更新日: 2023.10.30 その他相続

少子化の波は「お墓問題」にも! “墓じまい”したほうがいい?

執筆者 : 篠原まなみ

少子化の波は「お墓問題」にも! “墓じまい”したほうがいい?
全国には「無縁墓」が多く存在しており、社会問題となっています。これは少子化が1つの原因だと考えられており、今後は若い世代もお墓の取り扱いについて親と話し合っておくべき時代です。今回は若い世代のお墓問題について考えてみましょう。
篠原まなみ

執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者

外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。

無縁墓増加の背景

無縁墓とは、墓地埋葬法(墓地や埋葬等に関する法律)の施行規則の第3条に「死亡者の縁故者がない墳墓または納骨堂(以下「無縁墳墓(注1)等」という)」と記載がありますように、お墓を管理する継承者や縁故者がいなくなったお墓のことをいいます。
 
この無縁墓になるお墓が年々増えています。公営墓地・納骨堂を有すると回答した765市町村のうち、公営墓地・納骨堂において 無縁墳墓等が発生している市町村の割合は、実に58.2%(445/765市町村)にものぼります※1。
 
どうして無縁墓が増えているのでしょうか。原因として次のことが考えられます。
 
1. 人口減少・多死社会
以前は子どもの数が多かったので、子どものうちの1人がお墓を管理することができました。そして子から孫、またその次の世代へと橋渡しがうまくいっていました。ところが、2005年に初めて死亡率が出生率を上回り、2007年以降、その差が年々拡大するなど人口減少が急速に進んでおり、お墓を管理する継承者がいない家庭が増えています。
 
2. お墓や先祖に対する考え方の変化
大家族のもとでは、お墓は家とともに代々長男が守っていくものという考え方がありました。ところが、昭和、平成、令和と時代が変化するにつれて核家族が増えている現代では、若い世代を中心に子どもがお墓を継いで守っていくという意識が薄れています。
 
そのため継承者がいたとしても、お墓の管理費を支払いたくない、お墓参りに行く時間がない、お墓の掃除が面倒、などという理由でお墓を継ぎたくないという人が増えています。
 
3. 都市部への流入
日本経済の高度成長の過程で、農山漁村を中心とする地方の人口が急激に都市部に流出し、現在まで続いています。過疎化した地域では、高齢化が進み、お墓を管理する次の世代がいなくなります。
 

無縁墓を放置しているとどうなるのか

お墓参りに行ったときに、雑草が荒れ放題のお墓を見たことはないでしょうか。無縁墓の弊害として、樹木が生い茂ることによる環境の悪化、墓石やブロック塀の荒廃による倒壊のリスクが挙げられます。また墓地は、管理費が回収できなくなり、お墓がそのままの状態で残っていると、次の埋葬者の受け入れもできなくなります。
 
一律の判断基準はありませんが、一般的には、3年から5年ほど管理料の滞納や縁故者に連絡が取れない状態が続いたりすると、無縁墓と疑われて行政の手続きが実施されるケースが多いです。
 
行政手続きは次の手順で行われます。
 
(1) 官報に記載し、立札を設置する
官報に記載し、なおかつ該当する墓地の見やすい場所に札を立て1年間公告をして、期間内に申し出がない場合は無縁墓と認定されることになります。
 
(2) 墓石を撤去し合葬する
無縁墓として認定されたら、墓地の管理者はお墓を撤去することができるようになります。お墓が撤去された後の遺骨は、他の人の遺骨とともに合葬というかたちでまとめて供養されます。
 
また、遺骨の一部を埋葬し、残りは廃棄物として処理される場合もあります。いずれにしろ特定の遺骨だけ取り出すことはできなくなります。
 

【PR】相続する土地・マンションがあなたの生活を助けるかも?

墓じまい

無縁墓にしないためには、「墓じまい」があります。
 
墓じまいとは、現在使用しているお墓を撤去して更地にし、使用権を墓地の管理者に返還することをいいます。墓じまいのあとは、遺骨を別の埋葬先に移すことになります(注2)。近隣の墓地や霊園に改葬したり、納骨堂を利用したりするほかに最近は、樹木葬など選択肢が増えてきています。
 
樹木葬では、墓石の代わりに樹木の周りに遺骨が埋葬されます。また樹木ではなく、草花や芝生で彩られたガーデン風のものもあります。
 
お墓の継承者がいない、いても管理をしたくないという人には、永代供養という方法があります。永代供養は、初期費用を支払えば管理費などは不要で、遺族に代わりお寺や霊園が遺骨の管理や供養を行ってくれます。
 
永代供養の埋葬方法は大きく2つに分けられます。
 
1.骨壺に入れた遺骨を1つひとつ納骨する方法です。お寺や霊園が決めた期間は、個別の納骨スペースに遺骨を保管して、その後、合祀されることが一般的です。
 
2.初めから1つの場所に合祀する方法です。合祀は、他の人の遺骨とひとまとめに埋葬されるので、いったん埋葬されたら他の人の遺骨と区別することができなくなります。
 

まとめ

遺骨を埋葬する方法は上記以外に、散骨といって火葬した遺骨を粉末状にして、海や山などの自然にまくという方法もあります。遺骨の供養の選択肢が広がる中、若い世代の人たちは親が亡くなった後、どのように供養されたいのか、自分はどのような形で供養をしたいのか、費用面も含めて話し合いの場をもち、無縁墓を増やさないようにすることが大事です。
 
(注1)法律上は「無縁墳墓」という名称になっていますが、無縁墳墓と無縁墓は同じ意味で使われています。
(注2)墓じまいは、行政手続きを行ってからでないとできません。お墓がある市区町村の役所に事前に相談をしましょう。
 

出典

(※1)総務省 墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-<結果に基づく通知>
(※2)e-GOV 法令検索 昭和二十三年厚生省令第二十四号 墓地、埋葬等に関する法律施行規則 第三条二
 
執筆者:篠原まなみ
CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者

ライターさん募集