更新日: 2022.10.18 その他相続

相続対策に有効 「不動産小口化商品」ってどんなもの?

相続対策に有効 「不動産小口化商品」ってどんなもの?
2015年に相続税の基礎控除額が縮小されて以来、相続対策の手法がさまざま出現しました。その1つとして、不動産小口化商品というものがあります。その仕組みと、最近注目されている理由を考えます。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

不動産小口化商品の仕組み

不動産小口化商品は、あまり知名度は高くないかもしれませんが、相続対策に使える手法として関心があるという人もいらっしゃるでしょう。不動産小口化商品は金融機関の店頭に並ぶようなものではなく、不動産特定共同事業として国土交通大臣または都道府県知事が許可した事業者が運営しています。
 
投資対象の不動産は、主に都心のオフィスビルや商業ビルなどです。投資家は、この所有権を小口化した商品を保有し、家賃収入を分配金として得ます。少額の資金で不動産投資ができること、大型物件に投資できることなどのメリットがあります。
 
「任意組合型」と「匿名組合型」がありますが、相続対策として利用されているのは「任意組合型」です。持ち分所有することになるので、相続財産としての評価方法が現物不動産と同様になります。出資金額は1口100万~1000万円で、事業者により例えば「1口100万円で5口以上から購入」などの規定があります。
 

節税対策~不動産で圧縮効果を狙う

一般的に相続対策と呼ばれるものは、

(1) 相続人の間でもめごとが起きないようにする争族対策
(2) 相続税の節税対策
(3) 相続税の納税資金を用意する対策

の3つです。
 
(2) の対策は、相続財産をどのような形で残すのか、評価額を下げることがポイントになります。ご存じのとおり、現預金ではなく財産を不動産に換えることで圧縮効果は得られます。相続税を計算する場合、現預金1000万円の評価額は1000万円です。その資金で土地を購入したり賃貸物件を建てたりすることで評価を下げることは、以前から存在した手法です。
 
タワーマンションを使った節税対策もあります。駅近など立地条件が良いことが多いので市場価値が下がりにくく、相続後に売却する、あるいは賃貸物件として活用するにしても利用価値は大きいです。特に高層階は節税効果が大きいことで人気を博しましたが、評価額に関して調整が行われたことは記憶に新しいです。
 
不動産小口化商品は現物不動産ではありませんが、税務上は同様に扱われることから、相続税課税額を圧縮する効果があります。現物不動産の購入に比べて少額の資金で実践しやすいことや、流動性が高い点が評価されていると思います。
 

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争族対策 ~分けやすいカタチで遺す~

「相続財産は自宅不動産と少しの貯金です」これは争族になりやすい財産の典型的な例とされています。前章で書いたように、相続財産として不動産を保有することは節税対策としては有効ですが、複数の相続人の間で“分ける”ことに関してはリスクになる可能性が高いです。
 
相談者の70歳代のAさんは、一戸建ての貸家を持っています。老朽化してきたこともあり、売却するか否かを悩んでいます。将来は2人の息子に引き継ぎたいという思いはありますが、共有財産として相続させることは避けたいです。2軒のワンルームマンションに買い替えることも考えているそうです。とはいえ、希望の物件を見つけることは簡単ではありません。
 
そこで、不動産小口化商品についてお話をしたところ、新しい選択肢が増えて安心されたようでした。
“分割しやすい”というのは、遺す財産としては有望です。“現物”不動産を遺されて、うれしい相続人ばかりではなく、なかには「管理が面倒」などと感じる相続人もいます。どのような形で遺すのかは、相続人と話し合うことも必要です。
 
最後に、不動産小口化商品のデメリットには下記のようなものがあります。

●金融商品のような福利効果はない
●管理などの手間が掛からない分、現物不動産投資より利回りは低め
●中途解約できない場合がある
●元本や分配金は保証されていない

商品の仕組みを知っておくことで、相続対策に役立つのではないでしょうか。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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