更新日: 2024.02.23 その他相続
父の死後、疎遠だった兄が「俺にも財産をよこせ」と突如迫ってきました。生前父からは「財産はすべてお前に渡す」と言われていましたし、渡す必要はありませんよね? 同居してずっと面倒を見ていたのは私だけです
そう思っている人は多いかもしれませんが、自分の知らない親の財産が死後発覚する、所有していた不動産の価値が購入時より大幅に値上がりしているなど、故人の死後相続が急に発生し、その財産を巡るトラブルに発展するケースは多々あります。
相続トラブルの中でもよく問題になるのが、タイトルのようにきょうだい関係が悪い場合の、きょうだい間の財産の相続割合です。本記事では、このケースの相続トラブルについて、トラブルを未然に防ぐためのポイントも含め解説していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
遺言を書いていても、相続人の「遺留分」は奪えない
一般社団法人相続解決支援機構が、相続を経験した20代~60代までの男女164名を対象に2022年に行ったアンケートでは、「相続のトラブル経験あり」と回答した人が78.7%、そのうち遺産総額が1000万円以下の相続トラブルが42.1%という結果が出ており、決して相続トラブルはひとごとではないことが分かります。
今回のケースでは、父(母はすでに他界)と兄、弟の家族で、弟が父と同居し身の回りの世話を一手に引き受けていたのに対し、兄は父や弟とは疎遠だったという状況です。弟は生前に父から「全財産はお前に渡す」と言われ、父はその旨を記載した遺書を書いていました。相続において、遺書を残すことは大事なポイントとなります。
しかし、相続には「遺留分」という民法で定められた法定相続人が請求できる権利があり、たとえ故人が遺言を書いていたとしても「遺留分」については奪うことができないとされています。
今回のケースでは法定相続人が兄と弟の2名で、本来は2分の1ずつ財産を相続することができるのですが遺留分の割合は本来受け取る権利のさらに2分の1となるため、兄は全財産のうちの4分の1を遺留分として請求する権利があります。そのため、「父は遺言で全財産を弟である自分に渡すと書いているから兄には渡さない」という理屈は通らないのです。
法改正により、金銭の支払いをもって遺留分を渡すことが可能になった
この遺留分の問題が特に影響するのが、不動産の相続においてです。今回のケースで、兄が不動産に対して遺留分を請求した場合、例えば不動産の持ち分を弟8割、兄2割のような形で共有財産として相続しなければいけません。
この場合、たとえ父の死後にその家に住むのが弟だとしても、その後の売却などを行う場合には共有者全員の同意が必要であるため、疎遠関係の兄が売却を拒むなどのトラブルが発生する可能性があります。
このようなトラブルを防ぐために、2019年の民法改正において、遺留分を金銭請求できるようになりました。この改正により、財産価値分の金銭を請求者(本ケースでは兄)に対して支払えば、不動産についても単独所有ができるようになりました(図表1)。
図表1
法務省 相続に関するルールが大きく変わります
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遺留分を請求されることを見越して金銭の準備をしておくことが大切
相続のトラブル原因となる遺留分の対策としては、被相続人(父)は、財産を渡したい相手(弟)が遺留分の請求をしてくる相手(兄)に対するお金を用意できている状態をつくれていれば、不動産の共有などのトラブルを防ぐことができます。具体的には2つの対策が有効です。
1. 暦年贈与を活用して、財産を渡したい人(弟)に現金を複数年かけて渡していく。
2. 被相続人(父)を被保険者、受取人を財産を渡したい人(弟)に指定した生命保険に加入する。
1については、時間に余裕がある場合や、被相続人(父)に十分な現金資産がある場合に活用できます。
不動産など預金以外の財産がメインである場合は2の生命保険を活用することで、死後に保険会社から支払われる保険金を元に、受取人である弟から兄に遺留分請求の金額を支払うことができ、トラブルを防ぐことができます。
その際に受け取る保険金額については遺留分請求の対象外となるため兄から請求されることもなく、受取人が全額受け取ることができます。
ひとごとだと思わずに十分な対策を
被相続人の「世話をしてくれた人に自分の財産を残したい」という思いを実現させるため、また相続発生時に急に現れた親族により故人の意志を踏みにじるような相続トラブルの発生を防ぐためにも、相続について対策をとっておくことをおすすめします。
相続をひとごとだと考えずに、生前から家族で財産を誰にどのくらい残したいのかをしっかりと話し合い、必要に応じて贈与や生命保険などを活用して準備することが大切です。
相続や贈与の準備に早すぎるということはありません。家族で集まる機会があれば、まずは1度話し合ってみることから始めましょう。
出典
一般社団法人相続解決支援機構 相続トラブルに関する調査(2022年)
法務省 相続に関するルールが大きく変わります
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー