更新日: 2023.03.13 遺言書

【遺言書なしが9割】もし遺言書が残されていたら、遺族は「必ず」従わなくてはいけないの?

【遺言書なしが9割】もし遺言書が残されていたら、遺族は「必ず」従わなくてはいけないの?
遺産相続の際、故人が遺言書を残しているかどうかで遺産の分配は大きく変わります。遺言書がない場合は、法定相続人で分配することになりますが、ある場合は故人の意向に従うのが一般的です。しかし、中には理不尽に思える内容の遺言書もあるかもしれません。
 
本記事では、遺言書が残されている場合、必ず守らなければならないのかどうかについて解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

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遺言書がないケースはおよそ9割

ひまわり司法書士法人(千葉県印西市)が相続経験者569人を対象にインターネットで行った相続手続きに関する調査によれば、「あなたの親は遺言書を残していましたか?」という問いに対し、91.3%が「いいえ」と回答しています。つまり、遺言書をもとに遺産相続をしているケースは、1割にも満たないということです。
 
遺言書がない場合は、法律で定められた相続人(法定相続人)で遺産を分配することになります。法定相続人には順位が決められており、故人の配偶者は常に相続人で、第一順位は子と配偶者、第二順位は直系尊属と配偶者、第三順位は兄弟姉妹と配偶者が故人の配偶者と一緒に相続人となります。
 
直系尊属とは父母や祖父母、曽祖父母などを指しますが、姻族は含みません。姻族とは、婚姻関係によってつながりができた親族のことです。例えば、故人の両親は法定相続人として認められますが、配偶者の両親は相続の対象から外れます。
 

遺言書の効力は絶対なのか?

遺言書がある場合は、その内容に従って遺産相続を行うのが原則となっています。遺言書は、故人が自分の資産をどのように分配したいか、誰に相続してほしいかを意思表示したものです。
 
例えば、何か事業を行っていたり思い入れのある不動産を所有していたりするときは、自分が希望する人に引き継いでほしいと考える人もいるでしょう。遺言書が存在している以上、故人の意思を尊重して遺産の分配をしなければなりません。
 
もしも、遺言書の内容に異議がある場合は、裁判所に申し立てして無効にしてもらうことも可能です。ただし、申し立てすれば必ずしも無効にできるわけではなく、慎重に審議したうえで決定されます。
 
遺言書については、無効と判断されるかどうかはケースによってさまざまです。例えば、令和3年の札幌地方裁判所のケースでは「署名押印がないワープロ作成による遺言書」に対して、無効とはいえないという判決が出されています。
 
また、平成13年の東京高等裁判所のケースでは、ワープロ作成で遺言者の氏名が入っていても、代理で作成した筆者の氏名を述べなかったために無効とされています。東京高等裁判所の判決で決め手になったのは、民法970条1項3号に該当していなかったためです。
 
民法第970条とは、秘密証書遺言に関する項目で、1項3号には「遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること」と書かれています。
 

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不都合な遺言書は相続放棄も可能

遺産は、プラスだけではなくマイナス部分も相続することになります。そのため、故人に借金などが残っている場合は、返済の義務も負わなければなりません。たとえ遺言書に相続人として書かれていても、借金があれば喜べない人は多いでしょう。プラスの財産とのバランスを考えてもマイナス部分が多いときや、相続したくない不動産などがある場合は、相続そのものを放棄することも可能です。
 

遺言書に異議や問題がある場合は速やかに対処を

遺言書が残されているときは、その内容に沿って遺産相続を進めるのが原則となっています。しかし、本来相続すべき立場の人が外されているなど、遺族のなかには納得いかないこともあるでしょう。または、マイナスの財産が多いために相続から外れたい人もいるかもしれません。遺言書が残されていてその内容に異議や問題があるときは、裁判所に申し立てするなど速やかに対処することが求められます。
 

出典

ひまわり司法書士法人 相続手続きに関する調査
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
国税庁 民法の相続制度の概要
裁判所 裁判例結果詳細 下級裁判所裁判例速報
裁判所 裁判例結果詳細 最高裁判所判例集
e-GOV 法令検索 民法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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