更新日: 2024.04.12 その他相続

家の名義変更とは? 手続きの流れや必要書類、費用、必要なケースをご紹介

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

家の名義変更とは? 手続きの流れや必要書類、費用、必要なケースをご紹介
家などの不動産を取得した場合に欠かせない手続きが、「不動産登記申請による名義変更手続き」です。
 
しかし、こういった状況は人生で何度も起こることではないので、いざという時に、どのようにするのか、何が必要なのか、費用はかかるのかなど疑問に思う方も少なくありません。
 
この「名義変更手続き」は、家を取得する原因(売買、相続、生前贈与、財産分与)によって必要となる要件が異なります。費用を抑えるために自分で手続きが行えればよいのですが、そのためには一定以上の知識が必要になります。
 
この記事では、主に売買や相続で家を取得した際の名義変更手続きについて解説し、手続きの注意点や、専門家に依頼する際の費用やメリット・デメリットについても触れています。ぜひ参考にしてみてください。
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家の名義変更とは?

家の名義変更とは、法務局に登録されている家の所有名義を新たな所有名義に変更して登録し直す手続きです。

家や土地などの不動産は全て所有者が法務局に登録されていて、誰でも閲覧や証明書の入手ができます。不動産は外観からは一見して所有者が分からないため、勘違いや揉めごと、詐欺などが起こらないように、所有者や面積および付随する権利などの情報は不動産ごとにまとめて登記簿に登録し、閲覧希望者へ情報を開示する公示制度をとっています。

また、第三者からの権利の主張に対して、不動産の正当な所有者が自分の所有権その他の権利を主張して対抗できる要件として不動産登記が必要です(民法第177条)。つまり、売主の不動産と買主の売買代金とを交換して実際に不動産の引き渡しを受けても、買主は自分の名義へ変更する登記まで完了しなければ安心してはいけないということなのです。

家の名義を変更するには、登記申請書とともに変更情報を裏付ける証明書を添付して、法務局へ提出し2週間前後待ちます。この登記申請書には原因(売買、相続、贈与など)に応じて記載すべき内容や添付する資料が決まっており、その情報が不足していれば登記申請は補正指示や却下をされてしまうためご注意ください。

登記申請は自分で行えますが、司法書士(登記申請の全手続きの代行ができる国家資格者)に有償で依頼することもできます。

家の名義変更が必要になるケースとは?

家の名義変更が必要になるケースは、おもに下記の4つです。

・家の売却や購入をするとき(売買)
・故人の家を承継するとき(相続)
・家を無償で譲り受けるとき(贈与)
・離婚で財産を分けるとき(財産分与)

それぞれについて以下で解説します。

家の名義変更が必要なケース1. 家の売却や購入をするとき(売買)

家を売買すると家の所有者が売主から買主へと変わるため、買主は完全な所有権を手に入れるために、家の引き渡しを受けるだけでなく、所有権の登記名義人を自分に書き換える登記申請手続きを法務局で行います。

銀行で住宅ローンを組んで家を購入する方なら、手付金や頭金はすでに支払っているので、残りの売買代金を売主へ支払う(残金決済)と、司法書士が登記申請書類一式をもって、その日のうちに登記申請書を提出して、名義変更ができるようにします。

実際には、住宅ローンを組んで購入した家や土地には「抵当権」が設定されるため「所有権移転登記」と合わせて「抵当権設定登記」も行われます。

家の名義変更が必要なケース2. 故人の家を譲り受けるとき(相続)

親が亡くなったとき、親の財産は相続人が引き継ぎます。もしも、相続財産に家などの不動産が含まれる場合には、家の所有者は故人から相続人へと移るため、家の名義変更(相続登記)を行います。

相続登記には、故人が亡くなったことを証明する除籍(戸籍)謄本や誰がその財産を引き継ぐのかを証明する遺言書や遺産分割協議書など、たくさんの証明書類が必要です。書類の数は、故人が亡くなるまでに住んだことのある自治体の数や人生のイベント(婚姻や養子縁組など)の数および相続人の総数などによって異なります。

なお、2024年4月1日から相続登記の義務化がはじまるため、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日や遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。しかも、制度開始前の過去の相続登記も対象になり、制度開始から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

もしも正当な理由なく期限までに登記しなかった場合には、10万円以下の過料が科せられる場合があります。

家の名義変更が必要なケース3. 家を無償で譲り受けるとき(生前贈与)

贈与とは、贈与者が財産を無償で引き渡すことを約束し、受贈者がそれを受け取るとして双方が合意すれば成立する契約です。特に、贈与者が生きているあいだに行う贈与を「生前贈与」といい、家などの不動産が贈与された場合に、受贈者は家の名義変更の登記を申請しておいた方が良いです。

贈与の登記では、贈与の事実や当事者および財産の特定のために贈与契約書などを添付して行います。受贈者は家などの財産を無償で受け取りますが、その後の贈与登記は受贈者が家の所有権を第三者へ主張するために行う受贈者の利益のための手続きであるため、贈与登記にかかる費用は受贈者が負担するのが一般的です。

家の名義変更が必要なケース4. 離婚で財産を分けるとき(財産分与)

離婚する場合、結婚後に2人で築いた財産は半分に分けるのが原則です。これは、妻が婚姻中ずっと専業主婦で仕事に就かず無収入であったとしても、妻のサポートのおかげで夫が収入を得られたと考えられるため、2人で築いた財産とすることによるものです。

購入した家も財産分与の対象になりますが、家は分割できないため分与方法は状況によって選びます。

例えば、「一方の持分を他方が金銭で買い取る」や、「家の持分と同程度の価値がある別の財産を家の持分に代えて渡す」、「家の全ての持分をもらう側へ住宅ローンの債務者名義を変更する」などがあります。

しかし、持分の買取や別の財産を渡すといってもそれだけ高額の金銭や別の財産を用意するのは困難であり、債務者の変更の場合は銀行が出す条件が厳しいため現実的ではありません。

離婚に伴う財産分与では、家を売却して手元に残ったお金を分けるのがもっとも簡単な方法です。しかし、売却代金でローンが返済できない場合には手続きが複雑化するため、不動産会社や法律の専門家に相談することをおすすめします。

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家の名義変更をしなかった場合のデメリット

相続をした家の名義変更をしなかった場合には下記のデメリットがあります。

・第3者に不動産の所有権などを主張できない
・誰かに所有権を奪われる可能性がある
・不動産の賃貸や売買など活用ができない
・不動産を担保にして融資が受けられない
・相続人が増えて権利関係が複雑になる
・相続登記義務違反で10万円以下の過料が科される

それぞれについて解説します。

<第3者に不動産の所有権などを主張できない>
不動産の権利を第三者へ主張できる唯一の方法が不動産登記です。

不動産は見ただけでは所有者や権利関係が分からないため、登記名義人を権利者と推定します。つまり、名義変更を終えなければ対外的に所有権を取得したとはいえないのです。

<誰かに所有権を奪われる可能性がある>
悪意ある別の相続人が勝手に自分の名義に書き換えて、さらに誰かに売却してしまう可能性はゼロではありません。

この場合、その相続人が勝手に名義を書き換えたことを知らない誰かが不動産の登記をしてしまうと、その不動産を取り返すことができなくなってしまいます。

<不動産の賃貸や売買など活用ができない>

賃貸や売買を仲介する不動産会社は、当人が所有者かどうかを登記名義と本人確認証明書などの一致で判断します。登記名義が旧所有者のままでは十分な不動産の活用はできません。

<不動産を担保にして融資が受けられない>
不動産を担保にした銀行融資は、相続登記が完了して相続人名義に変わっていなければ、融資申込すら受け付けてくれません。相続の事実があっても、登記名義人でない人は無権利者と判断され、無権利者に対してお金は貸さないのです。

<相続人が増えて権利関係が複雑になる>
相続登記が終わらないうちに次の相続が始まる数次相続や、相続発生時点で推定相続人が亡くなっている代襲相続の発生する可能性が生じ、相続関係や手続きが複雑になり、費用も膨らみ、遺産分割が話し合いではまとまらなくなることもあります。

<相続登記義務違反で10万円以下の過料が科される>
2024年(令和6年)4月1日から相続登記の義務化が始まります。相続により不動産の所有権を取得したことを知った日や遺産分割が成立した日から3年以内に正当な理由なく相続登記を申請しなければ10万円以下の過料が科されます。

対象となるのは全ての相続登記であり、過去の古い相続も相続登記義務化制度の開始後3年以内に申請しなければなりません。

家の名義変更を行う際に必要な手続き

家の名義変更手続きには、大きく分けて下記の手続きが必要です。

・添付書類の準備
・登記申請書の作成
・登録免許税が安くなる特例の書類の準備

ここから、それぞれについて解説します。

添付書類の準備

不動産登記は登記義務者と登記権利者が共同で行うものであり、登記義務者とその権利を証明する権利証(登記済証もしくは登記識別情報)や登記権利者が権利者であることを証明する登記原因証明情報や権利者と義務者の本人確認証明書(免許証やパスポートなど)などが必要です。

その他にも、登記申請には原則として下記のような書類が必要になりますが、いずれも該当する自治体窓口にて有償で入手できます。

・不動産の固定資産評価証明書
・買主の住民票
・売主の印鑑証明書

なお、相続登記の添付書類に関しては、全相続人を確定させるため、被相続人と全相続人との関係を知るために取り寄せたいわゆる「戸籍謄本一式」を必ず添付しなければなりません。

続いて、「登記原因によって異なる書類」をご紹介します。

・売買:売買契約書
・相続:遺言書または遺産分割協議書など
・生前贈与:贈与契約書または贈与証書など
・財産分与:財産分与協議書など

 

登記申請書の作成

登記申請書の作成については、ひな形を入手して、添付書類から必要事項を抜き出して転記しながら作成します。

以下の図表1・図表2・図表3・図表4は、法務局の公式サイトからダウンロードできる登記申請書のひな形です。

図表1


※法務局 所有権移転登記申請書 (売買)より引用

図表2


※法務局 所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)より引用

図表3


※法務局 所有権移転登記申請書(贈与)より引用

図表4


※法務局 所有権移転登記申請書(財産分与)より引用

登録免許税が安くなる特例の書類の準備

登録免許税は下記の特例を適用すれば安くなる場合があるため、該当する取引の場合には必要書類を揃えて適用しましょう。

・住宅用家屋の所有権の保存登記等の軽減税率
・特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等の軽減税率
・認定低炭素住宅の所有権の保存登記等の軽減税率
・小規模宅地等の特例
・配偶者控除
・空き家等に係る特例

なお、取得する家に特例を適用させるための要件は下記のとおりです。

<特定認定長期優良住宅>

(1)長期優良住宅の普及の促進に関する法律第10条第2号の規定に該当する
(2)住宅用家屋は、新築または建築後1年以上経っているが未使用
(3)新所有者が自己居住用で購入する
(4)家の床面積が50平米以上

 

<認定低炭素住宅>

(1)都市の低炭素化の促進に関する法律第2条第3項に規定する低炭素建築物に該当する
(2)住宅用家屋は、新築または建築後1年以上経っているが未使用
(3)新所有者が自己居住用で購入する
(4)家の床面積が50平米以上

 

<特定の増改築等がされた住宅用家屋>

(1) 宅建業者が増改築をした家(売買の前2年以内に宅建業者が取得)である
(イ)以下の(A)(B)いずれかの要件を満たす工事をしている
(A) 大規模修繕要件(次の工事費用の額の合計額が100万円超)
・増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替えの工事
・区分所有部分の床、階段または壁の過半に行う修繕または模様替え工事
・家の居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関などに行う修繕工事
・耐震の安全基準に適合させる耐震改修工事
・バリアフリー改修工事
・省エネ改修工事
(B)住宅性能向上要件(次の工事費用の額がそれぞれ50万円超)
・前述の各種改修工事(耐震、バリアフリー、省エネ)
・既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結された防水工事
(ロ)上記(イ)の工事費用総額が家の売買価格の20%相当額である

(2)以上の(1)家は建築後に使用されたもので次の要件に該当するもの
(イ)家の床面積が50平米以上
(ロ)新築から10年が経過している
(ハ)次のいずれかに該当する
(A)耐震の安全基準に適合した構造技術的基準を満たしている
(B)昭和57年()1月1日以後に建築された

(3)特例を受ける個人が宅建業者から家を購入し自己居住する

※特定の住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせより抜粋 

以上の特例を適用して登録免許税を安くするためには、特例の要件を満たすことが証明できる書類が必要です。必要書類の詳細は、税理士や税務署や国税庁などへお問い合わせください。

家の名義変更手続きにかかる費用

不動産価額が100万円以下の土地の所有権移転や一部の相続登記を除き、不動産の登記申請では原則として登録免許税を納税しなければなりません。また、相続登記では戸籍などの取得費用が必ずかかります。

登記申請手続きを司法書士に依頼するには、上記に加え司法書士報酬がかかります。

家の名義変更を自分で行う場合の費用


相続登記で必要になる戸籍などの取得費用は図表5をご参照ください。

図表5

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 450円(以下1通ごとの費用)
除籍謄本(除籍全部事項証明書) 750円
改製原戸籍謄本 750円
戸籍の附票の写し 約300円
住民票除票の写し 約300円(自治体により変動)
印鑑証明書 約300円(自治体により変動)
固定資産評価証明書 約300円(自治体により変動)
郵送料(郵便切手代) 300〜1000円

※総務省 申請手続等の見直しに関する調査
京都市情報館 証明書の手数料
都城市 戸籍にはいろいろな種類があり、手数料も違うと聞きましたを基に筆者が作成

各書類の申請書のひな形はネットから無料で入手できます。また、登記申請書の書き方もネットから情報を探すか、法務局もしくは司法書士会や自治体が開催する無料登記相談窓口を活用しながら作成することができます。

家の名義変更を司法書士へ依頼する費用

相続登記を司法書士へ一任した場合の報酬目安は7万円前後です。したがって、相続登記を司法書士へ依頼する総費用は、前述の戸籍などの費用である2000〜4000円を加えた金額を目安にするとよいでしょう。

ただし、相続は、相続人の人数や戸籍取得の手間、および揉めごとの有無などによって変動するとご理解ください。なお、前述した報酬目安に登録免許税は含んでいません。

なお、司法書士に報酬規程はなく、事務所ごとに自由に報酬を設定しています。そのため、複数の事務所から報酬規程の提示と手続き内容および見積書の説明を受けて、比較してから決定しましょう。

なお、図表7は2018年(平成30年)1月に実施された報酬に関するアンケートの抜粋です。全国の司法書士連合会の会員から無作為に抽出した司法書士を対象とする無記名アンケートで、1193通の郵送回答のうち「所有権移転登記(相続)」の報酬に関する結果です。

図表7


※日本司法書士会連合会 司法書士の報酬 報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)より引用

地域によるばらつきがあるものの、司法書士報酬の平均は6.5万円前後という結果であり、戸籍などの実費を含めた7万円前後が目安になるといえます。

ただし、アンケートの前提である相続内容は「不動産2つを相続人3名で協議して1人が単独相続する」というシンプルなものです。
もしも、相続登記を長年にわたって放置していて代襲相続や数次相続により相続人が数十人になっていれば、相続人を確定させるだけでも大変な手間がかかります。

そして、相続人に高齢の認知症の方や未成年者がいれば、家庭裁判所へ申し立てて、この相続に無関係の成人から特別代理人を選任してもらい、その人たちを含めて遺産分割協議を行わなければなりません。

さらに、取り分を巡ってあちこちで揉めごとがあるような場合には、弁護士の手を借りなければならなくなり、案件の規模が大きくなって費用も膨れ上がります。この状況を回避するためには、相続発生後に速やかに手続きを完了させて、利害関係者が少ないうちに決着させるということに尽きるのです。

家の名義変更手続きを自分で行う場合の手順

相続によって家を譲り受ける場合に、自分で書類を収集し申請書を作成して、法務局へ持参する方法で相続登記をする手順を解説します。

相続した家の名義変更手続き手順

(1)相続登記に必要な書類を準備する
相続登記では下記の事項を確定させなければ登記申請ができません。そのため、相続登記ではそれらの確定情報の根拠となる書類を添付する必要があります。

・被相続人が死亡した事実を証明する
・被相続人と相続人との関係を証明する
・全ての相続人を確定させる
・家を相続する相続人および相続割合が決まっていることを証明する
・新所有者になる相続人の住所を示す

(2)相続登記申請書を作成する
申請書のひな形に沿って、添付書類から必要事項を拾い出して申請書に記載します。なお「相続関係説明図」は相続登記の必要書類ではありませんが、戸籍謄本・除籍謄本の原本の還付を受けるためには必要になります。

(3)登録免許税を納税する
登録免許税の納税方法はおもに次の2パターンです。

・固定資産税評価額と相続税率から登録免許税額を計算し、登記申請前にあらかじめ金融機関で支払い、その領収書を登記申請書に添付する
・登録免許税額分の収入印紙を法務局や郵便局で購入して台紙に貼付し、その台紙を申請書に添付する

(4)法務局へ提出する
登記の申請は、申請書と添付書類を法務局へ持ち込んで提出します。

(5)補正指示に対応する
相続登記に関する事実関係の不具合や添付書類の不備もしくは不足などがあれば、登記官は書類の確認作業をいったんストップさせて、申請者へ補正の指示を出します。

申請者が指摘された箇所の不具合を解消すれば、書類の確認作業が再開されますが、補正が困難な場合や不可能な場合には、申請が却下されることもあります。

(6)法務局へ登記識別情報(権利証)を回収
登記が完了すれば、完了後の情報が記載された登記識別情報を取得して、一連の手続きは終了です。

生前贈与された家の名義変更手続き手順

贈与の当事者と対象不動産が分かる書類として贈与契約書を用意しますが、それ以外の手順は前述の相続の(2)〜(6)とおおむね同じになります。

財産分与した家の名義変更手続き手順

財産分与の当事者と対象不動産や分与割合が分かる書類として財産分与協議書を用意しますが、それ以外の手順は前述の相続の(2)〜(6)とおおむね同じになります。

家の名義変更手続きをする際に必要な書類

必要書類の中でも「登記原因を証する書面」は登記原因によって異なるため、家の名義変更の登記原因としてよくある売買と相続の場合について解説します。なお、名義変更の登記を司法書士に依頼する場合には、以下に示した書類に加えて「司法書士への代理権限証書(委任状)」が必要です。

遺産分割協議書、その他の重要書類や、登記申請以外でも利用する戸籍や住民票などは、一定の手続きを取れば、申請が終われば返してもらえます。その登記のためだけに作成された書類以外は、コピーと原本を添付して申請し登記手続き完了後に原本を返してくれる「原本還付」という手続きをとっておきましょう。

次項では、売買と相続に共通する書類と、売買と相続で異なる特有の書類をそれぞれ記載しています。

<売買と相続で共通する書類>
・住民票(家を取得する者)
発行後3ヶ月以内のもので、本人だけが載った抄本でもよいが、未成年者は本籍地の記載を要します。

・印鑑証明書(売買で家を取得する者が住宅ローンを組む場合)
発行後3ヶ月以内のものが必要です。

・登記申請書
登記原因によって異なる必要事項を記載して作成します。
必要事項の記載があれば、パソコンで作成でき、ひな形や書式や紙の品質も問いません。

・登録免許税の納税書類
事前に金融機関で納税した場合には領収書、登記申請で納税する場合には収入印紙を、台紙に貼付します。

<売買特有の書類>
・登記原因証明情報
売買契約書を添付することもありますが、売買契約の存在と売買契約により所有権が移転したことを売主が確認した書面を別途作成して添付するのが一般的です。

・登記識別情報または登記済証(権利証)
売主から登記識別情報をもらい、または権利証を売主から借用します。

<相続特有の書類>
・戸籍謄本一式
被相続人の出生まで遡って全ての戸籍を取得し、相続人の現在の戸籍にまでつながる戸籍一式を取得します。
なお、一部の戸籍謄本が本籍地以外でも取得できるようになりました。(2024年3月1日施行)

・遺言書または遺産分割協議書
自筆証書遺言は相続人が開封しないで家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
公正証書遺言は正本が見つからない場合、公証役場から正本を取得します。

遺言書ではなく遺産分割協議書を添付する場合は、全相続人の実印の捺印および印鑑証明書の添付がある遺産分割協議書が必要になります。

・相続関係説明図
自由書式で、パソコンなどで作成しても構いません。

自分で家の名義変更登記をするメリット・デメリット

端的にいえば、自分で家の名義変更登記をするメリットは費用が最小限に抑えられることで、デメリットは手続きが難しく手間やリスクがあることです。

名義変更手続きを自分でするメリット

自分で登記手続きをすれば、登記手続きに必要な実費以外の費用がかからないことがメリットです。

名義変更手続きを自分でするデメリット

自分で登記手続きをするデメリットは下記のとおりです。

(1)全般的に手続きが難しい

登記申請手続きは登記原因によって記載内容や添付書類などの要件が異なるため、その違いや内容を理解しないと必要書類の収集や申請書の作成ができません。

登記官には形式的審査権しかないため、登記内容の整合性や書類の不備があれば補正の指示か却下をするしかなく、原則として気を利かせて職権で補正してくれるようなことはありません。1文字でも添付書類と登記申請書で記載が違っていれば、登記手続きが止まることになるのです。

(2)金融機関が司法書士を利用することを融資の条件にしている

これは、住宅ローンを組んで不動産を購入する場合に限ったデメリットです。2023年12月現在、下記の銀行ではこのような融資条件を設けています。

・三菱UFJ銀行
「抵当権設定登記は、原則当行指定の司法書士が行います」

・りそな銀行
「別途司法書士等同席のもと、ご融資対象物件(土地と建物)への抵当権設定のご契約が必要です」

・みずほ銀行
「みずほ銀行指定の司法書士と、抵当権設定登記申請に必要な手続きのため面談をしていただきます」

つまり、住宅ローンを組む際は司法書士への依頼を原則とするケースが多いということです。

これは、一見すると銀行の都合を押しつけられたようにも見えますが、実は取引の安定と安全を最優先にしたセーフティーネットになっているのです。では、なぜ住宅ローンで不動産を買う場合には司法書士へ依頼するのかについて解説します。

まず、売主の住宅ローン返済が残った状態の不動産を、買主が住宅ローンを組んで購入する場合の手順として下記のことが必要です。

・売主は売却金で住宅ローンを完済して、不動産に設定した抵当権を抹消する
・買主は不動産の所有権を取得して名義を自分に書き換える
・買主は銀行融資を受ける条件として、購入した不動産に抵当権を設定する

ちなみに、抵当権とは金融機関から住宅ローンなどの借入れを行う際に、借入金の担保として不動産(マイホームなど)に設定される債権者(金融機関)のための権利です。もしも債務者(買主)がローンを返済できなくなった場合、債権者(通常は金融機関)は抵当権を実行してその不動産を差し押さえて競売にかけ、売却金からローンの残債を強制的に回収することができます。

ただし、ローンを計画通りに返済していれば何も恐れることはなく、ローンを借りて購入した不動産には必ず付いている権利です。つまり、抵当権とは金融機関の貸し倒れリスクを回避して、債務者(買主)が自己資金の何倍もの大きなお金を使えるようにすることを実現する権利なのです。

不動産の売買では、売主側における抵当権の抹消と買主の抵当権の設定を同日のうちに確実に行わなければ、住宅ローンによる不動産の購入手続きは完成しません。

このような重要な登記手続きを、専門家以外に任せることはリスクがあるため、金融機関は専門家である司法書士への依頼を融資条件としているという側面があるのです。

家の名義変更手続きを専門家に依頼するメリット・デメリット

端的にいえば、専門家に名義変更登記を依頼するメリットは、手間なく安全に手続きが終えられることで、デメリットは専門家に依頼する際の報酬がかかることです。

名義変更手続きを専門家に依頼するメリット

専門家に依頼すれば、売主と買主が手間と時間をかけずに、安全で確実に登記手続きが完了できます。

また、ローンで不動産を購入する場合は特に、売主への迷惑や自分の購入の失敗などのリスクおよび手続き全般への心配がなく、銀行の融資条件もクリアできるという点も大きなメリットです。

名義変更手続きを専門家に依頼するデメリット

専門家に登記手続きを依頼すれば、登記手続きに必要な実費に加えて司法書士報酬の支払いが必要になることがデメリットです。

相続した家の名義変更登記はただちに終わらせよう

相続した不動産の名義変更は、自分が相続によって不動産を引き継ぐことを知った日または遺産分割が成立した日から3年以内に申請をしなければなりません。しかし、相続税の申告と納税は10ヶ月以内と期間が短いために急いで取りかからなければ、期限はあっという間に到来します。

不動産ごとに引き継ぐ相続人や相続割合を確定させて、相続登記までを期限内に完了させるために、一から知識を付けて時間を割いて失敗なく手続きを完了させるのは、ハードルが高いと感じる方も多いでしょう。また、関連知識があり登記手続き内容も充分に理解していたとしても、ローンで不動産を購入する場合に、銀行が登記の自己申請を認めてくれないケースもあります。

自分で手続きをして費用を抑えることも可能ですが、不動産の名義変更で困った場合には、司法書士へ相談するとよいでしょう。

出典

法務局 不動産登記の申請書様式について
法務局 所有権移転登記申請書 (売買)
法務局 所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)
法務局 所有権移転登記申請書(贈与)
法務局 所有権移転登記申請書(財産分与)
国税庁 登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
総務省 申請手続等の見直しに関する調査 -戸籍謄本等の提出が必要とされる手続を中心として-
京都市情報館 証明書の手数料
都城市 戸籍にはいろいろな種類があり、手数料も違うと聞きました
日本司法書士会連合会 司法書士の報酬 報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)
三菱UFJ銀行 「かんたん事前審査」のお申し込みにあたってト
りそな銀行 お手続きの流れ(新規)
みずほ銀行 お手続きの流れ

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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