更新日: 2023.06.21 その他相続
両親の死後、実家が「空き家」に。 固定資産税が「6倍」にならないための登記と寄付の仕組みを解説
執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)
2級ファイナンシャルプランナー
空家等特措法が改正
2023年6月に「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家等特措法)」が改正され、自治体から認定を受けた特定空き家等のみではなく管理不全空き家等の敷地も、固定資産税が減額されないことになりました。管理不全空き家等とは、放置すれば特定空き家等になる恐れがある管理の行き届いていない建物のことです。
増える空き家
総務省「平成30年住宅・土地統計調査」の調査結果によると、長期にわたって誰も住まずに放置されている空き家は増えています。その件数は1998年から2018年の20年間で182万戸から349万戸と約1.9倍に増加しており、今後も増え続けていくと予想されます。
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固定資産税が約6倍に
特定空き家等や管理不全空き家等に認定されると固定資産税等の負担が増えることになりました。土地や家屋を所有していると、固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。住宅やマンションなどの敷地である住宅用地には、図表1のような固定資産税や都市計画税を軽減するための特例措置が適用されなくなるのです。
つまり、固定資産税が約6倍になる可能性があるのです(都市計画法による市街化区域内に所在しない場合)。
図表1
区分 | 敷地面積 | 固定資産税の軽減率 | 都市計画税の軽減率 |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 200平方メートル以下 | 1/6 | 1/3 |
一般住宅用地 | 200平方メートル超 | 1/3 | 2/3 |
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)を基に筆者作成
相続登記が義務化
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。これまでは不動産を相続などで取得しても登記は義務化されていませんでしたが、義務化されると所有者が明確になり、管理責任を問われる機会も増えるでしょう。
相続などで不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行わないと、10万円以下の過料が課される場合があります。遺贈による取得も同様です。また、既に相続等が発生している場合も規制の対象となるので注意しましょう。
不要な土地は国へ寄付できる
相続などで取得した土地が不要な場合、国へ寄付できる制度も発足しました(2023年4月27日より)。
寄付したい土地が、引き取ることができない土地に該当しない場合は、審査手数料(土地一筆あたり1万4000円)を支払うことで寄付の申請ができます。承認されれば図表2のとおり、宅地・田畑・雑種地・原野などの場合は面積にかかわらず、20万円の負担金を支払います。
図表2
宅地 | 面積にかかわらず20万円 ただし、一部の地域(注)の宅地は面積に応じて別途算定 |
田、畑 | 面積にかかわらず20万円 ただし、一部の地域(注)や農用地区域は面積に応じて別途算定 |
森林 | 面積に応じて別途算定 |
その他 (雑種地・原野等) |
面積にかかわらず20万円 |
(注)都市計画法の市街化区域または用途地域が指定されている地域
法務省 相続土地国庫帰属制度の負担金を基に筆者作成
また、引き取ることができない土地は、建物が建っている土地や地上権が設定されているなど権利が複雑であったり、管理や処分が困難になっていたりする土地で、これらは、図表3のとおり定められています。
図表3
法務省 相続土地国庫帰属制度の概要を基に筆者作成
空き家の知識を身につける
相続等で取得した不動産の管理が行き届かないと、今後、固定資産税の負担が増えることになります。また、相続登記の申請が義務化され、今後ますます管理責任が問われることも増えるでしょう。また、相続した土地等を国に寄付できる制度も創設されました。
空き家を放置しておくと税負担が増えるなどのリスクが増えます。相続等で取得した不動産についての特例制度等を理解して、損をしないように備えましょう。
出典
総務省 平成30年住宅・土地統計調査
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
法務省 あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
法務省 相続土地国庫帰属制度の概要
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー