更新日: 2022.12.13 その他相続

もう地元に戻ることないけど・・・お墓ってどうしたらよいの?

執筆者 : 田久保誠

もう地元に戻ることないけど・・・お墓ってどうしたらよいの?
日本では少子化・核家族化とともに、今でも地方から都市部に人口が流出しています。地方出身の方でも都市部にマイホームを構えて、もう地元に戻らないという方もいらっしゃると思いますが、その際に気になるのが実家(家)やお墓ですね。
 
特に兄弟姉妹がいない場合で親族が地元にいないとなると、誰がどのように管理すればよいのか、そもそも相続放棄ができるのか、気になりますよね。今回は、「墓じまい」などについて見ていきましょう。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

お墓は相続放棄できるの?

相続放棄を行う場合は、相続人は相続開始を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申し出をしなければなりません。しかし、実は、お墓は相続財産には含まれません。仏壇や仏具等も同様です。よって、これらは税金(相続税)の計算にも算入されません。
 
また、お墓や仏壇・仏具等は遺産分割協議で分けるものでもありません。
 

お墓を相続するのは誰になるの?

お墓を相続するのは祭祀承継者です。祭祀承継者とは、その家系で代々受け継がれている「祭祀財産」を承継し、祖先の祭祀を主宰する者で、祭祀財産は系譜、祭具および墳墓の3種類に分けられ、この中の墳墓にお墓は含まれます。
 
この祭祀承継者は、被相続人に指定されたもの、その指定がない場合は慣習、その慣習が明らかでない場合は家庭裁判所が決定しますので、相続とは直接関係ありません(民法897条)。
 

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もし祭祀承継者に指名されていたら? 拒否はできるの?

被相続人から祭祀承継者として指名された場合、法律上は、祭祀承継者への就任を拒否することはできません。また、祭祀財産は相続財産ではないため、相続放棄もありません。
 
しかし、被相続人が所有していた祭祀財産は、祭祀承継者の所有物となります。つまり、自身の所有物ですので、祭祀承継者はその財産を自由に処分できます。つまり、ここでいわゆる「墓じまい」が選択肢となります。
 

「墓じまい」の方法は?

厚生労働省の「令和元年度衛生行政報告例」によると、墓じまい(改葬)は年間約12万5000件ですので、決して少ない数ではありませんし、毎年その件数は増えています。「墓じまい」の方法には主に、(1)自分の居住地の近くにお墓を用意して移す、(2)永代供養墓に移す・散骨等の2種類があります。
 
実際の「墓じまい」の手続きは、おおよそ下記のような流れになります。
 

(1) 移転先の墓地や寺を決め「受入証明書」を受け取る
 
(2) 現在の墓地管理者に改装を伝え「埋葬証明書」を受け取る
 
(3) 現在の墓地がある市区町村から「改葬許可申請書」を受け取り、それを現在の墓地や寺に「改葬許可申請書」の墓地管理者の欄に署名捺印当してもらう
 
(4) 現在の墓地のある市区町村に改葬許可を申請して「改葬許可証」を受け取る(このとき受入許可書が必要になる場合があります)
  
(5) 移転先の墓地管理者から使用許可書を受け取る
  
(6) 現在の墓地管理者に改葬許可証を提示して、遺骨を取り出し原状回復(墓石の処分・更地等)して返還する
  
(7) 新しい墓地管理者に改葬許可証明証を提出し遺骨を納める、あるいは散骨等する

 

「墓じまい」の費用は?

「墓じまい」をする際に、費用がかかる項目の一例は以下のとおりです。
 

●改葬許可書
●墓石等の撤去費用
●閉眼法要
●納骨費用
●離檀料
●永代供養であればその費用
など

 
改葬許可書等の手数料は各自治体によって異なります(無料の場合もあります)し、その他の費用も墓地の広さや地域によってもまったく違ってきます。もし、墓地がある地域で「墓じまい」をしたことがある方を知っていれば、その方に相場を聞くのもよいかもしれませんね。
 

親族や墓地管理者とよく話し合おう

「墓じまい」はご自身ひとりで決められる問題ではありません。家族だけでなく、親族にも相談する必要がありますし、もちろん墓地管理者との話し合いも必要です。もし、親族の中で祭祀承継者になる方がいらっしゃったら、その方にお願いすることもできます。
 
なかなか難しい問題ですので、ご自身ひとりで判断できないこともいろいろあると思います。また、利便性や経済合理性よりも、墓参りをすることが自分のルーツを再確認する方法だという方もいらっしゃいます。可能な限り家族全員が納得できる結論を出すことが、トラブルを避ける方法だと思います。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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