更新日: 2024.04.25 その他相続
相続放棄は自力で可能?手続きの流れや費用、期限が過ぎた場合の対処法について解説
「相続放棄」は、プラスの財産とマイナスの財産を正確に調査してから判断すべきですが、詳細な調査や家庭裁判所で行う相続放棄の手続きを自分で行うのが不安なら、専門家に任せることもできます。
この記事では、相続放棄の申立期間3ヶ月のあいだに自分でも間違いなく手続きができる方法や注意点、専門家に依頼するメリットや費用の目安などを解説していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
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相続放棄とは?
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産とマイナスの財産に関わらず全ての財産について相続はしないと単独の意思で宣言し、相続開始時点から相続人ではないと見なされる手続きです。
被相続人が多額の借金を遺して亡くなった場合に、相続人がその借金を引き継いで支払わなくてもよい方法として、全ての相続人は相続放棄という権利を持っています。
相続放棄によって最初から相続人ではなかったことになるため、相続放棄した者の子どもが代わりに相続をすることはありません。ただし、相続放棄者の次順位の相続人へ相続権が移るので、デメリットに働く場合(借金や義務まで移る)があり注意が必要です。
相続放棄を検討すべき場面
相続放棄を検討すべきおもな場面として下記の3つがあります。
・明らかに負債が多いと判断した場合
・相続人同士のトラブルを避けたい場合
・相続人1人に権利や財産を集中させたい場合
それぞれについて解説していきます。
明らかに負債が多いと判断した場合
被相続人が遺した財産の構成が、プラスの財産(資産)よりもマイナスの財産(負債)が明らかに多いため、相続すると苦労が目に見えてわかる場合には、相続放棄の手続きをすれば相続による損害の回避ができます。
負債額が大きいと簡単に判断できるなら、相続放棄を積極的に検討すればよいのですが、相続放棄をすべきか決められない場合や、資産よりも負債のほうが多いのか第三者に適切に判断してほしい場合があります。
そのような場合は、法律の専門家である「司法書士」や「弁護士」に相談して法的観点から正確なアドバイスをもらうとよいでしょう。
相続人同士のトラブルを避けたい場合
相続はよく「争族」と表現されるように、相続財産の配分をめぐって親族間で激しく争うことがあります。
また、管理の手間が大きく、維持管理コストが多くかかる不動産を共同で相続してしまい、管理内容の方針やコストの負担をめぐって親族間の関係が悪化する場合もあります。
それらを避ける方法として「そもそも相続に加わらない」という選択肢を選び、相続の協議や手続きなどの面倒から解放されるために相続放棄を選択するケースがあります。
相続人1人に権利や財産を集中させたい場合
ひと昔前の、特に田舎では、家督を継ぐ長男に財産を集めるために配偶者やその他の兄弟が相続財産を放棄する慣習が残る地域もありましたが、このような家督相続のために放棄するという考え方は次第に薄れてきました。
ただし、社長のポストを代替わりして家業(事業)を完全に承継させるような目的がある場合には、財産を1人に集中させられる相続放棄は便利に使えます。なお、相続放棄予定者へは生前贈与や特定遺贈を利用して財産を与えることはできます。
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相続放棄のメリットとデメリット
相続放棄にはメリットとデメリットがあり、被相続人の正確な財産調査と財産放棄による他の相続人への影響の想定が非常に重要です。
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットとは、相続によって受ける不利益を積極的に回避できる点です。
相続によって財産ではなく多額の借金が出てきた場合に、それを要らないと言える権利や制度があるのはありがたいことです。
少しでも争いや主張がぶつかるなら、相続放棄したほうが気楽でよいという場合においても、相続放棄はありがたい選択肢と言えるでしょう。
相続放棄のデメリット
相続放棄のデメリットとは、相続放棄の手続きをした後で大きな財産が見つかったため相続したくなっても、いったん行った相続放棄は撤回ができない点です。つまり、故人の財産調査が十分でない時点で相続放棄を決断してしまうと損をする可能性があるのです。
また、相続放棄をした者は、始めから相続人ではないことになるため、相続開始時点とは相続人のメンバーが替わってしまうというデメリットもあります。新たに財産を得られるようになった方はよいのですが、負債や義務を負う方が出れば負担増やその方の相続放棄の手間が増えて迷惑をかける場合もあるのです。
そのため、自分の相続放棄の影響を調べて、関係者へは事情を説明してから自分の相続放棄手続きを開始したほうがトラブルになりづらいと言えます。
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相続放棄の判断が難しい場合の手続き
自分なりに財産調査や相続人の確定ができたとしても、自己判断が完全に正しいと自信を持って断言できる方は多くありません。そのような場合には、相続放棄ではなく別の手続きをとることもできます。
限定承認制度を利用する
プラスの財産とマイナスの財産を差し引きしてどちらが多いのかが正確に分からない場合には「限定承認」という制度の利用を検討しましょう。
限定承認制度とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという制度で、この制度を利用すればマイナスの財産が恐くて相続放棄を選んでしまわなくても済むのです。
例えば、いったんはプラスの財産が多いとして相続しておいて、思いがけずマイナスの財産が多かったとしてもプラスの財産の範囲内に抑えることができるのです。
ただし、限定承認の手続きは単独で行える相続放棄とは異なり、必ず全ての相続人が共同して行わなければなりません。また、家庭裁判所へ申請するだけの相続放棄とは異なり、家庭裁判所への申請後に「清算」という期限が限られた手続きが必要になる点に注意しましょう。
相続放棄と限定承認との違い
相続放棄と限定承認とでは以下の図表1のような違いがあります。
図表1
相続放棄 | 限定承認 | |
---|---|---|
制度の目的 | ・一切の相続財産を放棄する | ・プラス財産の範囲内でマイナス財産の相続を許容する |
制度を利用すべき方 | ・被相続人の借金が多い ・相続財産が要らない ・相続トラブルから離れたい ・相続財産を1人に集約したい |
・被相続人の借金が多い ・不充分な財産調査で相続する ・全相続人が協力的である |
手続き方法 | ・家庭裁判所へ申請 | ・家庭裁判所へ申請 ・債権者などへ清算手続き |
手続き期間(原則) | ・自己に相続があったと知ってから3ヶ月以内 | ・自己に相続があったと知ってから3ヶ月以内 |
手続き期間の延長 | ・家庭裁判所へ申請 | ・家庭裁判所へ申請 |
手続き要件 | ・単独で申請する | ・相続人全員で申請する |
メリット | ・全ての相続から解放される ・自分だけで手続きできる |
・借金だけ遺ることはない |
デメリット | ・手元に財産が一切遺らない ・他の相続人へ影響が及ぶ |
・相続人全員の協力が要る ・清算手続きが要る |
筆者作成
このように、相続放棄と限定承認では似通った部分がありますが、それぞれ選ぶべき状況が異なります。
しかも、制度の目的や手続きの協力者および手続きすべき内容などには違いがあり、選んだ制度によって他の相続人へ何かしらの影響が及ぶため、相違点や適した場面を正確に判断して使い分けなければなりません。
相続放棄と限定承認の選択を弁護士に相談する
弁護士は法律のスペシャリストであり裁判所手続きがメインの業務であるため、裁判所への申請手続きは安心してサポートを任せられます。
また、遺産相続では遺産分割協議が成立したとしても相続確定後にも揉める可能性がゼロになることはなく、人間関係への配慮やトラブルの予防にも考慮しながら手続きを進めなければなりません。
また、裁判所手続きには専門用語が多く、複雑な内容を理解しながら慣れない書類を作成しなければなりません。しかも、忙しい中から時間を割いて相続から3ヶ月以内に確実に手続きを完了させなければならないため、自分で行わず弁護士などに依頼をするほうがずっとコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスがよい場合があるのです。
また、弁護士は関連業界の専門家である「司法書士・税理士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・不動産会社・生命保険会社」などと普段から連携していることが多いため、一から自分でいろいろな専門家を探して手配せずに済む点も、大きなメリットと言えるでしょう。
相続放棄の手続きに要する費用の総額
相続放棄手続きにはいくらか費用が要りますが、手続き自体にかかる費用は3000~5000円で、専門家に依頼すれば3~5万円が目安になります。
相続放棄手続きでは印紙・切手・戸籍などの費用が必要
相続放棄手続きで必要になるのは、以下の図表2にあるような、被相続人の死亡や被相続人と申請者の住所や家族関係が分かる書類です。
図表2
印紙(相続放棄の申述書に添付) | 800円程度(申述1人) |
切手(通知書の郵送用) | 500円程度 |
住民票の除票もしくは戸籍の附票(被相続人分) | 300円程度 |
戸籍(死亡の記載がある除籍か改正原戸籍:かいせいはらこせき) | 750円程度 |
筆者作成
相続放棄手続きを専門家へ依頼した場合も費用がかかる
相続放棄の書類作成や申請は専門的知識のない個人でもできますが、申請までの調査については財産や事実関係の調査をしている専門家に任せたほうが確実です。なお、相続放棄の申請を依頼する専門家として司法書士と弁護士が挙げられますが、専門家が行う業務内容は下記のものがあります(一部弁護士の専権業務を含みます)。
・戸籍などの取り寄せ
・被相続人の財務調査
・相続放棄の申述書作成と提出
・家庭裁判所との折衝
・債権者や他の相続人との折衝
・回答書の作成と返信
・受理書の取得
・依頼者との相談や報告
依頼費用は司法書士よりも弁護士のほうが高額になりますが、弁護士は依頼者の代理人として家庭裁判所へ出向いて相続放棄手続きを行い、その他の相続人との交渉や裁判への対応なども行ってくれます。
しかも、すでにある相続人間の揉めごとの仲裁や訴訟での弁護や代理の依頼は、弁護士だけが行える専権業務になります。また、家庭裁判所から本人への連絡も「私ではなく代理人の弁護士ヘ連絡して!」と言えるのが強みです。
一方で、司法書士は家庭裁判所では代理人になれない(簡易裁判所での民事事件で訴額140万円までなら代理ができる場合あり)ため、書類の作成代行に近い依頼になります。
つまり、司法書士へ依頼した場合には家庭裁判所からの電話連絡や書類発送は本人宛になり、本人が対応するのが原則です。また、家庭裁判所は全国に50箇所(北海道は4箇所で都府県は各1箇所)しかないため、本人が家庭裁判所へ出向く可能性があるなら、弁護士に依頼しておいたほうが楽な場合もあるでしょう。
依頼費用の目安は下記のとおりです(ただし、案件内容や手間に応じて変動あり)。
・弁護士:3~5万円
・司法書士:5~10万円
専門家に相続放棄手続きを依頼するメリット
専門家に相続放棄の手続きを依頼すると安心できる理由・メリットはおもに下記の4つです。
・相続放棄が最良の解決策なのかアドバイスがもらえる
・戸籍収集や裁判所提出書類の作成を任せられる
・期限が迫って複雑な状況でも焦らなくて済む
・書類不備や記載ミスがなく裁判所の対応も相談できる
ここから、それぞれについて解説します。
相続放棄が最良の解決策なのかアドバイスがもらえる
相続放棄は、明らかに負債が多い場合・相続人同士のトラブルを避けたい場合・相続人1人に権利や財産を集中させたい場合などに検討する手続きです。
しかし、相続放棄を行うと撤回ができないため、その状況で本当に相続放棄が最良なのか、相続財産を得られる方法が他にないのかを、冷静で的確に判断できる専門家が周囲に必要なのです。
戸籍収集や裁判所提出書類の作成を任せられる
相続放棄の申請には被相続人および申請者の戸籍や戸籍の附票などを収集して提出しますが、戸籍関係の書類はほとんどの方にとって見慣れない書類であるため、この書類で間違いがないのか確信を持ちづらいものです。
しかし、裁判所提出書類の収集や作成を任せられれば、それらの不安はなくなります。
期限が迫って複雑な状況でも焦らなくて済む
相続放棄手続きには申請期限があり、必要書類の取り寄せや書類作成に時間がかかったとしても、申請者が専門家ではなく一般人だからといって待ってはくれません。
また、本人申請で費用を抑えるためにネットで調べたり無料の法律相談を利用したりすると時間はあっという間に過ぎていきます。
しかし、専門家なら知識があって何度も行っている手続きなので間違うことなく効率的に申請を終えられ、期限が迫っているなら「期限伸長申請」をして猶予期間を確保してくれます。
書類不備や記載ミスがなく裁判所の対応も相談できる
相続放棄を本人申請で行うなら、家庭裁判所や他の相続人とのやり取りは全て自分で行います。
また、添付書類を集め、申請書類を記入し、書類の提出をするのも自分で行い、不備や指摘にも自分で適切に対処しなければ相続放棄は認められません。
専門家がいれば、財産の調査・財産の価格査定・必要書類集め・申請書類作成・申請手続き・その後の対応など、分からない場合、尋ねれば瞬時に解決します。また、途中で状況が変わった場合でも、専門家がいれば本人や他の相続人の意向を汲み取って瞬時に対応を変えられるでしょう。
相続放棄の手続き期限が過ぎる・残余日数が少ない場合の対処法
手続き期限の残余日数が少ない場合や期限を過ぎてしまった場合について解説します。
期間伸長手続きで3ヶ月の期限を延ばす
書類の取り寄せや財産調査の遅れなど、何らかの事情によって3ヶ月以内の相続放棄期限を越えそうな場合には、家庭裁判所へ「相続放棄の期間伸長の申し立て」ができます。この伸長の申し立ては相続を知ってから3ヶ月以内しかできないという申請期限があり、必要な書類は下記のとおりです。
・申立書
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・利害関係を証する資料(利害関係人からの申し立ての場合、親族の場合は戸籍謄本など)
・伸長を申し立てる相続人の戸籍謄本
3ヶ月を過ぎた場合はまず弁護士に相談
3ヶ月の申請期間を過ぎると、相続放棄が認められる可能性は明らかに低く、難しくなります。
ただし可能性はゼロではないため、まずは弁護士に相談しましょう。ただし、期限が過ぎてしまうとよほどの事情がない限り期間の伸長は認められませんが、相続放棄を専門に扱う弁護士なら何かしら今後の対応についてのアドバイスをくれるはずです。
相続放棄手続きの所要期間とは?
相続放棄の手続き開始から手続き完了までの期間は以下の図表3を目安にしましょう。
図表3
所要期間 (約) |
手続き内容 |
---|---|
1日 | (1)相続放棄の残余期限を確認する |
10~30日 | (2)相続人全員を確定させる(被相続人の過去の居住地へ郵送請求) (3)相続財産を調査する(故人の身辺を捜索、各サービス元へ照会) |
1日 | (4)相続放棄手続きの申請者用の必要書類を集める(郵送請求の場合) |
1日 | (5)相続放棄申述書を作成する |
1日 | (6)家庭裁判所に相続放棄を申し立てる |
10~14日 | (7)相続放棄の申し立て後に照会書が届く(書類を記入して返送) |
10日 | (8)相続放棄の許可により相続放棄申述受理通知書が届く |
計34~58日 |
筆者作成
ただし、相続人全員の確定・相続財産の調査・申述書の作成などの進捗によって所要期間が変わります。
相続放棄の流れと手続き内容
相続放棄手続きの流れと、図表3にある手続き内容のそれぞれについて解説します。
STEP1. 相続放棄の残余期限を確認する
相続放棄ができる期間は「相続人が、被相続人の死亡および自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内」とされています。まずは、今の時点で相続放棄ができるのかどうか、できるなら残余期間(後どれくらいの期間で申請しなければならないか)を確認することからはじめます。
ただし、相続財産が全くないと確信があり、かつその事実が明確なら「相続財産の全部または一部の存在を認識したときから3ヶ月以内」に申請すれば相続放棄が受理されることもあります。
もしも判断に迷うなら、自己判断に頼らずに弁護士や司法書士もしくは家庭裁判所へ問い合わせて、期限の延長ができないか尋ねましょう。
STEP2. 相続人全員を確定させる
相続人の確定は、まずは被相続人の出生まで(少なくとも10歳未満くらいまで)の戸籍を遡って子どもの存在を確認するのが一般的です。調べる方法としては、被相続人の最後の戸籍を入手し、そこに記載されている前住所へと順次遡りながら戸籍を集め、出生の記載がある戸籍までの全戸籍を収集します。
その際には、「改製」「転籍」「分籍」「養子縁組」「婚姻」「除籍」など戸籍が移る原因となる記載を注意深く探しながら追跡していきます。
STEP3. 相続財産を調査する
相続財産は、財産の種類やサービス提供元によって調査方法が異なります。
<相続財産の有無や種類を調査する>
相続財産の調査方法は、以下の図表4のように種類によって異なります。
図表4
財産の種類 | 調査方法 |
---|---|
預貯金 | ・通帳、キャッシュカードやクレカ、封書や電子メールを調べる ・弁護士から各金融機関へ照会依頼を出してもらう ・取引実績のある金融機関が特定できたら残高証明を請求する |
不動産 | ・固定資産税の納税通知書を探す ・権利証(登記識別情報)を探す ・役所の固定資産台帳などで調べる ・借家権や借地権は賃貸借契約書や通帳の入金履歴を調べる |
貴金属、宝石 ブランド品 |
・中古市場を調べる |
車、動産 | ・再取得価格から減価償却を引く |
株式、債権、 FX(外国為替証拠金取引)、仮想通貨 |
・封書、はがき、電子メール、アプリ(取引所や販売所)を調べる ・証券会社、銀行、取引所や販売所へ問い合わせる ・残高証明書の発行を依頼する ・会員権の証券や会員証を探す |
生命保険 | ・封書、はがき、控除証明書、電子メールを調べる ・保険会社へ問い合わせる |
売掛金、買掛金 | ・事業用の出納台帳、決算書、電子メールを調べる |
借金 | ・ローン契約書、請求書、返済計画書、督促状、領収書を調べる ・各信用情報機関(CIC、JBA、JICC)へ情報開示を依頼する ・通帳の支払いや引落しの履歴を調べる |
美術品や骨董品 | ・部屋、事務所、倉庫、車内、鑑定書、領収書を調べる |
筆者作成
<相続財産の価値や価格を調査する>
相続財産の価格や価値の一般的な査定方法は下記のとおりです。
・預貯金は解約時手取額で現金は券面額
・不動産は、土地は相続税路線価で建物は固定資産税評価額
・貴金属、宝石、ブランド品は中古市場調査
・車、動産は中古市場調査
・株式、債権は売却手取額
・FX(外国為替証拠金取引)、仮想通貨は残高証明書
・生命保険は解約返戻金額
・売掛金、買掛金、借金は請求額
・美術品や骨董品は中古市場調査や専門家の査定
STEP4. 相続放棄手続きの必要書類を集める
相続放棄手続きの必要書類は、下記のように申立人によって共通書類+4つのパターンに分かれます。
<全てに共通する書類>
(1)被相続人の住民票除票または戸籍附票
(2)申述人(放棄する方)の戸籍謄本
<パターン1:申請人が被相続人の配偶者の場合>
(3)被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
<パターン2:申請人が被相続人の子どもや孫(代襲者)などの場合>
(3)被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(4)申請人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
<パターン3:申請人が被相続人の両親や祖父母(直系尊属)の場合>
(3)被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(4)被相続人の子ども(およびその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子ども(およびその代襲者)の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(5)被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合は父母))がいる場合、その直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
<パターン4:申請人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪の場合>
(3)被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(4)被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(5)被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(6)申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
STEP5. 相続放棄申述書を作成する
相続放棄申述書のひな形は裁判所のホームページから入手できます。申し立てを行う申述人が未成年の場合には未成年専用のひな形、成人の場合には成人用のひな形を使用します。
STEP6. 家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
申述書の記入が終われば家庭裁判所へ提出します。申述先は被相続人の最後の住所地(死亡時に住民票がある自治体)を管轄する家庭裁判所の窓口へ、持参もしくは郵送のいずれかの方法です。
なお、申述人が未成年もしくは成年被後見人の場合には、法定代理人が本人に代わって提出します。
STEP7. 相続放棄の申し立て後に照会書が届く
申請してから数日後に裁判所から照会書が届きますので、必要事項を記入して返送します。
照会書に書かれているのは「申述は本人の真意であるか」「法定単純承認がないか」などを確認する内容です。ちなみに、法定単純承認とは相続人が行う相続財産の処分や消費によって、全てを相続する意思表示をしたと見なされることで、その場合に相続放棄ができなくなります。
STEP8. 相続放棄の許可により相続放棄申述受理通知書が届く
照会書を返送し相続放棄の要件を満たしたことで申述が受理されると、家庭裁判所から「相続申述受理書」が発送されます。この相続放棄申述受理書が届けば、正式に相続放棄が認められたということであり、被相続人の権利義務および債務について責任を負う必要はなくなります。
ただし、相続放棄が受理された後に「その相続放棄は有効ではない」と債権者から追求されることがあります。仮にそのような状況になれば、すぐに弁護士へ相談しましょう。
相続放棄申述書などの書き方(サンプル画像あり)
以下の図表5は、申述人が成人の場合の記入例です。
図表5
裁判所 相続の放棄の申述 記入例1申述人が成人の場合
相続放棄の手続きで注意すべきポイント
相続放棄の手続きで多くの方が疑問に思うポイントを解説します。
相続放棄手続きは郵送のみでも可能
相続放棄の申請先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」ですが、家庭裁判所は北海道の4箇所以外は各都府県に1箇所ずつしかありません。申請人によっては遠かったり時間が取れなかったりしますので、郵送でも申請できるようになっています。
ただし、郵送の際は「普通郵便」ではなく、郵便物の追跡ができて補償が付く「書留郵便」を使用して、書類が大切に扱われる方式で郵送しましょう。
一度した相続放棄は撤回できない
相続放棄を行うと、後からマイナス財産を大きく上回るプラス財産が見つかったとしても、相続放棄を撤回することはできません。
そのため、相続放棄に踏み切るまでにはプラスの財産とマイナスの財産を慎重に調査して、相続放棄をすべきか慎重に検討すべきです。
相続放棄によって次順位の者が相続人になる
相続放棄が受理された相続人は「最初から相続人ではなかった」と見なされ、相続放棄した相続人の次順位の相続人が相続者になります。
相続放棄が認められないケース
