更新日: 2023.12.16 遺言書
生前に親が作成した遺言書が自宅から見つかった! 必要となる「検認」とは?
例えば、親が亡くなって遺品整理をしていたところ、生前には全く聞かされていなかった未開封の遺言書が発見された場合は、勝手に開封することなく、家庭裁判所に「検認」の申し出を行う必要があります。
そこで本記事では、検認に関する手続きの流れや注意点などについて確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
検認とは?
「検認」とは、家庭裁判所で遺言書の内容や状態を明確にして、その状態を保存する手続きのことです。遺言の効力が有効か無効かの判断をする手続きではありません。その主な目的は、以下の3つです。
(1)相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせること
(2)遺言書の形状、加筆・取消・訂正の状態、日付、署名を含めた内容を明確にすること
(3)遺言書の偽造、変造を防止すること
そのため、自筆証書遺言の発見者(保管者を含む)は、決して開封することなく、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。もし、検認を受けずに遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料を科せられる場合があります。
ただし、遺言書のなかでも公正証書遺言(公証役場にて作成、保管)の場合や、2020年7月10日から開始された、自筆証書遺言を法務局に預かってもらう「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合は、検認は不要となります。
ちなみに、日本公証人連合会によると公正証書遺言の作成件数は、2022年の1年間で11万1977件、法務省によると制度開始から2023年11月まででは累計6万3998 件の保管申請があるとのことです。
検認が必要となるケースは?
検認が必要である理由は、上記の過料などのペナルティーがあることとともに、その後の相続手続きに必要であることが挙げられます。
検認手続きの終了後は、家庭裁判所に「検認済証明書」を申請して、遺言書に添付してもらいます。そしてその後は、相続財産である不動産や金融機関の口座で名義変更の手続きに利用することになります。
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結構面倒な検認手続き
実際の検認手続きの流れは、おおむね以下のようになります。
(1)検認の申し立てに必要な書類を収集する
検認申立書の作成とともに、被相続人(遺言者)が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本や相続人全員分の戸籍謄本などが必要となります。
相続人が多く、相続関係が複雑な場合には、この作業だけでも相当の手間と時間を要します。
(2)申立人(遺言の発見者など)が家庭裁判所に検認の申し立てを行う
申し立てをする裁判所は、被相続人(遺言者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申し立ては持参でも郵送でも可能ですが、申立人が遠方に住んでいる場合などには、手間と時間を要します。
(3)検認期日を調整し、検認期日に家庭裁判所で検認を行う
検認期日は家庭裁判所から相続人全員に通知されます。申立人は指定された日時に家庭裁判所に行き、検認に立ち会う必要があります。その他の相続人は、必ず出席しなくてはならないわけではありません。
(4)遺言書の原本と検認済証明書を受け取る
遺言書を開封できるまでにも時間がかかる!
上記のとおり、検認に至るまでにも相応の時間がかかります。遺言書を発見してから早急に対応を進めないと、あっという間に1~2ヶ月の時間が経過してしまいます。
例えば相続人は、単純承認、相続放棄、限定承認の3つの相続方法を選択することができます。
相続開始を知った日から3ヶ月以内に限定承認の手続きも相続放棄の手続きもしなかった場合は、自動的に単純承認を選んだとみなされます。検認が必要な場合には、その後の相続手続きの時間も意識したうえで、できるかぎり迅速に対応することが重要です。
まとめ
「相続の手続きは、故人に対して悲しむ間もなく、慌ただしく時間が過ぎていく」ということをよく聞きます。筆者自身も、親を亡くした際に似たような経験をしたことを覚えています。
この記事に記載した検認については、状況によっては、実際に遺言書を開封できるまでにこのような煩わしさがあるということを覚えておきましょう。その解決策の一つとして、検認を不要とする「自筆証書遺言書保管制度」の利用も、検討する余地はあると思います。
出典
裁判所 遺言書の検認
法務省 遺言書保管制度の利用状況
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー