更新日: 2024.01.26 贈与

上京する際、親がタンス預金から「500万円」渡してくれました。「これなら税金はかからないから」と言っていましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?

執筆者 : 佐々木咲

上京する際、親がタンス預金から「500万円」渡してくれました。「これなら税金はかからないから」と言っていましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?
「子どもの人生の転機に渡せるように」と、お金を貯めている親は多いのではないでしょうか。
 
本記事では、コツコツとタンス預金として貯めてきた500万円を、上京する機会に子どもへ渡したケースを考えてみたいと思います。親は「タンス預金だから贈与税も相続税も関係ない」と思っているようですが、実際のところどうなのでしょうか。
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

「これなら贈与税も相続税も関係ないから」は間違い

結論になりますが、タンス預金は贈与税や相続税に関係します。タンス預金だからどうこうという話ではなく、銀行預金を渡すのと同様の取り扱いになるので注意しましょう。では、どう関係するのかについて解説していきます。
 

500万円を渡した年に贈与税がかかる

本記事の場合、上京するときにタンス預金500万円を手渡しているので、上京した年の翌年2月1日から3月15日までに子どもは贈与税の申告をしなければなりません。
 
この場合の贈与税額は以下のとおりです(子どもは18歳以上とします)。
 
(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5000円
 
子どもは500万円をもらっても、その約10分の1は納税することになります。
 

3年以内に親が死亡すれば相続税がかかる

相続税には「生前贈与加算」という制度があり、贈与者(本記事の場合には親)の死亡前3年以内に行われた贈与については相続財産に含めなければなりません。つまり、親が500万円の贈与をしてから3年以内に死亡した場合には、親の相続税の計算に500万円を含めます。
 
ちなみに、500万円に対してすでに支払っている贈与税については相続税から差し引かれるので安心してください。決して二重課税になるわけではありません。
 
なお、この生前贈与加算は2024年1月1日に改正され、死亡前3年以内が7年以内に延長されました。経過措置があるのですぐに7年にはなりませんが、死亡タイミングによっては7年間さかのぼられることを知っておきましょう。
 

なぜ「タンス預金なら大丈夫」という勘違いが起こるのか?

「タンス預金だから贈与税も相続税も関係ない」という勘違いが起こるのはなぜでしょうか。それは、タンス預金は銀行預金と違って取引履歴が残らない点にあると考えられます。「どこにも証拠が残らないので、贈与してもバレない」となるのでしょう。
 
中には単に人から聞いた話をそのままに、「タンス預金は大丈夫らしいよ!」という感覚の人もいるかもしれません。いずれにしても、タンス預金500万円を渡されて何もしないでいる行為は「脱税」になります。注意しましょう。
 

無税でタンス預金500万円を渡す方法

贈与税が発生したのは、500万円を渡したタイミングが問題でした。
 
国は親や祖父母世代から消費が盛んな子ども世代への財産移転へ向け、以下のとおり贈与税がかからない条件をいくつか準備しています。これらを利用すればよいのです。


・教育費として使う
・結婚資金援助として渡す
・住宅の資金援助として渡す(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税)
・相続時精算課税制度を利用する

など

まず、親は子どもを扶養する義務があるので、子どもに必要なお金を支払うことは贈与になりません。500万円をプレゼントするのではなく、教育費や結婚資金の援助とすれば贈与税はかかりません。
 
次に非課税制度を利用する方法です。贈与税には「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」という制度があり、子どもが住宅を購入するための資金を親が贈与した場合、最大1000万円まで非課税になるので、条件に合う場合には利用しましょう。
 
このほか「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」などもあります。相続時精算課税の制度は、最大2500万円までの贈与が非課税になる制度です。住宅取得等資金などという括りはないので、すべての贈与に適用することが可能です。
 
しかし、相続時精算課税の制度は贈与税が非課税になって終わりではなく、適用を受けた贈与財産すべてを相続税の計算に含めなければならない点に注意しなければなりません。素人判断は禁物の制度です。
 

まとめ

上京する際に親からタンス預金500万円をもらった場合、贈与税と相続税が関係します。親が言う「これなら贈与税も相続税も関係ないから」は間違いなので注意しましょう。
 
ただ、親から子どもへの贈与には、贈与税がかからないさまざまな制度が設けられているので、条件に合わせて利用することをおすすめします。
 

出典

国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士