相続人が相続財産の一部を処分した場合には「法定単純承認」にあたるため相続放棄ができなくなります。なお、下記に挙げた一部の例は、相続財産の処分にあたる行為です。
・相続財産の一部を使い込む
・被相続人の預貯金を解約や払い戻しをする
・遺品を持ち帰る
・不動産や車などの名義を変える
・遺産を担保に入れて融資を受ける
・遺産分割協議に加わる
相続放棄と生命保険金や遺族年金の受け取りについて
遺族年金は遺族の生活保障が目的であり、受給権者(遺族)固有の権利であって相続財産ではありません。また、死亡保険金も死亡を原因とする金銭給付ではあるものの、相続財産ではなく受給権者固有の財産だとみなされます。
そのため、生命保険金や遺族年金は相続放棄をしても影響を受けず、受給ができます。
不動産を相続する場合は不動産査定の結果を見て判断すべき
不動産の相続は全ての場合に利益があるとは限りません。劣化がひどくて利用価値のない不便な場所にある不動産は、維持管理や固定資産税の負担が重荷になるため、デメリットのほうが大きい場合があります。
そのため、もらえるものは何でも相続しようとはせずに、特に不動産は不動産会社などの専門家の査定結果を見てから相続するかどうか判断しましょう。
相続人全員が相続放棄した場合、財産は国のものになる
相続放棄によって他の相続人が相続する権利や義務の範囲が変わります。また、相続人全員が相続放棄した場合、遺産は国庫(国が管理する財産)に帰属、つまり国のものになります。
放棄しても財産管理責任が生じることがある
相続放棄した相続人が、その遺産を自分の管理下においているあいだは、相続放棄をしても遺産を相続財産の清算人に引き渡すまでは、その財産を維持管理しなければなりません。
ただし、その遺産が自分の管理下にないなら、相続放棄が受理されると同時に管理義務は解かれます。
他の相続人に負担をかけるおそれがある
相続を放棄すると、次順位の相続人へ相続の権利と義務が移り、他の相続人の相続割合も変わります。財産権が移転するのと同時に管理義務や責任も移転するのです。
特に不動産の場合には、不動産を現場で実際に管理する手間や時間および費用がかかり、取得したときの不動産取得税や毎年の固定資産税・都市計画税の負担が増えるため、不動産を相続するのは嬉しいことばかりではないのです。
相続放棄・限定承認の有無を確認する方法
家庭裁判所で一定の手続きをすれば、現在までの相続放棄申述の有無を調べられます。なお、調査機関は原則として3ヶ月であり、それ以上の期間の照会には応じられません。
図表6
相続放棄の照会ができる人 | ・相続人 ・利害関係人(債権者など) |
照会時に必要な書類 | <相続人が照会する場合> ・被相続人の本籍地記載の住民票の除票 ・被相続人と紹介者の戸籍謄本 ・紹介者の本籍記載の住民票 ・相続関係図 <利害関係人が照会する場合> |
照会手数料 | 無料 |
照会する家庭裁判所の管轄 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
照会にかかる調査期間 | 約3ヶ月間 |
裁判所 相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会をされる方へを基に筆者作成
まとめ|相続放棄期限が迫っていれば手続きは弁護士への依頼が確実
相続放棄は、相続人の確定と相続財産の正確な把握が肝心です。自ら行うこともできますが、相続放棄を申請すると撤回ができないため、後になって相続したくなってもどうすることもできません。
また、複数の相続人が限られた財産をめぐって話し合うため、相続放棄だけでなく遺産分割の内容や財産管理の方針・費用負担などで揉める可能性があります。
このような財産調査の不安や相続人間のトラブルは、司法書士や弁護士などの専門家に依頼すれば、費用はかかりますが予防や仲裁を迅速で効果的に代行してくれます。初回は無料で相談に応じてくれる事務所もあるため、漠然とした不安がある方は、それらを利用するのがよいでしょう。
出典
ベンナビ相続 限定承認とは|相続放棄との違いや手続き方法・費用・その後の流れを解説
法務省 司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務の認定
裁判所 下級裁判所
相続会議 相続放棄の手続きは自分でできる? 手順から注意点まで分かりやすく解説
裁判所 相続の放棄の申述ト
裁判所 相続放棄申述書(未成年)
裁判所 相続の放棄の申述 記入例2申述人が未成年の場合
裁判所 相続放棄申述書(成年)
裁判所 相続の放棄の申述 記入例1申述人が成年の場合
裁判所 相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会をされる方へ
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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