共有者の1人が所在不明で売却の同意が得られません。何か方法はありますか?

配信日: 2023.03.12

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共有者の1人が所在不明で売却の同意が得られません。何か方法はありますか?
2024年4月からスタートする「相続登記の義務化」を前に、1年前の2023年4月1日より民法改正による共有制度の見直しが施行されます。昨今顕在化している「所有者不明土地」や「所在等不明共有者」などの問題を踏まえ、共有物の変更、処分、管理に関する規定の見直しがされています。
 
ここでは、2023年4月からの共有制度の見直しルールについて確認してみたいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

相続登記の義務化を前に

現在の相続登記が義務化されていない状況では、相続登記の手続きが適切に実施されていないことによって、現在の正しい所有者などの情報が登記記録に記載されていない場合があります。それを原因として、所有者不明土地となるケースも多数存在します。
 
長年にわたってこのような状態が放置されると、たとえ戸籍などの情報から過去の所有者を順番に特定できたとしても、相続人(共有者)の数が多くなったり、その一部の共有者の所在が不明となったり、既に亡くなっているなど、その特定が極めて困難となることがあります。
 
そのためいざ共有物を有効に利用しようとしたり売却処分しようとしたりする場合には、一定の共有者の同意が必要となるため、円滑な実施が妨げられるケースが多くありました。
 

共有制度の見直し内容

これまでの民法では共有物への行為について、以下のように共有者の同意条件を定めています。

(1)変更行為については、共有者全員の同意を必要とする。
(2)管理行為については、持分の価格の過半数で決定する。
(3)保存行為については、共有者が単独で行うことができる。

これまでのルールでは、共有物に軽微な変更を加えるだけでも共有者全員の同意が必要とされていたため、外観や構造、機能や用途の変更などの行為が円滑に進まないことが問題とされていました。また、管理行為とは共有物の性質を変えない範囲内での利用または改良の行為のことを指します。例えば、利用は相続した共有名義のマンションを収益物件として短期で貸し出す行為などであり、改良は、その収益物件の価値を増加させるためのリフォームなどの行為が挙げられます。
 
改正後のルールとしては、変更行為のうち軽微な変更について共有者全員の同意は必要とせず、管理行為と同様に持分の価格の過半数で決定することができると規定されました。
 
軽微な変更とは、その形状または効用の著しい変更を伴わないものと定義されており、形状(外観や構造など)や効用(機能や用途)が著しく変更されないものとなります。
 
つまり、経年劣化などで補修が必要な箇所を元々の状態に戻すための修繕工事や、形状を変えることなくより安全性の高い部材に変更するなどの行為は軽微な変更行為に該当すると考えられます。
 
また、軽微な変更に該当しない変更行為や売却などの処分については、これまでと同様に共有者全員の同意が必要となります。
 

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賛否を明らかにしない共有者がいる場合のルール

これまでの民法ではたとえ連絡が取れる共有者の中でも、共有物の管理自体に興味がなく、変更や管理行為に関する賛否について明確な回答が得られない共有者の存在がネックとなるケースが多数ありました。
 
改正民法では賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判所の許可を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数によって、管理に関する事項を決定できるようになります。また同様に、必要な調査などを実施しても氏名や所在が不明な所在等不明共有者についても、裁判所の許可を得て、その所在等不明共有者を除いた共有者の同意によって、変更行為や管理行為が実施できるようになりました。
 

まとめ

冒頭に述べたように今回の共有制度の見直しの1年後には相続登記の義務化の施行が控えています。相続登記は、相続開始から3年以内に申請の義務があり、期限内に申請しない場合には罰則も設けられています。
 
過去の相続などで登記手続きなどをしないまま長期間放置されているような土地をお持ちの方は、まずは現状の共有の状況などを正しく把握し、相続登記の手続きが適切に実施できるよう準備を進めておきましょう。
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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