更新日: 2024.04.22 その他相続

相続登記とは? 自分で行う・司法書士に依頼する場合の費用や義務化による変更点も解説

相続登記とは? 自分で行う・司法書士に依頼する場合の費用や義務化による変更点も解説
国税庁の調査によると、相続財産のおよそ4割が土地や家屋などの不動産となっています。不動産を相続すると、亡くなった方から不動産を取得した相続人に所有権が移りますので、名義変更の登記をする必要があります。
 
これまで、相続した不動産の登記について、不動産を取得した相続人に義務はありませんでしたが、2024年4月1日より不動産の相続登記が義務化されます。
 
この記事では、相続登記の義務化によってどう変わるか、また、相続登記にかかる費用や自分でする場合の注意点などについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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相続登記とは?

相続登記とは、亡くなった方(以下「被相続人」)から土地や建物などの不動産を相続した相続人が、不動産の登記上の名義を変更する手続きです。

相続した不動産の所有権が被相続人から相続人に変わりますので、相続不動産の所在地を管轄する法務局で、所有権移転登記を申請します。例えば、所在地が沖縄の土地を東京に住む被相続人の息子が相続した場合、相続登記を申請する法務局は沖縄になります。

相続登記の義務化とは?

相続登記については、これまでいつまでに登記しなければならないといった法的なルールはありませんでした。しかし、今回、相続後、一定の期限内に相続登記をすることが義務づけられ、期限内に行わなかった場合の罰則が定められました。

ここでは相続登記の義務化について、以下の内容を解説します。

・相続登記の義務化の時期
・相続登記が義務化される背景
・相続登記をしなかった場合の罰則
・ケース別の相続登記の期限 

 

2024年4月から相続登記の義務化スタート

2024年4月1日に相続登記を義務化する法律が施行されます。

不動産を相続した相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知り」、かつ「当該不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に、相続登記を申請する義務を負います(不動産登記法76条の2第1項)。

相続登記の義務化は、相続だけでなく遺贈(民法964条)により不動産を取得した場合も対象となります。遺贈とは、被相続人の遺言に従って、相続財産の一部または全部を譲ることです。

ただし、遺贈によって相続登記の義務化の対象になるのは相続人が不動産を取得した場合だけで、相続人以外への遺贈は対象となりません。

また、相続登記の義務化の対象となる権利は所有権のみで、相続の対象となる賃借権や地上権、抵当権などの権利は義務化の対象ではありません。

なぜ相続登記が義務化されるのか?

これまで明確な規定がなかった相続登記について、今回なぜ義務化されるのでしょうか。

相続登記義務化の背景には、所有者が不明となっている土地問題があります。

登記簿をみてもその土地の所有者が誰であるかすぐに判別できない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺地域の環境悪化や公共工事をすすめる阻害要因となるなど、社会問題となっています。

2022年(令和4年)国土交通省の調査によると、全国の土地のうち、所有者不明土地の割合は24%にのぼります。この背景には、人口減少・高齢化や都市部への人口移動による土地の利用ニーズの低下、相続登記を申請しなくても不利益を被ることがないといったことが挙げられます。

期限内に相続登記しなかったときの罰則

2024年の法律施行後、相続人は、不動産の相続を知ったときから3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

正当な理由がなく、この期限を過ぎてしまった場合、10万円以下の過料が科せられることになります。

ここでいう「正当な理由」とは、申請義務を負う相続人が重病等の事情がある場合や遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている場合、相続人が極めて多く、必要な資料や相続人の把握に多くの時間を要する場合などが該当します。

相続登記しなければならない期限をケース別に紹介

相続によって不動産を取得する方法として、遺言書や遺産分割協議による場合などがあります。ここでは、ケース別に相続登記をしなければならない期限について解説します。

遺言書に従って相続する場合

遺言書が残されている場合、「遺言者(被相続人)が死亡したことを知り」、かつ「自分が不動産の所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記しなければなりません。

自分が相続人になったことを知っているだけでなく、相続財産のなかに不動産があることを知った日が起算点となります。

遺産分割協議の合意による相続の場合

遺産分割協議は、複数の相続人がいる場合、相続人間で遺産分割の方法について話し合う協議です。

現金などの遺産は、相続人間で平等に分けられますが、不動産(特に建物など)の場合、平等で分けることが難しい場合も少なくありません。不動産を相続人間で共有するのか、相続人の1人が不動産を取得し、他の相続人の持ち分を現金等で支払うのかなど、どのように遺産分割をするか協議して決めます。

遺産分割協議が成立した場合、不動産を取得する相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

ただし、遺産分割協議で相続不動産の分け方で意見が対立しまとまらないことも考えられます。このような場合に、相続登記の義務化と同時に始まる「相続人申告登記」の申出をすることで相続登記の申請義務を果たすことができます。

「相続人申告登記」については、のちほどご紹介します。

法定相続分で分割(共有)する場合

法定相続分に従って不動産を相続する場合は、相続により自分が不動産の所有者になったことを知ってから3年以内に「法定相続人全員の共有名義の登記」をすれば、相続登記の義務を果たしたことになります。

その後、遺産分割協議によって、相続人の1人が単独所有することになれば、不動産を所有する相続人が遺産分割協議の成立から3年以内に単独名義の登記をすれば、相続登記の義務を果たしたことになります。

ただし、不動産を相続人の共有名義にすることは、将来新たな相続が発生して権利関係が複雑になる可能性があるうえ、その後、1人の相続人が不動産を所有(単独所有)することになったときに、再度共有名義から単独名義に変える費用や負担が生じるデメリットがあります。

相続放棄した相続人の場合

不動産を相続したくない、遺産相続に関わりたくない場合などで、相続放棄することも考えられます。相続放棄することによって、はじめから相続人ではなかったものとみなされますので(民法939条)、相続登記の義務を負いません。

なお、相続放棄するには、相続人となったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります(民法915条)。

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相続登記の義務化前と義務化後の変更点

2024年4月1日から不動産を相続した相続人に登記する義務が課せられますが、法施行前に発生した相続も無関係ではありません。相続登記の義務化の前後で変更となる点をまとめました。

相続登記の義務化の変更点

相続登記が義務化されることによる変更点をまとめました。

・不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記しなければならない
・正当な理由がなく、相続登記の義務を怠った場合、10万円以下の過料
・相続登記の義務化の対象は所有権のみ(賃借権などは対象外)
・相続だけでなく遺贈による不動産の取得も義務化の対象

このように2024年4月1日以降、相続登記が変更になりますが、義務化の対象となる相続は法律施行以降のものだけでなく、施行前の相続も対象となります。

法律の施行日以前の相続についても義務化の対象

相続登記の義務化で注意しなければならないのは、法律が施行される2024年4月1日以前の相続についても適用される点です。

法律の改正がされた場合、通常、施行前の法律関係については適用とならないことが一般的ですが、相続登記の義務化については、改正の前後関係なく適用になります。

施行前の相続については、次のいずれか遅い日を起算点とします。

(1)法律の施行日(2024年4月1日)
(2)相続によって自分が不動産の所有権と取得したことを知った日

そのため、施行日前に自分が不動産を相続したことを知っていた場合でも、3年間の起算日は法律の施行日です。

また、施行日前に相続が発生していても、施行日以降に不動産の所有権を取得したことを知った場合、その日が起算点となります。

「相続人申告登記」も同時にスタート

相続人申告登記とは、被相続人の不動産について、(1)相続が開始されたこと、(2)自らが相続人であることを、登記官に申し出ることで、相続登記の義務をはたしたものとみなされる制度です。

申し出を受けた登記官は、審査のうえ、職権で申し出をした相続人の氏名、住所等を付記登記します。付記登記によって、登記簿上で相続人の氏名や住所をすぐに把握することができます。

相続登記と異なり、相続人申告登記では、法定相続人の範囲や法定相続分の確定は不要で、申し出をする相続人が被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本を添付することで手続きできます。

複数の相続人がいても単独で申し出することができ、準備すべき必要書類など手続きが簡易的、かつ費用も必要書類の準備以外にはかかりません。

相続登記にかかる費用

2024年4月1日から義務化される相続登記ですが、登記申請のためにどういった費用がかかるのでしょうか。相続登記にかかる費用は大きく3つに分けられます。

(1)登録免許税
(2)戸籍謄本等必要書類の取得費
(3)司法書士報酬

 

相続登記の費用(1):登録免許税

不動産の相続登記では、被相続人から相続人へ所有権移転登記を行いますので登録免許税が必要です。

登録免許税は、不動産市場で取引される実勢価格に対してかかるのではなく、固定資産税評価額(おおむね市場価格の70%程度といわれます)に税率を乗じて算出します。

相続による不動産登記の税率は4/1000(0.4%)ですので、登録免許税は以下で算出できます。

登録免許税 = 不動産の固定資産税評価額 × 4/1000

固定資産税評価額は、毎年4月頃に所有者に送られてくる固定資産税納税通知書で確認できるほか、不動産が所在する市区町村で固定資産課税台帳を閲覧することができます。

相続登記の費用(2):戸籍謄本や住民票等の取得費用

相続登記の費用として、戸籍謄本その他さまざまな必要書類の取得費用が必要です。遺産分割協議によるか遺言証書によるか、もしくは法定相続人で分割するかなど、遺産分割の方法によって必要書類は変わります。

図表1は、遺産分割協議によって相続登記をする場合の必要書類と費用をまとめたものです。(相続時の状況によって、これら以外の書類が必要となる場合があります)

図表1

誰のものが必要 必要書類 取得費用
被相続人
(亡くなった人)
戸籍謄本 1通450円
除籍謄本 1通750円
改製原戸籍謄本 1通750円
住民票の除票
(または戸籍の附票)
住民票の除票:1通200~300円※
(戸籍の附票:300円)
法定相続人 戸籍謄本(抄本) 1通450円
印鑑証明書 1通200~300円※
固定資産課税明細書 1通200~400円※
法定相続人のうち
不動産を取得する人
住民票 1通200~400円※

法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」を基に作成
※自治体によって異なります

このほか、被相続人の不動産を調査する場合に、固定資産税課税明細書のほか、登記事項証明書(600円/通)や名寄帳(300円/通※自治体によって異なります)が必要となることがあります。

また、遺言証書に沿って相続登記をすすめる場合、遺言者情報証明書のない自筆証書遺言などは家庭裁判所の検認が必要となり、申請費用(封書1通につき800円)がかかります。検認済証明を申請後、証明書を貼り付けた遺言書の原本を返還してもらう手数料として150円/通が必要です。

1つ1つの資料はそれほど費用はかかりませんが、戸籍謄本や印鑑証明書などの必要数は、相続関係によって異なります。被相続人が転籍(本籍を変えること)を繰り返していた場合や兄弟姉妹が法定相続人になる場合などでは、調査すべき戸籍の数も費用もかかりやすくなります。

相続登記の費用(3):司法書士に依頼したときの報酬

自分で相続登記をする場合は不要ですが、司法書士に依頼する場合、報酬が必要となります。報酬の額は、不動産の数や評価額などで変わりますが、相場としては、5万円~15万円程度(評価額1500~2000万円くらい)のケースが多いようです。

相続登記の申請以外に、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成、戸籍謄本等の必要書類の収集などを依頼すると、別途費用がかかることがあります。

司法書士の報酬は自由化されていますので、依頼先によって金額が異なります。依頼する業務内容を明確にしたうえで、正式な依頼の前に見積もりをとり、金額をしっかりと確認しましょう。

相続登記の費用シミュレーション例

一例として、下記の不動産を相続した場合の相続登記にかかる費用をシミュレーションしてみます。

・相続不動産(1):土地(固定資産税評価額2000万円)
・相続不動産(2):建物(固定資産税評価額1500万円)

法定相続人(配偶者と長男・長女)が相続し、遺産分割協議書の作成や戸籍謄本の収集等を含めて司法書士に依頼した場合のシミュレーションです。

図表2

費用の内訳 費用 計算方法等
1 登録免許税 14万円 土地:2000万円×0.4%=8万円
建物:1500万円×0.4%=6万円
2 必要書類の取得費 5千円程度 被相続人の戸籍謄本
住民票除票
相続人の戸籍謄本
印鑑証明書
住民票
固定資産税評価証明書
名寄帳など
3 郵送費 1千円程度 返信用の封筒、郵便切手等
4 司法書士報酬 9万3千円 相続登記申請:6万円
遺産分割協議書作成:2万円
戸籍謄本等の収集:5千円
相続関係説明図作成:5千円
不動産調査費:2千円
合計 23万9千円程度

