遺産を分ける前に故人の預金が引き出せる!? 相続預金の払戻し制度とは?
配信日: 2023.05.24
そのようなとき、遺産分割完了前に一定の金額を限度として受け取ることができる、「相続預金の払戻し制度」があります。本記事では、この相続預金の払戻し制度について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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相続預金の払戻し制度とは
故人名義の預金は、遺産分割が完了するまで相続人全員の共有財産になります。そのため、もし故人の預金を遺族の一人が引き出したいときには、ほかの相続人全員の承諾が必要です。
また、銀行側も故人の死亡が分かった時点で口座を凍結してしまうため、かつては遺産分割協議書のような、ほかの相続人が承諾した証拠がないかぎり、引き出せませんでした。
・遺産分割前に一部を受け取れる制度
平成30年7月の民法改正により、「相続預金の払戻し制度」が設けられました。
それによって、被相続人と一緒に暮らしていた相続人などが当面の生活費に不足が生じたり、故人の葬儀費用が必要だったりしたときに、遺産分割完了前であっても一定金額までは引き出せるようになりました。簡単にいえば、相続する金額分の一部を先に受け取れる制度です。
・相続預金の払戻し制度は2種類
相続預金の払戻し制度は、家庭裁判所に遺産分割を申立している場合、家庭裁判所の判断で引き出せる金額(全額もしくは一部)が決められます。
ただし、生活費の支弁等の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ、かつ、他の共同相続人の利益を害しない場合にかぎられます。
家庭裁判所を通していない場合、死亡時の預貯金残高×当該相続人の法定相続分×3分の1と150万円のいずれか低い額となっています。払戻し制度によって引き出せる金額は、「遺産相続対象の預金額×1/3×相続人の法定相続分」で、相続人が配偶者と子のケースなどでは法定相続分が異なります。
相続預金の払戻し制度の利用時に必要な書類
相続預金の払戻し制度を利用する際に必要な書類は、家庭裁判所を通しているかいないかで異なります。
・家庭裁判所に遺産分割を申立している場合
家庭裁判所を通して遺産分割をしている場合、「審判書謄本」「預金を払戻したい本人の印鑑証明書」の2つが必要です。審判書謄本については、審判書に確定表示がない場合もあり、そういったケースでは「審判書謄本+審判確定証明書」を用意する必要があります。
・家庭裁判所を通していない場合
家庭裁判所に遺産分割を申立していない場合は、「故人の除籍謄本、戸籍謄本もしくは全部事項証明書」「相続人全員分の戸籍謄本もしくは全部事項証明書」「払戻したい本人の印鑑証明書」です。故人の全部事項証明書は、誕生したときから死亡するまで連続したものを用意しましょう。
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裁判所に遺産分割の申立をしているかどうかで提出書類や上限額が異なる
相続預金の払戻し制度を利用する場合、家庭裁判所に遺産分割を申立しているかどうかで用意しなければならない書類が異なります。
また、引き出せる金額の上限も違うので注意が必要です。家庭裁判所に申立している場合は裁判所が許可した金額まで、申立していない場合は、1金融機関につき上限150万円までです。どちらの場合も払戻したい本人の印鑑証明書が必須なので、事前に用意しておきましょう。
出典
法務省 相続された預貯金債権の払戻しを認める制度について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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