更新日: 2023.12.20 贈与

両親が「今年中に贈与したほうが有利だ」と、孫にまで「100万円」贈与しようとしています。来年から制度が変わるそうですが、そこまでする必要があるのでしょうか?

執筆者 : 山根厚介

両親が「今年中に贈与したほうが有利だ」と、孫にまで「100万円」贈与しようとしています。来年から制度が変わるそうですが、そこまでする必要があるのでしょうか?
2024年から暦年課税(暦年贈与)の持ち戻し期間が3年から7年に延長されます。そのため、今年中に駆け込み贈与をしなければと考えている人もいるかもしれません。しかし、持ち戻しの対象者は相続人に限られているため、孫は持ち戻しの対象外である可能性が高いでしょう。
 
本記事では、勘違いしがちな暦年課税の持ち戻し期間について解説します。
山根厚介

執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

贈与税の暦年課税とは

贈与税は個人から贈与で財産を取得したときにかかる税金です。贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」がありますが、今回は「暦年贈与」とも呼ばれている暦年課税について説明します。
 
暦年課税は、1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除額110万円を除いた金額に税金がかかる仕組みです。つまり、110万円までであれば贈与税はかかりません。相続税の税率は、1000万円以下で10%、最高の6億円超では55%と遺産の額によって税率が異なります。そのため、長期的に暦年課税を行って相続財産を減らしておけば、相続税の節税が可能です。
 
贈与の対象者は法的には特に決められていません。したがって子どもや孫が多いほど、贈与を利用して効率よく相続財産を減らせるため有利といえます。特に、通常であれば親から孫への相続は、親から子、子から孫と2回相続税が課税されるところですが、孫への贈与は課税を1世代スキップできるメリットがあります。
 
ただし、相続開始前の一定期間内になされた贈与は、相続財産に持ち戻されます。これは、相続開始直前の駆け込み贈与によって相続税の課税が回避されることを防ぐためです。
 

2024年以降は持ち戻し期間が3年から7年へ

2023年までは、相続開始前3年以内の贈与が持ち戻しの対象です。しかし、2024年からは持ち戻し期間が3年から7年へ延長されます。そのため「2023年中に駆け込みで孫への贈与をしておかなければ」と考えている人もいるでしょう。
 
しかし、持ち戻しの対象者は相続人(法定相続人と遺言による相続人)のみです。法定相続人とは死亡した人の相続財産を受け取る法的権利がある人のことで、配偶者に加えて以下の順位で該当者が決められています。

(1)死亡した人の子ども(子どもがすでに死亡している場合は孫など直系卑属)
(2)死亡した人の父母や祖父母など直系尊属
(3)死亡した人の兄弟姉妹

つまり、通常だと孫は法定相続人には当たりません。したがって、2024年以降に贈与をしても不利にはならず、2023年中に駆け込みで贈与をする必要はありません。
 
ただし、孫の両親(死亡した人の子ども)がすでに死亡している場合や、遺言によって孫が相続人となった場合などは、孫でも持ち戻しの対象に当たるケースがあります。心配な場合は、税理士などに相談するとよいでしょう。
 

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まとめ

贈与税の暦年課税では1年間に110万円までの贈与なら税金がかかりませんが、相続開始前の一定期間になされた贈与は、相続財産に持ち戻しされます。2023年までは持ち戻し期間が3年でしたが、2024年以降は期間が7年に延長されます。
 
そのため、2023年中にできるだけ贈与をしておいたほうがよいと考えている人もいるでしょう。しかし、持ち戻しの対象となるのは法定相続人だけのため、通常は法定相続人にならない孫は対象外です。もしも、親が駆け込みで孫への贈与を考えているならば、持ち戻しの対象などについて説明しましょう。
 

出典

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4155 相続税の税率
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
 
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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