更新日: 2024.06.28 その他相続

【弁護士監修】遺産相続で兄弟が絶縁に?トラブルになるケースや対策・対処法を解説

【弁護士監修】遺産相続で兄弟が絶縁に?トラブルになるケースや対策・対処法を解説
相続において、亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹は、常に相続人になるわけではありませんが、兄弟姉妹が相続人になった場合、兄弟間の関係が悪かったり、お互いの配偶者が遺産分割に口出しをするなどでトラブルになることがあります。
 
特に、被相続人が遺言を残していない場合、相続人間で遺産分割について話し合いをして決めるため、相続争いに発展しやすくなります。
 
この記事では、被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合の法定相続分や遺産分割の方法、兄弟間でトラブルにならないための対策について解説します。
菅野 正太

監修:菅野 正太(かんの しょうた) / 弁護士

上智大学法学部法律学科 卒業
早稲田大学大学院法務研究科 卒業。
弁護士法人永総合法律事務所の勤務弁護士

中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の勤務弁護士。
第二東京弁護士会仲裁センター委員、同子どもの権利委員会委員

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兄弟姉妹が遺産相続の当事者となる2つのパターン

亡くなった故人のことを「被相続人」といい、被相続人の財産を相続する権利がある人を「相続人」といいます。

相続の場面で、兄弟や姉妹が相続に関与する場面としては、一般的に、以下のとおり2つのパターンが考えられます。

(1)被相続人の兄弟姉妹が相続人(3人兄弟で、そのうちの誰かに相続が発生)
(2)被相続人の子ども(兄弟姉妹)が相続人(父親の相続を子ども2人で話し合うような場合など)

相続における兄弟姉妹は、被相続人との関係で考えるため、法的には(1)の相続人自身が被相続人の兄弟姉妹になる場合を意味します。(2)のように被相続人の子どもが相続人となり、子どもが兄弟同士という立場で遺産分割することはありますが、被相続人との関係では「子」であり、あくまで「子の相続」として考えます。

この記事では、(1)の被相続人の兄弟姉妹について、相続人となる場合や、遺産相続においてトラブルとなりやすいケース、相続争いにならないための対応策などについて解説します。

故人の兄弟姉妹が相続人となるのはどんな場合?

故人の兄弟姉妹は、相続において常に相続人になるわけではありません。どういった場合に兄弟姉妹が相続人になるか、また、相続人になる場合どういった権利が認められるかについて解説します。

相続人の範囲と相続順位

民法では、相続人となれる親族の範囲と相続順位について定めています(民法886条以下・図表1)。

図表1

被相続人との関係 相続順位
配偶者 常に相続人となる
第1順位
直系尊属 第2順位
兄弟姉妹 第3順位

※e-Govポータル 民法887条、889条、890条を基に作成
※直系尊属とは、親子関係でつながる血族の上の世代(親、祖父母、曽祖父母等)

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外は相続順位が定められています。子どもは第1順位の相続人となり、第2順位の直系尊属(故人の両親等)は、第1順位の子どもがいない場合に相続人となります。

故人の兄弟姉妹が相続人となる場合

相続順位が第3位である被相続人の兄弟姉妹は、第1順位の子や孫がいない、第2順位である両親や祖父母等の直系尊属がすでに亡くなっている場合に相続人となるほか、兄弟姉妹以外の相続人がすべて相続放棄をした場合に相続人となります。

故人の兄弟姉妹であるからといって当然に相続人になるわけではありません。

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相続人となる兄弟姉妹の法定相続分

では、兄弟姉妹が相続人になる場合、相続分はどのようになるのでしょうか。民法では、法定相続人の相続分について次のように規定しています(民法900条以下・図表2)。

図表2

相続人の組み合わせ 法定相続分
配偶者と子ども 配偶者:2分の1
子ども:2分の1
配偶者と直系尊属 配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹:全部

※e-Govポータル 民法900条を基に作成

配偶者は常に相続人となりますので、他の相続人の組み合わせに応じて相続割合が定められています。配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の相続割合となります。

故人の兄弟姉妹以外の相続人が亡くなった場合、もしくは兄弟姉妹以外の相続人すべてが相続放棄した場合には、すべての財産を兄弟姉妹が相続します。

また、子どもや直系尊属、兄弟姉妹が複数いる場合、各自の相続分は同じですが、異母兄弟や異父兄弟は、父母とも同じ兄弟姉妹の2分の1の相続分となります(民法900条4項)。

例えば、4000万円の財産を残して、3人兄弟(長男・次男・三男)の長男が亡くなった場合、それぞれの相続分は次のようになります(図表3)。前提として、長男に配偶者がいる場合と兄弟姉妹以外の相続人はいない場合で分けて考えるものとします。

図表3

法定相続人の組み合わせ 法定相続分 それぞれの相続財産
配偶者と兄弟姉妹 配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
(次男・三男それぞれ8分の1)
配偶者:3000万円
次男:500万円
三男:500万円
兄弟姉妹のみ 次男:2分の1
三男:2分の1
次男:2000万円
三男:2000万円

※e-Govポータル 民法900条を基に作成

また、図表4は、同じ事例で3兄弟以外に異母兄弟(1人)いた場合の法定相続分です。

図表4

法定相続人の組み合わせ 法定相続分 それぞれの相続財産
配偶者と兄弟姉妹
(異母兄弟あり)
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
(次男・三男が20分の2
異母兄弟が20分の1)
配偶者:3000万円
次男:400万円
三男:400万円
異母兄弟:200万円
兄弟姉妹のみ
(異母兄弟あり)
次男:5分の2
三男:5分の2
異母兄弟:5分の1
次男:1600万円
三男:1600万円
異母兄弟:800万円

※e-Govポータル 民法900条を基に作成

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兄弟姉妹には遺留分は認められない

兄弟姉妹には、法定相続人に認められる最低限の遺産を取得する権利である「遺留分」が認められていません(民法1042条)。

被相続人は遺言で自身の財産について誰に何を残すかを自由に指定することができますが、残された遺族の生活を保障するために、一定の制約をもうけた制度が遺留分です。

被相続人が「すべての財産を配偶者に相続させる」「すべての財産を〇〇に寄付する」などの遺言を残して亡くなった場合でも、相続人である配偶者や子、直系尊属は、遺留分について相続財産を請求することができます。

つまり、遺言がある場合、遺産相続は遺言に沿ってすすめていくことが前提ですが、遺留分については、遺言でも侵すことができない財産であり、遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求権(民法1046条)が認められています。

このような遺留分に関する権利は、法定相続人のうち、配偶者や子、直系尊属には認められていますが、兄弟姉妹には認められません。

兄弟姉妹には代襲相続が認められる

兄弟姉妹には代襲相続が認められています(民法889条)。代襲相続とは、本来相続人となるべき被相続人の子どもや兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合に、その子どもが代わりに相続することです。

被相続人の兄弟姉妹が、相続の時点ですでに亡くなっている場合に、その子ども、つまり被相続人の甥(おい)もしくは姪(めい)が代襲相続人となります。

ただし、相続時点で法定相続人である子どもだけでなく、孫も亡くなっている場合、その孫の子ども(被相続人との関係では曾孫)まで代襲相続されますが(再代襲)、兄弟姉妹の場合、甥や姪が亡くなっていても再代襲は認められません。

法定相続分と異なる遺産分割もできる

兄弟姉妹の法定相続分について紹介しましたが、法定相続分は遺産相続の1つの目安であり、必ずしもその通りに分けなければならないわけではありません。

遺言があれば、遺言の内容に沿って遺産分割をすすめますが、遺言がなければ、相続人間で遺産分割協議をして分割方法を決めます。このとき、すべての相続人が合意すれば、法定相続分と異なる遺産分割となっても問題なく、1人の相続人にすべて相続させることもできます。

相続財産を分割するには、次の4つの方法があります。

法定相続分と異なる遺産分割(1)現物分割

現物分割は、相続財産を物理的に分割する方法です。

不動産の場合、物件によっては、土地を分筆して、分筆後の土地をそれぞれ相続人が取得することも可能ですが、建物などは物理的に分けることができずこの方法は使えません。

法定相続分と異なる遺産分割(2)代償分割

代償分割は、1人の相続人が自らの相続分を超えて財産を相続した場合に、他の相続人に相続分を超えた分を現金(代償金)などで支払う方法です。

主な相続財産が不動産の場合、特定の相続人が自宅を相続し、自分の相続分を超える分を現金などで他の相続人に支払います。

法定相続分と異なる遺産分割(3)換価分割

換価分割は、不動産や有価証券などの財産を売却、換金して相続人間で分ける方法です。

代償分割の場合、不動産の評価が相続人間で分かれ、なかなか合意できないこともありますが、換価分割であれば、売却後の売却収入を相続人間で持ち分に応じて分けることができますので、平等に分割しやすい方法といえます。

法定相続分と異なる遺産分割(4)共有分割

共有分割は、財産の一部または全部を複数の相続人で共有する方法です。

不動産の場合、相続分に応じた持ち分を所有し、共有名義となります。共有分割は持ち分に応じた登記だけで簡単に分割できそうですが、長い目でみればデメリットもあります。

のちのち不動産を売却したり、土地上に建物を建てるとなった場合、共有者全員の同意が必要となりますし(民法251条)、また、共有者の1人が亡くなって相続が発生すると、不動産の権利関係がさらに複雑になる可能性があります。

兄弟姉妹が遺産相続トラブルになる5つのケース

兄弟姉妹が相続人となる場合について解説しましたが、どういった場合に兄弟姉妹の間で遺産相続のトラブルになりやすいのでしょうか。ここでは5つのケースを紹介します。

兄弟姉妹が遺産相続トラブルになるケース(1)主な相続財産が不動産であるケース

主な相続遺産が不動産だと、現金や預貯金、有価証券のように均等に分割できない場合もありますし、分割できたとしても不動産の価値が大きく下がってしまうとなると、相続人間の意見が分かれるなど、トラブルに発展しやすくなります。

主な相続財産が不動産である場合のトラブルとなりやすいケースの詳細を紹介します。

不動産の評価、代償金の額で合意できない

兄弟姉妹の1人が不動産を相続し、相続分を超える分を現金で他の相続人に支払う(代償分割)で、評価額や代償金の額で揉めるケースです。

換価分割であれば、実際に不動産を売却し、売却収入を相続人間で平等に分けることができますが、代償分割の場合、不動産の価値を評価し、それに基づいて代償金の額を決めることになります。この際、兄弟姉妹の間で不動産の評価額や評価方法について合意できず、トラブルになることがあります。

不動産を相続した相続人は、代償金を少なくするために、できるだけ評価額を低く見積もりたいと考える一方、代償金を受け取る相続人は、評価額が高いほど受け取れる金額が増えます。

また、不動産を相続した相続人が現金等を準備することが難しく、なかなか代償金が支払われずトラブルに発展することもあります。

不動産の処分方法で意見がまとまらない

不動産を売却するか、所有するかなど処分方法で意見がまとまらないケースです。例えば、亡くなった長男が住んでいた土地建物を、次男と三男が相続する場合、土地建物の処分方法としていくつか考えられます。

・売却して現金化する
・次男もしくは三男が相続し、代償金を払う
・次男と三男が共有で相続し、賃貸する など

不動産の場合、現金化する財産的価値以外にも居住する利用価値もありますし、実家などに対する思い入れが兄弟姉妹でも異なることもあるでしょう。また、売却して現金化したい必要性や意向も相続人間で異なりますので、不動産の処分方法で意見が食い違うことがあります。

自宅に住んでいる配偶者は相続分を請求される可能性がある

例えば、長男が遺言を残さず亡くなり、自宅に住む長男の配偶者とともに次男、三男が相続人となるケースで、自宅に住み続けるためには配偶者が不動産を相続し、次男、三男に、その相続分を代償金として支払わざるを得ない場合もあります。

主な相続財産が不動産で、自宅の評価額が4000万円であれば、兄弟姉妹の法定相続分である1000万円を請求される可能性があり、配偶者の支払いが難しい場合もあります。

遺産分割協議で話がまとまればよいですが、次男や三男から「自宅を売却して相続分を支払って欲しい」などの主張をされると、長男の配偶者と兄弟姉妹を含めたトラブルに発展することがあります。

兄弟姉妹が遺産相続トラブルになるケース(2)疎遠、仲の悪い兄弟同士で遺産分割協議がすすまない

遺言書がなければ、遺産分割協議で決める必要があります。兄弟間でも長年連絡を取り合わず疎遠となっていたり、兄弟間の関係がうまくいっていないと、遺産分割協議での話し合いがすすまないことがあります。

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があり、相続財産の調査、財産目録を作成し、財産の内容を開示した上で行う必要があります。相続放棄ができる期間や相続税の納付期限なども踏まえながらすすめる必要がありますので、遺産分割協議がすすまない、合意できないとなればトラブルになる可能性があります。

兄弟姉妹が遺産相続トラブルになるケース(3)兄弟の配偶者が遺産分割協議に介入してくるケース

兄弟姉妹自体の関係性は問題なくても、遺産分割協議に、兄弟姉妹の配偶者が介入してくることで揉めるケースです。兄弟姉妹の配偶者には相続する権利はありませんが、兄弟姉妹に代わって一方的な意見や主張をすることでトラブルとなる可能性があります。

兄弟姉妹が遺産相続トラブルになるケース(4)近くに住む兄弟が介護・面倒をみていたケース

例えば、亡くなった長男を近くに住む次男夫婦で介護など面倒を見続けていたような場合、遺産分割における寄与分の請求で揉めやすいといわれます。

民法では、「亡くなった兄弟の事業を無償で手伝っていた」「長期間にわたり無償で介護をした」など、被相続人の財産の維持、増加に特別の貢献をした相続人に、法定相続分を超える財産を請求できる権利を認めています(民法904条の2)。これを「寄与分」といいます。

寄与分を認めるか、どれくらいの金額を寄与分として認めるかなどは、遺産分割協議で話し合いますが、意見があわずトラブルに発展することもあります。

兄弟姉妹が遺産相続トラブルになるケース(5)相続財産の内容や使い方がはっきりしないケース

亡くなった兄弟姉妹の相続財産や亡くなる前の財産の使い方が明確でなく、トラブルとなるケースです。

例えば、亡くなった独身の長男を、近くに住む次男夫婦が身の回りの世話や介護していた場合など、被相続人の財産管理や家計の支出にも関係していることがあります。

相続になった場合、相続財産の内容や使いみちがはっきりしていなければ、他の相続人から「他にも財産があるのではないか」など、相続財産の内容や使いみちに疑念をもたれトラブルに発展する場合があります。

兄弟姉妹が遺産相続争いにならないための対応策

兄弟姉妹が遺産相続でトラブルとなるケースを紹介しましたが、相続争いにならないための対応策としてどういったものが考えられるのでしょうか。

兄弟姉妹が遺産相続争いにならないための対応策(1)遺言書を残す

一般的に、兄弟姉妹での遺産相続では相続争いになりやすいといわれますが、それを防ぐもっとも有効な方法は、遺言書を残すことです。遺言書があれば、その内容に沿って遺産相続はすすめられますので、兄弟姉妹の相続人同士で話し合う必要が少なくなり、トラブルになる可能性も減ります。

また、遺言書があることで、被相続人の希望に沿った遺産分割がすすめられます。例えば、配偶者にできるだけ多くの財産を残したいとき、遺言書がなければ遺産分割協議や法定相続分に沿って分割することになり、被相続人の意思とは異なる遺産相続になります。

この点、遺言書があれば、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、配偶者にすべての相続財産を残すこともできますので、トラブルになりにくいだけでなく希望通りの相続が実現できます。

遺言書の種類

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

これらの普通方式遺言以外にも特別方式遺言もありますが、活用される場面は限られています。ここでは、一般的に活用されることの多い「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」(民法986条、987条)についてその特徴を紹介します。

自筆証書遺言・公正証書遺言の特徴

図表5は、自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴をまとめたものです(図表5)。

自筆証書遺言 公正証書遺言
作成 自分で記述(自署) 公証人が記述
証人 不要 必要(2人)
保管方法 自分で保管もしくは法務局で保管することも可能 公証役場(原本)で保管
家庭裁判所
の検認
必要
(法務局に預けた場合は不要)
不要
費用 費用はかからない
(法務局に預ける場合、3900円/件)
財産の価額に応じて1万6000円~(公証人手数料など)

※e-Govポータル 民法967条~969条・1004条、法務省 自筆証書遺言保管制度、日本公証人連合会 公証事務を基に作成

自筆証書遺言では、遺言書の全文、作成日、遺言者の氏名を必ず遺言者が自署し押印する必要がある一方で、財産目録はパソコンで作成し、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーなどを添付する方法で作成できます。ただし、その場合でも目録の全ページに署名と押印が必要です。

また、裁判所の検認とは、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きで、遺言書を発見した人や保管していた人が、家庭裁判所で相続人立ち合いのもと遺言書の内容を確認します。自筆証書遺言を作成し法務局に預けない場合には、検認の手続きが必要です。

公正証書遺言は、全国約300ヶ所ある公証役場で作ることができます。2人以上の証人の立ち合いが必要となり、未成年や相続人、財産を受け取る人は証人になれません。証人になってもらう人がいない場合、公証役場でも紹介してもらえますが、1万円程度の謝礼が必要となります。

兄弟姉妹が遺産相続争いにならないための対応策(2)生前に相続財産や使い方をはっきりさせておく

被相続人の遺言書がない場合、まず相続財産や法定相続人を確定させなければなりません。相続手続きを揉めることなく、スムーズにすすめるために生前から相続財産を明確にしておくことが大切です。

例えば、被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人の財産形成や管理に関わっている可能性が高い配偶者が、財産を隠しているのではないかなどの疑念を持たれないようにしなければなりません。

また、財産を隠していなくても、遺産分割協議の途中やあとに、新たに相続財産が見つかると疑いがもたれやすいだけでなく、相続手続き自体の有効性にも問題が生じます。生前から相続財産を明確にし、預貯金などの用途もできるだけはっきりさせておくことで相続トラブルを防ぎやすくなります。

兄弟姉妹が遺産相続争いにならないための対応策(3)生前に兄弟姉妹で話し合いをしておく

生前から兄弟姉妹で話し合いをすることも相続トラブルを防ぐ方法です。主な相続財産が不動産である場合の分割方法や、特定の相続人が被相続人の介護を長期間担っていた場合の相続財産の分け方、相続税などについて、生前から話し合っておきましょう。

そうすることで、相続放棄の手続きや相続税の納付期限など時間的制約がある中でも、トラブルを防ぎながら、スムーズにすすめやすくなります。

兄弟姉妹が遺産相続争いにならないための対応策(4)遺言書の内容に専門家のアドバイスを受ける

遺言書を作成する際、弁護士などの専門家にアドバイスを受けることも有効な方法です。自筆証書遺言は手軽に作成することができますが、遺言書として有効な書式や内容となっているかが大切です。

専門家を活用することで、遺言書の書式や書き方を相談できますし、遺言執行者になってもらうことで遺言の内容を確実に実現しやすくなります。また、遺留分など法的なアドバイスを受けながらすすめられるメリットもあります。

図表6で、相続手続きにおいて相談できる主な専門家をまとめました。

図表6

相談内容 弁護士 司法書士 税理士 行政書士 不動産鑑定士・不動産会社
相続放棄
相続人・財産調査
相続不動産の評価
相続手続き書類の作成
相続登記
相続税の申告・納税

※日本弁護士連合会・日本司法支援センター法テラス・東京司法書士会「相続業務」・日本税理士会連合会「税理士とは」・日本行政書士会連合会「遺言相続」・公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会を基に作成

兄弟姉妹で遺産相続トラブルになったときの対処法

では、兄弟姉妹での遺産分割協議がまとまらない、トラブルになった場合、どのような対処法が考えられるのでしょうか。

兄弟姉妹で遺産相続トラブルになったときの対処法(1)弁護士などの専門家に相談する

遺産分割協議で相続人間の意見がまとまらない、揉めているという場合、まず弁護士などの専門家に相談することが考えられます。

相続人間に個人的な感情や実家への思い入れの違いなどが争いの要因となっている場合などは、弁護士を代理人として交渉をすすめてもらうこともできます。

兄弟姉妹で遺産相続トラブルになったときの対処法(2)簡易査定の活用を検討する

不動産を分割する場合、その評価額や代償金で合意できず揉めることがあります。

このような場合、不動産の評価方法として、不動産会社に査定を依頼することが考えられます。不動産会社の査定結果は売却手続きをすすめるための参考価格ではあるものの、簡易査定であれば無料で作成してもらえるため、一つの材料になります。

一方、不動産鑑定士に依頼することで、第三者の立場から「不動産鑑定評価書」という公的な証明力を備えた鑑定結果を知ることも可能ですが、不動産鑑定士に依頼するには、不動産の規模や種類に応じて、1件あたり20万円~費用がかかることから、初期の段階から不動産鑑定士の活用を検討する場面はあまり多くないでしょう。

兄弟姉妹で遺産相続トラブルになったときの対処法(3)家庭裁判所に調停・審判を申し立てる

遺言書がなく、遺産分割協議で最後まで合意できない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停によっても解決できない場合、審判手続きで争い、裁判所の決定を求めることになります。

審判手続きになると、結論がでるまでに長期間の時間を要することも少なくなく、その間遺産分割の手続きをすすめることはできません。

故人の兄弟姉妹が相続人になったときの注意点

ここでは故人の兄弟姉妹が相続人になった場合の注意点について解説します。

故人の兄弟姉妹が相続人になったときの注意点(1)相続税が20%高い

法定相続人には、配偶者のほか、子、父母などの直系尊属、兄弟姉妹がなることができますが、兄弟姉妹が相続する場合、相続税が2割加算となります。代襲相続によって、被相続人の甥や姪が相続人となる場合も2割加算となる点に注意しましょう。

故人の兄弟姉妹が相続人になったときの注意点(2)相続放棄は3ヶ月以内に手続きが必要

相続財産を調査した結果、プラス財産よりマイナス財産が多い場合、また、相続争いなどに関わりたくないという場合、相続放棄することもできます(民法915条)。相続放棄は、被相続人が残したすべての財産を放棄することで、最初から相続人でなかったものとして扱われます。

相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月(熟慮期間といいます)以内に行わなければなりません。期限内に何も行わなかった場合、原則として単純承認、つまりすべての財産を相続するものとみなされますので注意が必要です(法定単純承認:民法921条)。

故人の兄弟姉妹が相続人になったときの注意点(3)戸籍謄本の収集に手間がかかりやすい

兄弟姉妹の相続順位は第3位であるため、相続手続きの中で、被相続人に第1順位や第2順位の相続人がいないことを証明する必要があり、戸籍謄本を集めるために時間や手間がかかりやすくなります。

「被相続人の出生から死亡までの戸籍」を取得し、被相続人に子や孫などの第1順位の相続人がいないことを証明する必要があります。また、「被相続人の亡父母の出生から死亡までの戸籍」を取得することで、第2順位の相続人である被相続人の父母が亡くなっていることを証明する必要があります。

これに併せて「相続人全員の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)」その他状況に応じてこれら以外の戸籍が必要となることもあります。このように相続順位が第3位の兄弟姉妹の相続には、準備すべき必要書類が多く、手間がかかりやすい点には注意しましょう。

故人の兄弟姉妹が相続人になったときの注意点(4)他の相続人の相続放棄によって相続人になることがある

被相続人の兄弟姉妹の相続順位は第3位であり、第1順位の子どもや孫、第2順位の父母などがいれば相続人にはなりません。ただし、被相続人が借金などを残して亡くなった場合、第1順位、第2順位の相続人が相続放棄すると、はじめから相続人でなかったものとみなされ、第3順位の兄弟姉妹が相続人となることがあります。

連絡を受けて同じく相続放棄するにしても、熟慮期間(相続人になったことを知ってから3ヶ月)を超えないように注意しましょう。

兄弟姉妹での遺産相続に関するよくある質問

最後に、兄弟姉妹での遺産相続でよくある質問を紹介します。

絶縁した兄弟と連絡がとれない場合どうすればいいの?

まったく連絡を取り合っていない絶縁した兄弟でも、法的には兄弟姉妹としての相続権を持ちますので、その兄弟を抜きに相続手続きをすすめることはできません。

このような場合のとりうる方法は次のようなものがあります。

・戸籍の附票で住所を調査する
連絡先の分からない相続人の本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を取得することで、住民登録上の住所を確認できますので、現住所に手紙を送るか訪問するなどして連絡をとることができます。

・不在者財産管理人を選任する
家庭裁判所に申し立て、不在者財産管理人を選任することで遺産分割協議をすすめる方法です。この方法は、本人とまったく連絡がとれない、どこにいるかも分からず帰ってくる見込みが一切ないなど、行方不明といえる場合に活用できます。

また、何年も連絡がとれていない、災害などで生存の可能性が低い場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行い、認められると、法律上その人を死亡したものとすることができます。

異母兄弟や異父兄弟にも相続権はあるの?

被相続人の兄弟姉妹には、異母兄弟もしくは異父兄弟も含まれ、相続権があります。

父母とも同じ兄弟(全血の兄弟)と父もしくは母のみ同じ兄弟(半血の兄弟)では相続分が異なり、半血兄弟の相続分は全血兄弟の相続分の2分の1となります(民法900条4項)。

兄弟姉妹での遺産相続まとめ

被相続人の兄弟姉妹における遺産相続において、同順位で同じ権利を持つ兄弟姉妹であるからこそ、よりトラブルにもなりやすいといわれます。特に、相続財産の主なものが不動産だと、評価額や分割方法で合意できずトラブルにつながる可能性が高くなります。

また、兄弟姉妹の関係性が悪い場合や、遺産分割協議に配偶者が介入してくると、話し合いはさらに難しくなります。

遺産相続でトラブルになった場合の解決策として、弁護士に相談したり、裁判所の調停や審判を申し立てる方法もありますが、その前段階でできる最も有効な方法は、相続人や相続財産を確定させ、さらに、亡くなる前に遺言書を残してもらうことといえます。

遺言書は相続に関するトラブルを防ぎやすいだけでなく、被相続人の意思を反映させることができますので、弁護士など専門家の活用も検討しながら準備しましょう。

出典

e-Govポータル 明治二十九年法律第八十九号 民法
法務省 自筆証書遺言保管制度 09手数料
日本公証人連合会 公証事務 Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?
国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
日本弁護士連合会
日本司法支援センター法テラス
東京司法書士会 相続業務
日本税理士会連合会 税理士とは
日本行政書士会連合会 遺言・相続
公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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