更新日: 2022.11.14 その他相続

養子縁組を解消したら「財産相続」はできない?

養子縁組を解消したら「財産相続」はできない?
家族のあり方はさまざまです。財産や家業、名字などを維持するため養子縁組を検討されている人もいらっしゃることでしょう。
 
子どもがいないので家を継ぐ子がほしい、同居で世話になっている息子の妻にも財産を相続させたい、名字を継いでくれる孫を養子に迎えたいなど、養子縁組をする理由は人それぞれです。一方、養子縁組をしたものの、関係が悪くなってしまい養子縁組を解消するケースもあるかもしれません。
 
養子縁組をすると相続にも大きな影響があります。本記事では、養子縁組と相続の関係について紹介していきます。
伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

養子縁組とは

養子縁組とは、親子としての血縁関係にない両者が法律によって親子関係を結ぶことをいい、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
 
普通養子縁組は、養親と養子に制限が少なく、養子が成年の場合は両者の同意によって養子縁組が成立します。養子が未成年の場合は、家庭裁判所に「養子縁組許可」を求める審判を申し立てる必要があります。
 
ただし、自己または配偶者の直系卑属(子や孫など)を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は必要ありません。なお、どちらの場合も実父母との親族関係は継続します。
 
特別養子縁組は、養親は原則25歳以上で配偶者があること、養子は原則15歳未満(令和2年4月1日民法改正施行)であることなどの要件を満たした上で、家庭裁判所に申し立てし認められる必要があります。普通養子縁組と異なり実父母との親族関係は終了し、離縁する際にも厳しい要件があります。
 

法定相続人の範囲と養子

民法では亡くなった人(被相続人)の遺産を相続する人を定めており、それを法定相続人といいます。
 
まず、被相続人の配偶者は常に法定相続人となります。ただし、内縁関係の人は含まれません。配偶者以外の法定相続人は、相続順位に従って定められます。
 
第1順位は、被相続人の子どもです。その子どもが既に亡くなっている場合は、その子どもの子ども(孫)が、その孫も亡くなっている場合はひ孫が相続人になります。養子は、この第1順位の子どもに当てはまり、実子と同じく法定相続人となります。
 
第2順位は、被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)です。父母も祖父母もいる場合は父母を優先します。被相続人に第1順位の人がいないときに法定相続人となります。
 
第3順位は、被相続人の兄弟姉妹です。その兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その人の子どもが相続人になります。被相続人に第1順位の人も第2順位の人もいないときに法定相続人となります。
 
被相続人に配偶者と子どもがいる場合は、両方が法定相続人になります。子どもがいない場合は、配偶者と直系尊属または兄弟姉妹、既に配偶者が亡くなっているときは直系尊属または兄弟姉妹が法定相続人になります。
 

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養子の法定相続分

民法では法定相続分として、遺産を引き継ぐ割合が定められています。
 
配偶者と子ども(第1順位)が相続人である場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1です。子どもが2人以上いるときは遺産の2分の1を均等に分けます。また、実子と養子で相続分に違いはありません。
 
配偶者と直系尊属(第2順位)が相続人である場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。直系尊属が2人以上いるときは遺産の3分の1を均等に分けます。
 
配偶者と兄弟姉妹(第3順位)が相続人である場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。兄弟姉妹が2人以上いるときは遺産の4分の1を均等に分けます。
 
なお、上記の法定相続分に必ずしも従う必要はなく、遺言や遺産分割協議などで法定相続分と異なる分け方をすることも可能です。
 

養子縁組を解消したら……

何らかの事情で養親と養子との関係が悪くなり、養子縁組を解消することもあるかもしれません。
 
普通養子縁組の場合、両者の話し合いでまとまれば、離縁の届け出をすることで養子縁組関係は解消します。もし、話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合は、家庭裁判所で離縁調停をすることができます。一方、特別養子縁組の場合、離縁は原則として認められていません。
 
離縁が成立して養子縁組を解消した場合、養親と養子との親子関係はなくなります。したがって相続の権利もなくなり、遺産の相続はできなくなります。
 
相続では、相続人や関係者のさまざまな思いが交錯することがあります。養子縁組をするときは、将来のことや相続のこともよく配慮し、検討するようにしましょう。
 

出典

政府広報オンライン 普通養子縁組と特別養子縁組とは?
厚生労働省 特別養子縁組制度について
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

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