更新日: 2023.11.24 相続税
相続納税 宅地評価が正確にすれば節税も可能に
とくに都市部では土地の評価額が高額になっており、相続税を納め過ぎるケースもあり、注意が必要です。
不動産評価の特性を知る
相続が発生すると、その相続額によっては多額の相続税が発生します。誰しもできるだけ相続税は少ないほうがよいのですが、相続財産が多くなるとそうはいきません。
相続人の数にもよりますが、もし相続人が1人しかいない場合は、控除額が3600万円だけです。3人の場合でも4800万円です。相続財産が、この控除額以下の場合に相続税はかかりませんが、これを超えると相続税がかかります。
相続財産のうち、現預金や有価証券(株式、投資信託など)は、相続時点での額面どおりの金額で評価されますが、不動産の場合は、それに比べて評価額が下がります。現預金に比べて売却がしにくく、流動性が低いことが理由とされています。そのため、現金や有価証券が多く不動産が少ない場合は、相続の際にはやや不利になるといえます。
都市の住宅地の相続税の評価基準は、「路線価」と呼ばれる国が決め公表している価格です。「路線価」は、その土地が公道に接している場合、1平方メートル当たりの価格で、毎年1回国税庁が公表しています。実際にその付近で取引されている土地の実勢価格よりも、通常2割ほど低い数字になっています。
土地の形状により路線価は減額
この路線価は、土地の形状もほぼ正方形や長方形に近く、平坦で使い勝手にも問題がない、いわゆる「整形地」の評価額です。そのため問題がある土地については、路線価が減額される仕組みです。減額対象になるケースがいくつかあり、これらを知ることで相続税額を減額できます。
しかし納税時期が切迫しており、急いで計算すると、こうした減税対象になる項目を見落とし、公表された路線価のまま計算し納税する事態も起こり得るのです。
意外なことに「税理士にお願いしたので安心!」と考えるのも早計です。とくに所得税や法人税に精通した税理士は多くても、相続に詳しい税理士はそれほど多くなく、実際の作業でも現預金の計算や相続人同士での配分などに時間をとられていると、細かい土地の評価まで気配りできないことがあるかもしれませんので注意しましょう。
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土地の相続税が減額されるケース
では具体的にどのような場合に、相続税評価額を下げることができるでしょうか。いくつか減額対象となる例をあげておきます。土地評価額については、その土地の状態に応じて、気づいた点を税務署で確認することが大切になります。
まず第1に考えられるのは、公道に接する間口が狭く奥行が長い変形した土地の場合です。いわゆる「旗竿地」と呼ばれる形状の土地です。間口が狭いため駐車スペースがつくれないなど、利用がしにくいため減額対象になります。旗竿地と同様に、形状が三角形の土地や極端な長方形の土地、いわゆる「不整形地」も減額対象になります。ケースによって異なりますが、10~20%の減額になります。
第2に考えられるのは、線路沿いや踏切に近く騒音や振動がひどい、隣接して墓地があり夜が不安、高圧線の直下や高圧鉄塔に隣接している、近くに騒音や廃液を出す工場がある、といった平穏な住環境としてはマイナスとなる土地です。それぞれの状況に応じて、10%程度は相続税が減額されます。
第3に考えられるのは、公道との高低差がある土地です。階段を設置する手間だけでなく、常に出入りの際に高低差を気にして行動する必要があり、高齢者の居住にも適していません。高低差の程度にもよりますが、通常3メートル以上の高低差があれば、10%程度は減額されます。
ただし第2のケースのもいえることですが、すでにこうした条件を組み込んで路線価を決定している地域もあり、税務署に確認する必要があります。
第4に考えられるのは、その土地が家族だけの居住ではなく一部が賃貸アパートなどになっている土地です。借家の部分は「借家建付け地」といい、評価が30%程度下がるため、自宅部分と借家部分の比率を算出し、それぞれの評価額を合算します。すべてが自宅の場合に比べて評価額は下がります。
第5に考えられるのは、狭い道路に接している土地です。通常4メートル未満の道路は緊急車両の出入りができないなどの問題があり、建物の建て替え時に規定の道路幅を確保する必要があるため、これを織り込んで道路部分となる土地の70%が減額されます。各自治体の担当部局に確認する必要があります。
相続する土地が、以上のような要件を備えているのであれば、通常の路線価より安い評価額で計算され相続税が減額できます
詳しく調べ納税申告は余裕をもって
相続税の申告は、人生で何度も経験するものではありません。実際に直面した時点であわてて税理士のところに駆け込む、という方も多いかもしれません。とくに相続財産のうち、土地が多くを占めているケースでは、評価額が減額されるかどうかを確認することをお勧めします。
税務署は問い合わせた内容については回答してくれますが、実際よりも多く相続税額を申告したとしても、再計算し納税額を減額してはくれません。そのため依頼した税理士の方と緊密に連絡を取り合い、とくに不動産評価については減額対象を詳しく調べることをお勧めします。
もし相続税の過大申告があると判明した場合、手間はかかりますが、還付請求を行うこともできますので、覚えておきましょう。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。