実家を放置すると「10万円」の支払いが!? 相続登記義務化の内容と対策を解説
配信日: 2023.11.24
対策として、相続人であることだけを登記する方法や土地を国に寄附する方法も紹介するので参考にしてください。
執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)
2級ファイナンシャルプランナー
相続登記の申請の義務化とは
2024年4月から適用される法改正により、相続等により不動産を取得した場合、引き継いだ相続人は相続登記の申請が義務化されました。正当な理由がなく申請をしなかった場合は、10万円以下の過料が課される場合があるので、注意が必要です。
これまで、相続や売買など所有権が移転した場合の登記は任意でした。しかし、空き家をはじめとする所有者不明土地が社会問題となっているため、所有者を明確にするための法改正がされたのです。
相続人は、相続等で不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請を行わなければなりません。また、遺産分割協議が行われた場合も成立した日から3年以内に申請が必要です。さらに、既に相続が発生しているにもかかわらず、今まで登記の申請をしてこなかった場合も義務化の対象です。
10万円の支払いを避けるには
相続登記の申請がされない理由は、相続人間での話し合いがまとまらなかったり、不動産の資産価値が著しく低かったりとさまざま挙げられるでしょう。申請ができない状況でも、10万円の支払いを避ける方法を紹介します。
【対策1】相続人申告登記制度
相続登記の申請ができなくても、相続人であることを申告すれば10万円の過料を支払わなくてもよいという「相続人申告制度」が創設されました。
不動産を所有している親が亡くなった場合、配偶者や子などの相続人がどの財産を引き継ぐか遺産分割について話し合いを行うのが一般的です。しかし、話し合いがまとまらない場合は、決まるまで相続人全員が不動産を共有している状態になります。3年以内に登記の申請ができない場合は、全員が10万円を支払わなければならない可能性があります。
申請できない場合に利用できるのが、2024年4月創設の相続人申告登記制度です。遺産分割に関する話し合いがまとまらなくても、自分が相続人であることを法務局に申告すれば、相続登記の申請義務を果たしたとみなされるのです。
手続きは相続人全員で行う必要はなく一人でもできます。自分が相続人であることを証明する戸籍謄本などを準備するだけで手続きができるので簡単です。
【対策2】相続土地国庫帰属制度
相続した土地を売却できない場合には、国に寄附する「相続土地国庫帰属制度」も創設されました(2023年4月より)。
相続した土地を登記できない大きな理由のひとつは、資産価値が乏しく売却が難しいという点です。立地条件から再び建物を建てるのが難しかったり、近隣で売買実績がなかったりすると、自力で売却するのは難しいことも考えられます。不要な土地は、国に寄附できる制度があるので、法務局に相談するとよいでしょう。
ただし、土地に建物が建っていたり、土地の管理に通常以上の費用と手間がかかったりする場合などは利用できません。また、費用として土地一筆当たり1万4000円の審査手数料や、原則20万円(一部は面積に応じた算定)の負担金が必要です。どうしても売却できない場合の制度であることを知っておきましょう。
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10年経過すると相続分が決められる法改正も
親などが死亡してから10年経過すると、生前の世話の様子など個々の事情は考慮せず、法定相続分により相続されるという法改正もされました(2024年4月より)。
通常、遺産分割は相続人間での協議が整えば、どのような割合で相続しても構いません。しかし、協議がまとまらず長期間放置される事態を防ぐために、一定期間が経過した後は法定相続分により相続分を決められるようになったのです。
なお、10年経過すると自動的に法定相続分により相続させられるという制度ではありません。相続人の1人など関係者が、裁判所に遺産分割について調停や審判を求めた場合に適用される基準です。経過措置により5年間の猶予がありますが、法定相続分以外で遺産分割を考えている場合は、早めに話し合いをまとめるとよいでしょう。
まとめ
空き家問題に端を発し、所有者不明土地の解消に向けての法改正が相次いでいます。空き家の相続登記をしないまま放置しておくことはできなくなりました。10万円の過料を支払わなければならない場合もあるので、できるだけ早く協議をまとめて相続登記の申請をする必要があります。
もしも、話し合いがまとまらない場合には、相続人であることを登記する、あるいは土地を国に寄附することも考えましょう。
出典
法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン なくそう、所有者不明土地!
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー