更新日: 2024.04.25 その他相続

不動産名義変更の基本をわかりやすく解説|手続きの流れや期間必要書類、費用

不動産名義変更の基本をわかりやすく解説|手続きの流れや期間必要書類、費用
不動産の所有者やその他の権利に変動があれば、その変更について関係者以外にも知らせるために、不動産登記を申請します。
 
相続によって不動産を手に入れた方も、不動産の所有者が故人から自分へ変わったという事実を、相続登記(名義変更)によって書き換えて対外的に示さなければならないのです。
 
この記事では、「相続によって不動産の名義が変わった場合に行う不動産登記」について、相続内容の確定や名義変更(登記)の流れおよび書類の作成や費用について、注意点を交えて解説しています。
FINANCIAL FIELD編集部

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不動産登記は権利主張のための必須手続き

 
不動産の権利を適正に主張するには不動産登記が必要である理由を解説します。
 

不動産登記は不動産の公示制度

 
不動産登記とは、対象不動産に関わる所有権およびその他の権利や義務を法務局へ登録して、誰でも閲覧できるようにする登録制度の手続きです。不動産登記を管轄する法務省は、不動産登記を下記のように定義しています。
 

不動産登記は、わたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積の他、所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載して一般公開します。
そして、権利関係などの状況が誰にでも分かるようにして、取引の安全と円滑をはかるという役割を果たします。

※法務省 不動産登記のABCを基に筆者作成
 
不動産は、一見しただけでは権利関係やこれまで辿ってきた経緯を知ることはできないため、何も知らないままに権利の行使や売買などの取引を行うにはリスクがあります。そのため、統一した用語や手続きを用いて登録や公示ができる制度を設けることで、不動産に関わる方々の公平性や安全性が担保できるようになり、安心して保有や取引ができるようになったのです。
 

相続後にも不動産登記(名義変更)手続きが必要

 
不動産の所有者が亡くなると、その不動産の所有名義は相続人へと移転します。被相続人(不動産を所有していた故人)が所有していた預貯金や不動産その他の財産は、相続内容の指定がなければ法定相続割合で全相続人が全ての財産を共同で相続(共有)します。
 
しかし、相続内容を指定した法的にも有効な遺言書が見つかった場合で、被相続人が遺言書に残した相続方法の指示に従う場合には、遺言書が指定するとおりに遺産を相続します。
 
一方で、遺言書が見つからなかった場合もしくは遺言書の指示とは異なる内容で遺産を分割したい場合には、遺産分割協議で全ての相続人が合意した場合に限り、その合意内容にしたがって遺産分割ができます。つまり、遺産分割協議で全相続人が合意すれば、遺言書の有無にかかわらず全相続人の思うような内容で相続ができるのです。
 
このように、法定相続、遺言書、遺産分割協議などによって相続割合が確定後、不動産の所有権を第3者へも適法に主張できるように、相続登記(名義変更)をして実際の所有者と登記名義とを一致させます。
 
相続登記(名義変更)は、相続不動産に関して確定した権利や義務を対外的に主張することで自分の権利を守り、悪意ある第3者からの権利侵害や善意の第3者が損害を被らないようにする、相続後の手続きとしては最重要ともいえる手続きなのです。
 

相続した不動産を名義変更しなければいけない理由

 
相続した不動産を放置せずに、名義変更をしておかなければならない理由を解説します。
 

相続した不動産を名義変更する理由(1)第三者からの権利侵害に対抗できない

 
不動産の所有権その他の権利について、権利を主張してくる第3者に対して「自分が真の権利者である」と排他的に主張するためには、登記名義を自分に書き換えるなど不動産登記(名義変更)手続きを適正に完了しておく必要があります。
 
つまり、売買や贈与や相続によって不動産の所有権を得たのに、自分に移転登記をせず、登記名義を前所有者のままで放置しておくメリットは何ひとつないのです。
 
例えば、Xさんが所有する不動産をAさんが購入しましたが、不動産登記(名義変更)を行わず所有者はXさん名義のままで放置しているとします。その後に旧所有者Xさんが不動産の名義がまだ自分にあるのを利用して、Aさんに売却したのと同じ不動産をBさんに売却し、Bさんが登記名義を自分へと書き換えました。
 
このような場合には、Aさんは自分の所有権をBさんに対して排他的に主張することができません。つまり、名義変更登記手続きをしていないAさんは法的に保護された所有権を持っているとは客観的には認められないため、購入代金を支払ったにも関わらず不動産の所有権を失う可能性があるのです。
 
したがって、不動産においては権利変動後に速やかに登記(名義変更)手続きを行って、現状と登記内容を合わせておくことが重要であり、これこそが将来的な紛争を防ぎ、自分の権利を確実に保護する方法なのです。
 

相続した不動産を名義変更する理由(2)不動産の売却、賃貸、担保設定ができない

 
不動産の売買や賃貸もしくは不動産を担保に入れて資金の融資を受ける場合には、不動産の所有者本人が手続きを行わなければなりません。
 
まれに、所有者に代わって本人から手続きの代行を委任された代理人が不動産取引を行う場合はありますが、その際には委任した本人が本当に不動産の所有者で、かつ代理人へ適正に委任しているのかを慎重に調べてから取引に入ります。
 
しかし、相続などで所有者が亡くなっているのに登記名義が変更されていない場合には、実際に相続人本人が不動産取引を行う場合であっても、登記名義が変更されるまでは不動産会社や銀行が取引を容認することはありません。つまり、不動産を相続した場合には、相続登記(名義変更)をしなければ無権利者と判断されて不動産を動かすことができないのです。
 

相続した不動産を名義変更する理由(3)相続人が増え続けて把握できなくなる

 
不動産の相続では、所有者が亡くなれば法定相続人へ法定相続割合で分配されたものと見なします。
 
例えば、不動産の所有者である夫が亡くなって妻Yと2人の子どもCとDがいる場合の相続では、まず妻Yが2分の1で、子どもが4分の1ずつの割合で不動産を共同相続(共有)したものと見なします。このように、相続が起こった不動産は所有者が一気に増えることになるのです。
 
この相続で相続登記(名義変更)を行わないうちに子どもCが亡くなった場合には、もしもCに配偶者Lと子どもMおよびNがいるなら、MとNはCが相続するはずだった遺産をそれぞれ8分の1ずつ相続する(代襲相続、配偶者Lは代襲相続しない)と見なします。
 
このように相続ごとに権利関係が複雑になっていくため、相続登記(名義変更)はできるだけ迅速に完了させなければ収拾が付かなくなるのです。例示した相続関係については図表1をご参照ください。
 
図表1


筆者作成
 
相続登記(名義変更)を迅速に完了しなかった場合に、相続関係が複雑になる制度である「代襲相続」と「数次相続」について解説します。
 
<代襲相続とは>
代襲相続とは、相続権を失った相続人に代わって、その子どもなどが相続人になる制度です。代襲相続の原因は、相続人の死亡の他にも相続欠格事由の該当や廃除の3つがあります。
 
前述した例では、Cが早くに亡くなっているために、Cが相続するはずの相続分4分の1をその子どもであるMとNが代襲相続人となって8分の1ずつ代襲相続する状況です。なお、配偶者に代襲相続はないため、配偶者Lに代襲相続分はありません。
 
<数次相続とは>
数次相続とは、被相続人が死亡して相続人への相続手続きと、その手続き中に死亡したさらなる相続人への相続手続きとが重なった状態をいいます。前述した例では、相続人Cの相続手続きが完了する前にCが亡くなってしまい、相続手続きが重なった状況です。
 
代襲相続と数次相続では、相続人が亡くなった時期の先後が異なります。代襲相続とは被相続人よりも先に将来の法定相続人がすでに亡くなっている場合であり、数次相続とは被相続人の死後に相続人が亡くなった場合です。
 
このように、相続登記(名義変更)に時間がかかる場合や放置している場合には、相続人が増えて手続きが複雑になるというリスクが高まります。また、相続人間の関係性が遠くなり、話し合いがまとまりにくくなっていくのです。
 
相続人全員の所在を確認するだけでも大変な上に、説明をして同意を取りつけたり、さらなる相続人を調査したりしなければなりません。このようにして、放置されて所有者が分からなくなった不動産が全国にたくさんあり、いま大きな社会問題になっているのです。
 

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自分で不動産の名義変更手続きをする手順

 
相続登記(名義変更)手続きには、下記の8つの手順があります。
 

(1)遺言書があるかどうか確認する
(2)全ての相続人を確定させる
(3)全ての相続財産を調査する
(4)相続不動産の履歴事項証明書を取得する
(5)遺産の分割方法および割合を決める
(6)名義変更に必要な書類を集める
(7)相続登記申請書を作成する
(8)法務局へ登記書類を提出する

 
それぞれについて解説します。
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(1)遺言書があるかどうか確認する

 
まずは、「被相続人が遺言書を残しているのか」、被相続人の身の回りを探します。遺言書には、不動産をはじめとする遺産を誰にどれだけ相続させるのか記載されているケースがほとんどであるため、それを原因証書(相続の指示内容が分かる書面)として相続登記(名義変更)手続きに使用するのです。
 
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、自筆証書遺言を見つけた場合には、勝手に開封せずに家庭裁判所へ持って行き「検認」の手続きを経なければなりません。もしも検認を受けず遺言書を開封すれば、相続財産の名義変更ができない可能性があり、さらに5万円以下の罰金を科される場合もあります。
 
一方で、公正証書遺言の正本(原本と同じ効力を持ち、手続きで使用する書類)が見つかればそれをそのまま使用します。公正証書遺言はしているものの正本が見つからない場合には、公証役場に保管された原本を複製して正本を再発行します。
 
遺言書が見つからなかった場合には、法定相続人へ法定相続分どおりに相続する場合と、全相続人が参加する遺産分割協議で合意した相続内容で相続する場合があります。ちなみに、遺言書が見つかった場合でも、遺産分割協議で全相続人が合意すれば遺言書の指示とは異なる内容で相続することができます。
 
​​

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(2)全ての相続人を確定させる

 
法定相続人とは次の図表2にある関係者で、それぞれ法定相続割合が決まっています。
 
図表2


※法務局 埼玉司法書士会/さいたま地方法務局 エンディングノートより引用
 
相続人は、被相続人から見た配偶者、現在の配偶者との子ども、親、兄弟などですが、その他にもいわゆる「隠し子」や「養子」や「認知した婚姻でない関係の子ども(非嫡出子)」および離婚した元配偶者との間の子どもなどが考えられます。
 
これらを調べるには、被相続人が亡くなったときの戸籍から前住所や戸籍の編成(婚姻や離婚、転籍、養子縁組、改製など)などの形跡を辿り、被相続人が出生したときまで全ての戸籍を集めて調査しなければなりません。なお、​​集める戸籍関係の書類は次の図表3のようなものがあります。
  
図表3

戸籍 1通450円 本籍地単位で登録された身分関係を証明する公簿
原則として一組の夫婦と姓を同じくする未婚の子を単位とする
除籍 1通750円 他の市区町村への転籍や本籍の変更および在籍者全員の死亡などで戸籍登録者が一人もいなくなった状態の戸籍
改正原戸籍 1通750円 法改正で様式が改められた際の、改められる前の古い戸籍
戸籍の附票 1通350円 本籍地に在籍する者の住所の変遷を証明するもの
住民票 1通350円 住民登録をしている者の証明書
住民票の除票 1通350円 他の市町村への転出や死亡などにより住民登録が削除された住民票

筆者作成
※上記の発行手数料は目安であり、金額は自治体によって多少異なります。
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(3)全ての相続財産を調査する

 
財産の調査は次のような方法で行います。
 

・預金口座の入金履歴を調べる
・登記識別情報(権利証)を探す
・賃貸借契約書を探す
・固定資産税納税通知書の記載内容を確認する
・弁護士から金融機関へ預金口座の存在を照会する
・個人信用情報機関へ借入の履歴を照会する

 
相続に関わる不動産登記に限れば「登記識別情報(権利証)」と「固定資産税課税通知書」を見て、所有する不動産がないかを調査します。それぞれの書類の意味は下記のとおりです。
 
<登記識別情報(権利証)>
登記識別情報とは、不動産登記が完了した後の新所有者へ法務局から交付される文書で、権利証とも呼ばれます。この書類は、登記名義人本人であることを公的に証明する、不動産の所有者しか保有できない重要書類です。不動産の権利登記の際に、12桁のアラビア数字とその他の符号を組み合わせた文字列(パスワード)が発行されますが、登記識別情報はこの文字列(パスワード)自体が意味を持っています。
 
<固定資産税納税通知書>
固定資産税納税通知書とは、年度ごとの固定資産税額や口座振替の日付などの通知書と納付書を兼ねた書類です。通知書内の「土地・家屋課税明細書」には、固定資産税額の算定基準になる土地や建物の面積および評価額や固定資産税相当額などが、土地1筆もしくは建物1棟ごとに記載されています。
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(4)相続不動産の履歴事項証明書を取得する

 
登記識別情報や固定資産税納税通知書などで被相続人が所有していた不動産が分かれば、「履歴事項証明書(登記簿謄本)」を取得して、各不動産の現在の権利関係を調べます。
 
なお、相続登記の内容は全て、現在登記された被相続人名義から不動産を相続する新所有者へと名義を書き換える手続きです。つまり、履歴事項証明書を取得するのは、現在の不動産名義が、間違いなく被相続人であるかを調査する意味があるのです。
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(5)遺産の分割方法および割合を決める

 
相続不動産について、どの不動産を誰がどれだけ相続するかを確定させます。確定方法はおもに下記の3つです。
 

・遺言書の指示に従う
・法定相続割合に従う
・遺産分割協議で合意する

 
確定方法は、遺言書どおりでも、法定相続割合どおりでも、遺産分割協議の合意でも構いませんが、登記申請書に何らかの証拠書類を添えて申請し、登記官へ登記申請書の指示内容が正しいことを知らせなければなりません。
 
そのため、法定相続どおりに相続する場合でも「遺産分割協議にて法定相続どおりに相続すると全相続人が合意した」という遺産分割協議書を添付するほうが望ましいでしょう。
 
なお、遺産分割協議は全相続人が参加しなければ無効ですが、同じ日時に一堂に会する必要はありません。ただし、実印を押印して印鑑証明書を添付しなければなりません。なお、遺産分割協議書に記載すべき事項は次のとおりです。
 

・被相続人の死亡日、最後の住所、氏名
・相続人全員が分割方法や割合について合意している旨
・分割する相続財産の具体的な特定や内容
・相続人全員の住所、氏名、実印の押印

 
遺産分割協議書の公的なひな形はなく、必要事項が記載されていればパソコンで作成しても問題ありません。ただし、全相続人の意思を確認する重要な書類であるため、少なくとも各相続人の署名欄の住所と氏名だけは自署するほうが望ましいでしょう。
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(6)名義変更に必要な書類を集める

 
名義変更に必要な書類とは、登記申請書に記載する内容を証明するための書類は次の通りです。
 

・被相続人を特定する資料
・相続(被相続人の死亡)を証明する資料
・全相続人を確定させる資料
・被相続人が指示した相続内容が分かる資料
・相続割合につき相続人全員が合意していることが分かる資料

 
具体的な必要書類や取得方法については後述します。
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(7)相続登記申請書を作成する

 
登記申請書も公的なひな形はありませんが、図表4のように、ひな形の例となるデータを法務局の公式サイトからダウンロードできます。
 
図表4


※法務局 所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)より引用
 
また、図表5は法務局のサイトにある相続関係説明図です。
 
図表5

※法務局 静岡地方法務局 <記載例>より引用
 

自分で不動産の名義変更手続きをする手順(8)法務局へ登記書類を提出する

 
相続登記は登記申請書と必要書類を法務局へ提出して行います。申請する法務局は、相続不動産の所在を管轄する法務局であるため、相続不動産が広域に散らばっている場合には、複数の法務局への登記申請が必要になります。
 
なお、相続登記を含む不動産の権利の登記の所要日数は、補正がなかったものとして申請から完了まで8~11日を目安にするとよいでしょう。
 
登記申請の流れは次のとおりです。
 

(1)相続登記に必要な書類を集める
(2)相続登記申請書などを作成する
(3)登録免許税を納める
(4)法務局へ登記申請書を提出して申請する
(5)法務局の補正指示に対応する
(6)法務局から登記識別情報(権利証)を受け取る

 
それぞれについて解説します。
 
<登記申請の流れ(1)相続登記に必要な書類を集める>
相続登記申請書には、相続内容の根拠となる次の証明書類を集めて添付します。
 

・被相続人が死亡した事実
・被相続人と相続人との関係
・全ての相続人の確定
・不動産ごとの相続人および相続割合
・新所有者になる相続人の住所と氏名

 
<登記申請の流れ(2)相続登記申請書などを作成する>
登記申請書と相続関係説明図を作成します。
 
<登記申請の流れ(3)登録免許税を納める>
登録免許税の納税方法は次の2つです。
 

・登録免許税を登記申請前に金融機関で支払い、その領収書を登記申請書に添付する
・登録免許税額分の収入印紙を購入して台紙に貼付し、その台紙を申請書に添付する

 
<登記申請の流れ(4)法務局へ登記申請書を提出して申請する>
登記申請書と添付書類を相続不動産を管轄する法務局の窓口へ提出する。
 
<登記申請の流れ(5)法務局の補正指示に対応する>
登記申請書の記載や添付書類に不備があれば、指摘箇所の不備を解消する。
 
<登記申請の流れ(6)法務局から登記識別情報(権利証)を受け取る>
名義が書き換われば、法務局で登記識別情報(権利証)を受け取って相続登記申請は完了。
 

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不動産の名義変更手続きに必要な書類

 
相続による名義変更登記に必要な、図表6にある必要書類を集めます。
 
図表6

必要書類 取得場所や方法 書類の摘要
相続人全員の現在戸籍 ・現在の居住地の役所 ・被相続人の死亡後に取得したものでないといけない
被相続人の出生から死亡までの戸籍 ・誕生から死亡までの全ての居住地を管轄する役所 ・各役所へは郵送で取り寄せできる
被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票 ・同上 ・同上
不動産を相続する者の住民票もしくは戸籍の附票 ・現在の居住地の役所 ・登記内容は住民票どおりの住所氏名になる
遺言書もしくは遺産分割協議書 ・遺産分割協議書は司法書士などに作成を依頼
・遺言書は家庭裁判所で検認を受ける
・遺産分割協議書の作成期限はないが、相続税納税の期限と同様に相続を知ったときから10ヶ月以内とする
相続人全員の印鑑証明書
(遺産分割協議書を添付する場合に限る)
・各相続人の居住地の役所 ・遺産分割協議書は全員が実印を押印、相続人全員の記名押印がなければ無効
固定資産評価証明書 ・不動産の所在地を管轄する役所 ・固定資産税額まで分かる
相続関係説明図 ・自分または司法書士が作成する ・必須の資料ではないが添付するほうが望ましい

筆者作成
 

不動産の相続登記手続きの申請期限はいつまで?

 
相続登記の義務化は、2024年4月1日から始まります。なお、義務化の対象となる相続登記は、義務化制度が始まる以前の相続登記も含まれ、3年間の猶予期間の内に申請しなければならないため注意が必要です。
 
相続人は、自分が不動産を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務があります。正当な理由がないのに期限までに相続登記を申請しない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。また、遺産分割協議によって不動産を取得した場合も、遺産分割協議の合意から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
 
期間内に遺産分割協議の合意が難しい場合には、「相続人申告登記」という簡単な手続きが法務局で行えます。これを行った者は相続登記義務を果たしたと見なしてくれるため、期間満了が近い場合にはこの救済制度を活用しましょう。
 

自分で不動産の名義変更登記をするメリットとデメリット

 
自分で書類を作成して不動産の名義変更登記をするメリットとデメリットについて解説します。
 

自分で不動産の名義変更するメリット

 
自分で登記手続きをすれば、登記手続きに必要な実費以外の費用がかからないことがメリットです。また、相続登記では登記申請書を作成するまでに多くの調査と書類の取得があるため、多くのことが学べて勉強になります。
 

自分で不動産の名義変更するデメリット

 
相続登記による不動産の名義変更では、まずは相続人を確定し財産調査をして遺産分割の方針を決めます。そして、その方針に従って不動産の名義を適切に変更しなければなりません。
 
この相続登記には、民法をはじめとする法律や制度などの知識が必要で、正しい調査に基づいた書類作成の作業を伴います。また、相続人の確定や財産の調査には時間がかかり、必要書類は事実を確認しながら少しずつ集めなければならず、手間と時間がかかります。
 
専門家でない者がはじめてのことを調べながら行うと、ミスが起きる可能性があります。また、10ヶ月の相続税の申告および納税の期限や、3年の相続登記申請期限に間に合わせるのは、かなり大変といえるでしょう。
 
さらには、多くの役所手続きは平日の日中に限られるため、平日に仕事をしている方には時間の確保が厳しいともいえます。
 

司法書士に不動産の名義変更を依頼するメリットとデメリット

 
司法書士に不動産の名義変更登記を一任するメリットとデメリットについて解説します。
 

司法書士に不動産の名義変更を依頼するメリット

 
司法書士に一切の相続登記手続きを依頼すれば、相続人自らが手間と時間をかけずに、正確でミスなく期間内に登記手続きが完了します。
 
相続登記では、後になって新たな相続人や財産もしくは借金を発見すれば、また最初から調査や遺産分割協議などをやり直さなければならない場合もあります。
 
同居する近しい家族だけでなく、普段ほとんど交流がないような遠くの親族らと意見を合わせて遺産分割などを取りまとめるのは、専門家でないと難しい場合もあるでしょう。
 
専門家のサポートがあれば、将来的にメリットが多い遺産相続方法などの提案が受けられるため、無駄や失敗のない適切な遺産相続の結論が導き出せるメリットもあります。
 

司法書士に不動産の名義変更を依頼するデメリット

 
司法書士に相続人および相続財産の調査や登記手続きなどを依頼すると、司法書士への報酬の支払いを要する点がデメリットです。
 

不動産の名義変更にかかる費用の目安

 
不動産の名義変更にかかる費用を、最低限必要な実費と司法書士へ依頼する際の報酬に分けて解説します。
 

相続登記にかかる実費について

 
相続登記には、相続の調査および書類の収集費用と登記申請時の登録免許税がかかります。
 
<相続の調査および書類の収集費用>
 
戸籍などの書類は、相続人の人数や故人の人生での出来事(婚姻や離婚や養子縁組など)、および引っ越しの回数などによって書類の数が異なります。
 
書類の収集に必要な金額は、2000~4000円を目安にしておくとよいでしょう。
 
<登記申請時の登録免許税>
 
相続登記申請には登録免許税の納税が必要ですが、土地と建物の固定資産税評価額に対して0.4%を乗じて計算します。
 
なお、固定資産税評価額は、一般的な売買の流通価格の60~70%がひとつの目安になります。3000万円で売買取引される中古戸建て(土地と建物)の固定資産税評価額を仮に2000万円だと仮定すると、登録免許税額は8万円(2000万円×0.4%)です。
 
この8万円を事前に金融機関で支払って領収書を登記申請書に添付するか、もしくは8万円分の収入印紙を購入して登記申請書に貼付するか、いずれかの方法で納税します。
 

依頼する司法書士への報酬について

 
司法書士費用は、相続人の数が多くて相続不動産が域にわたる場合には、調査や相続人間の調整に手間と時間がかかるため、調査実費や報酬は高くなります。
 
相続登記に関する司法書士への報酬額は、6万~7万円を目安にしておくとよいでしょう。
 

相続による不動産の名義変更手続きは登記前の準備が重要

 
相続登記申請とは、相続不動産ごとに誰がどの割合で引き継ぐのかを、登記申請書に記載して証拠となる書類を添付して法務局へ提出する事務手続きです。
 
ただし、登記申請書の作成や申請自体はそれほど難しくありません。それよりも、相続人の確定や相続財産の調査および、状況や意見が異なる複数の相続人を取りまとめるなど、相続の方針を決定することが最も大変で大切な作業なのです。
 
各相続人の遺産相続に対する考え方を汲み取って、余計な揉めごとや思わぬ損害が出ないように、準備をしっかり行いたいものです。相続手続きには、複雑で多岐にわたる専門知識や意見をまとめる交渉力が必要になるため、専門家に依頼すれば費用はかかりますが、失敗なく安心して進められるでしょう。
 

出典

法務省 不動産登記のABC
法務局 埼玉司法書士会/さいたま地方法務局 エンディングノート
裁判所 戸籍の仕組み
法務局 所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)
法務局 静岡地方法務局 相続(遺産分割のとき)<記載例>
法務局 東京法務局 東京法務局各庁別登記完了予定日
日本司法書士会連合会 司法書士の報酬 報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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