更新日: 2023.05.08 相続税

生前贈与加算期間が3年から7年へ延長される! 相続税の対策は?

執筆者 : 堀江佳久

生前贈与加算期間が3年から7年へ延長される! 相続税の対策は?
2023年度の相続税改正で、生前贈与に影響を与える改正が行われることが決定しました。ちなみに、生前贈与とは、自分が生きている間に財産を配偶者や子、孫などに贈与することです。この生前贈与を行うことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができるので、相続税の軽減対策として活用されています。
 
生前贈与に関して、今回の改正がどう影響するのかを確認し、対応策について解説してみます。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

生前贈与期間の延長

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、どちらかを選択します。まず、暦年課税に関連して、相続税制がどのように改正がされるのか見ていきます。
 
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対して課税されます。逆にいえば、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。
 

(1)改正前

改正前は、相続時には死亡前3年以内に贈与していた額を相続財産に加算して、相続税が課税されていました。また、納付済みの贈与税は税額控除されます。
 

(2)改正後

改正により相続財産に加算される資産が、相続時の死亡3年前までに贈与したものから、7年前までに贈与されたものまでと、延長されます。
 
つまり、いままでは死亡4年前以前であれば、贈与額が相続税に加算されなかったものが、7年前までの4年間が加算対象になるため、その分相続税課税額が増える可能性があります。
 
なお、改正は、2024年1月1日以降の贈与から徐々に加算期間が延長され、2031年1月以降からまるまる7年間が加算されます。ただし、延長した4年分について受けた贈与額の総額100万円までは相続財産には加算されません。
 

相続時精算課税の変更

次に、相続時精算課税に関連して、相続税制がどのように改正されるか確認します。
 
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母などから、子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択するには、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
 
この制度を選択すれば、累積贈与額2500万円までは非課税となり、2500万円を超えた部分に一律20%が課税されます。
 

(1)改正前

1.金額の多寡にかかわらず、贈与したときは110万円以下であっても、必ず贈与税申告が必要
2. 暦年課税のような基礎控除(110万円)なし
3. 財産の評価は、贈与時点の時価で固定
 

(2)改正後

1. 改正前とは異なり、110万円以下の贈与では、申告不要
2. 毎年、110万円までは課税なし
(現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除を創設)
3. 土地・建物が災害で一定以上の被害を受けた場合は相続時に再計算される
 

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相続税の対策

以上のような改正を踏まえて、考えられる対策は、次のようなものが挙げられます。
 

(1)2023年までに贈与

7年の延長は、2024年1月以降からの贈与が徐々に対象となり、2031年1月以降からまるまる7年間が対象です。
 
したがって、2024年以降の生前贈与分から対象になりますので、2023年中に贈与を検討しても良いかもしれません。
 

(2)相続人以外への贈与

7年の延長は、財産をもらう相続人への贈与が対象です。したがって、相続人とならない孫や子の配偶者などへの贈与は対象外になりますので、検討してみてはいかがでしょう。
 
ただし、相続人とはならないといっても、遺言書で財産贈与をするようにしていたり、生命保険金の受取人になっていたりする場合には、加算の対象になるので、留意が必要です。
 

相続時精算課税制度の選択

上記2項で説明した通り、改正により制度のメリットが拡大されました。したがって、制度のメリットを享受できる人は、この制度の活用を検討してみても良いでしょう。
 

出典

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

財務省 令和5年度税制改正(案)のポイント(令和5年2月)

 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー

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