【FP相談・後編】ひとり息子ですが、遠方にあるお墓を管理したくありません。どうしたらよいでしょうか ~墓じまい、改装などの手続きと費用~
配信日: 2023.05.24
遠方にお墓を持つ会社員Aさんの相談に関して、お墓の相続について前編・後編にわたり解説します。前編では、お墓の相続についての考え方や引き継ぐ場合の手続きと費用を見てきました。この後編では、遠方のお墓を引き継げない場合の選択肢や費用について解説します。
相談内容を確認しておきましょう。
【相談者】会社員Aさん(40代後半)、兄弟姉妹なし、妻子と都心部で自宅暮らし
先日、実父が死亡。実母はすでに他界。お墓が遠方で管理ができそうもない。
基本的なことから教えてほしい。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
管理できないお墓はどうなるの?
そもそもお墓は何のためにあるのでしょうか。「故人や先祖を供養するための場所」として遺族が心のよりどころにしていることが多いと考えられます。
つまり、遺族のための物理的な供養の場として、定期的にお墓参りに行き管理をする必要があるといえます。お墓が遠方であれば、移動距離や高齢化などが障害となって定期的な供養が難しいこともあるでしょう。
定期的にお墓へ供養に行けず管理費の支払いが滞ると、無念仏となってしまい、最終的には霊園などの管理者が契約を解除し、墓地の整理が行われます。
その後一般的には、無念仏を祀る施設や無念墓に合祀(ごうし:複数の遺骨を骨壺から出してまとめて埋葬)されますが、合祀後に引き取り手が表れても、原則として遺骨を取り出すことはできません。
お墓の継承は義務ではありませんが、無念仏にしないために、どのような選択肢があるのでしょうか。まず、遠方のお墓の管理が難しい場合には、お墓の管理者へ返還し、いわゆる墓じまいをする方法があります。
次に、その手続きの方法をみていきましょう。
遠方のお墓を引き継げない場合は、返還の手続きを
お墓を撤去して更地に戻すことを墓じまい、現在と異なるお墓に遺骨を移動させることを改葬と呼びます。
遠方のお墓を返還するための手続きは次のとおりです。
【図表1】
お墓の閉眼供養には、お寺の住職へのお布施が必要になるでしょう。地域や寺院によって金額は変動します。
また、墓石の撤去工事は、お墓の広さや業者によって異なります。一般的な目安としては、1㎡あたり10万円程度の費用がかかることが想定されます。
加えて、お墓が寺院の敷地などにある場合は、お寺の檀家になっているなど、それまでのお寺との付き合いや関係性があることもあるでしょう。
そのような場合の墓じまいは、お寺の住職へまずは相談をして、檀家を辞めるなどの了承を得ることも必要になります。離檀料がかかることも多いようです。
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お墓の返還後はどうしたらよい?
遠方のお墓は供養するのが難しいため返還したとしても、その後の先祖の供養や取り出した遺骨をどのように管理するのか、という点を考える必要があります。
その方法に関する選択肢や費用を見ていきましょう。
【図表2】
墓じまい後の対応策として、大きく分けると以下の3つが考えられます。
●遺骨をお墓に入れず、自宅で管理したり海洋散骨したりする
●管理しやすい居住地周辺で、新たに普通のお墓を立てる
●管理しやすい居住地周辺で、永代供養墓を立てる
ちなみに、永代供養墓とは、子や孫などの後の世代にお墓を引き継ぐことを前提とせずに、家族のかわりに霊園管理者が供養してくれるお墓のことです。
継承者は不要で、主に個人墓付、納骨堂、樹木葬、合祀の4種類があります。個人墓付、納骨堂は、一定期間後は合祀(ごうし:複数の遺骨をまとめて埋葬)になることがあり、お墓の管理者によってもさまざまです。
墓じまい後の対応は、いったん行ってしまうと後々取り消したりやり直したりしにくいものです。契約前にそれぞれの費用や条件を確認して、注意点に気を付けながらよく納得した上で選ぶことが大切です。
また、永代供養墓を検討する際に、もし子どもがいれば、子どもがお墓を継承する意思がないことを事前に確認してから実行すると、後に子どもとのトラブルを避けることができるでしょう。
まとめ
遠方にあるお墓を引き継ぐ人がいないケースは、少子化などによって今後もますます増える可能性が高いでしょう。先祖代々が入れるような大きなお墓は減り、個人単位で入れる一代限りの永代供養墓が増えてくるかもしれません。
いずれにせよ、遠方のお墓を管理できなければ、墓じまいなどの手続きや費用が必要です。墓じまい後はどのように供養していくのか、後悔のないように準備を進めましょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士