた通知人が相続開始の事実を伝えると、信託銀行などから遺言書を届けてもらえます。
■遺言書の執行
相続が開始された場合に、信託銀行などの金融機関が遺言書の内容にもとづいて、遺産を分割します。
遺言信託を利用すると、遺言書作成から遺産分割までの一連の手続きを、プロのサポートを受けながらスムーズに執り行えます。
遺言信託の費用の目安
遺言信託を信託銀行などの金融機関に依頼すると、次のような費用がかかります。
●基本手数料(当初手数料)
●保管料(管理料)
●遺言執行報酬
●変更取扱手数料:書き換え時
●その他:公正証書作成費用、戸籍謄本の取得費用、印鑑証明書等発行手数料などの実費、解約手数料など
信託銀行などの金融機関の遺言信託サービスでは、最初に基本手数料を多く支払って遺言書執行時の報酬を低く設定したタイプと、最初の基本手数料を低く抑えて遺言書執行時の報酬を高く設定したタイプの2通りから選べるケースが多く見られます。
両方のタイプの費用の目安を、図表1にまとめました。
【図表1】
基本手数料が高いタイプ | 執行時報酬が高いタイプ | |
---|---|---|
基本手数料 | 88~110万円程度 | 20~30万円程度 |
保管料 | 年間5500~6600円程度 | |
遺言執行報酬 | 相続税評価額の0.3~2.2%程度 (最低報酬額30~80万円程度) |
相続税評価額の0.3~1.1%程度 (最低報酬額100~170万円程度) |
変更取扱手数料 | 5万5000円程度 |
図表1から分かるように、どちらの料金タイプを選んでも、費用総額に大きな差ができない料金設定になっているのが一般的です。
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遺言信託の申し込み方法と利用の流れ
遺言信託の申し込みは、各銀行で行えます。申し込みから遺言が執行されるまでのおおよその流れは、次の通りです。
1.事前相談
2.申し込み
3.公正証書遺言の作成
4.遺言執行引受予諾契約の締結と通知者の指定
5.遺言書を保管
6.定期照会
7.遺言者が死亡、相続開始の通知
8.遺言の執行
遺言信託を申し込む際は、各銀行で事前相談をしましょう。相談では推定相続人との関係、財産の内容などについて確認されることがあるため、確認できる資料を用意しておくと安心です。
遺言書の内容を決めて正式に申し込み、それにもとづいて依頼者が公証役場で公正証書遺言を作成する流れになります。公正証書遺言を作成したのちに、銀行との間に遺言執行引受予諾契約を締結し、遺言書を銀行に預けます。また、契約時には遺言者の死亡による相続開始を銀行に知らせる通知者の指定が必要です。
契約後は、銀行から定期的に財産の異動、相続人、相続開始通知者の状況に変更がないかなどの照会が行われます。遺言者が亡くなり相続が開始した旨を通知者が銀行に伝えると、銀行は遺言執行者に就き、遺言を執行します。
遺言信託はプロのサポートで安心を得られるが費用は高額
遺言信託を利用すると、遺言書の作成から執行まで一貫してプロのサポートを受けられます。そのため、手続きに自信がない人や相続がスムーズに行われるよう生前に段取りしておきたい人にとっては、大きな安心が得られるでしょう。
ただし、費用に関してはトータルで200万円以上かかるケースが多く、気軽に申し込むには高額です。サービス内容をよく理解したうえで、コストパフォーマンスを考慮して利用を検討するとよいでしょう。
出典
一般社団法人全国銀行協会 教えて!くらしと銀行 知ってる?銀行で「遺言」のお手伝い
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部