「おひとりさまだから相続はない」と思っていたけど…。未婚でも相続について考えたほうがいい理由って?
配信日: 2023.07.28
おひとりさまの相続等についてアドバイスします。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
「おひとりさま」とは
「おひとりさま」とは、一般的にはひとり暮らしのことを指す場合が多いのですが、相続に関していえば、民法上の法定相続人がいないことを指す場合があります。
民法上決められた法定相続人とは、配偶者、子ども、親、祖父母、兄弟姉妹、甥姪が対象ですので、「おひとりさま」の相続に関していえば、ひとりっ子で結婚してなく(あるいは離婚・死別)、両親が亡くなっている場合にほとんどが該当します。
内閣府『令和4年版 少子化社会対策白書』 によると、2020年に50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合は、男性28.3%、女性17.8%です。この数字は毎年上昇傾向にありますので、今後も「おひとりさま」は増えていくものと予想されます。
「相続対策」は何をすればよいの?
仮に、上記の「おひとりさま」の状態であれば遺言を書くことをおすすめします。
遺言を書いていれば遺言が優先されますので、その内容に遺贈したい人(第三者で財産を遺したい人)を記載することによって、その方に遺産を承継できます。その場合は、自然人(いわゆるヒト)だけでなく、法人を指定することも可能です。例を挙げるなら、内縁関係にある夫や妻、老後の介護をしてくれた方個人や、老人ホーム等を運営する法人、慈善団体等です。
もし、遺言を書いていなければどうなるのでしょう。その場合はその財産はすべて国庫に帰属します。
遺贈を希望していても遺言書がないと、上記のような方々は自身で家庭裁判所に対して特別縁故者に対する相続財産分与の申し立てることになりますが、その場合も必ず認められるわけではありません。やはり、遺言を書くことが重要かと思います。
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遺言以外にどのような対策があるの?
対策というより、準備になってしまいますが、本当に法定相続人がいないかどうかを確認しておくことも必要です。
両親の戸籍を取得することはさほど難しくはありませんので、まずはそこから兄弟姉妹の有無を確認できます。ただ、兄弟姉妹の戸籍を取得することはハードルが上がりますので、甥姪まで把握することは難しいかもしれません。
また、財産目録を作成しておくことも方法の1つです。
財産目録は、不動産や金融資産(預貯金・有価証券等)、保険契約等を記載します。また、通帳や不動産の権利証、保険証書等のように書類等の現物がある場合は良いのですが、最近ではネット銀行やネット証券等もあります。そのような場合は、口座番号等のほかにもIDやパスワードも記載しておくとよいでしょう。ただし、これらのものは厳重に保管しておく必要があります。
ご自身が亡くなった後の事務作業を委任する、死後事務委任契約も必要です。死後事務委任契約の内容には、葬儀や納骨・永代供養などの手続きや友人・知人等への連絡、介護費用や医療費等の精算等があります。
ひとりでもやれることはある
相続人の有無にかかわらず「終活」は必要ですが、特に「おひとりさま」の場合はその準備が多くなってしまいます。「ひとりだから相続はない」「自分が死んだ後のことなんて知らない」という考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身に財産があればそれを希望の方へちゃんと渡したいと思う気持ちはあるでしょう。
主に死後のことを書きましたが、生きている間に必要な作業もあります。分からないこと・難しいことがあれば、専門家に相談するのもよいかもしれません。
出典
内閣府 令和4年版 少子化社会対策白書/3 婚姻・出産の状況
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表