国税庁「登録免許税」
新宿区「戸籍の証明書の種類・手数料」、「住民票等の照明」
東京都主税局「固定資産に関する証明書などの手数料について」
グリーン司法書士法人「【簡単に計算】 相続登記の費用と司法書士報酬を知ろう!」を基に作成

相続登記の実費としてかかる登録免許税や必要書類の取得費用で大きな差は出にくいですが、司法書士の報酬部分については、依頼する司法書士によって違いがあります。

法定相続人や不動産の数、価格によって費用は変わり、相続人の数が4人を超えると1人あたり1万円、兄弟姉妹が相続人の場合は2万円がプラスされるなどの料金体系になっている司法書士事務所もあります。

相続登記の申請のみを依頼するのか、他の不随する作業も含めて依頼するのかによって料金は異なりますので、依頼内容を踏まえて、見積もりの内訳をしっかりと確認することが大切です。

相続登記に必要な書類

必要書類には、戸籍謄本や住民票等の公的資料と作成が必要な書類があります。また、遺言書に基づくか遺産分割協議によるか、もしくは法定相続分で分けるかなどで必要書類が異なる部分があります。

遺産分割協議の合意内容で登記する場合

図表3は、遺産分割協議の合意内容に沿って登記する場合の必要書類をまとめたものです。※相続時の状況によって他の資料が必要となる場合があります(図表4.5も同様)

図表3

誰のもの 必要書類 入手先
被相続人 戸籍謄本 本籍地の市区町村
除籍謄本
改製原戸籍
住民票の除票
(または戸籍の附票)
住所地の市区町村
(本籍地の市区町村)
法定相続人 戸籍謄本(全員分) 本籍地の市区町村
印鑑証明書(全員分)
※遺産分割協議書に押印のもの
住所地の市区町村
固定資産課税明細書 市区町村から送付
(毎年4月頃)
不動産の所有者になる人 住民票 住所地の市区町村
作成・準備する書類 遺産分割協議書 相続人が作成
収入印紙 郵便局や法務局など

法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」を基に作成

遺言書で法定相続人に相続させる場合

図表4は、遺言書の内容に従って登記する場合の必要書類をまとめたものです。

図表4

誰のもの 必要書類 入手先
被相続人 戸籍謄本 本籍地の市区町村
除籍謄本
改製原戸籍
住民票の除票
(または戸籍の附票)
住所地の市区町村
(本籍地の市区町村)
不動産の所有者になる人 戸籍謄本(抄本) 本籍地の市区町村
住民票 住所地の市区町村
固定資産課税明細書 市区町村から送付
(毎年4月頃)
準備する書類 遺言書 (遺言書の種類や保管方法に応じて)
自宅や法務局、公証役場
検認済証明書
※遺言書情報証明書がない自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合
家庭裁判所
収入印紙 郵便局や法務局など

法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」「相続登記ガイドブック」を基に作成

法定相続分で登記する場合

図表5は、法定相続分に従って登記する場合の必要書類をまとめたものです。

図表5

誰のもの 必要書類 入手先
被相続人 戸籍謄本 本籍地の市区町村
除籍謄本
改製原戸籍
住民票の除票
(または戸籍の附票)
住所地の市区町村
(本籍地の市区町村)
法定相続人 戸籍謄本(全員分) 本籍地の市区町村
固定資産課税明細書 市区町村から送付
(毎年4月頃)
住民票 住所地の市区町村
準備する書類 収入印紙 法務局・郵便局など

法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」を基に作成

その他、共通して必要な書類

この他に、相続の仕方に関係なく必要な書面として、申請時に作成する登記申請書や司法書士等に委任する場合の委任状、また、戸籍・除籍謄本の原本還付を希望する場合には相続関係説明図を作成する必要があります。

相続登記の費用を抑えるコツ

相続登記の費用について解説しましたが、これらの費用を抑えることはできるのでしょうか。

相続登記の費用を抑えるコツ1:相続登記を自分でやる

相続登記は、司法書士などの有資格者でなくても、自分ですることもできます。

相続登記にかかる費用のうち、登録免許税や必要書類の取得費などの実費は、自分でやっても同様に必要ですが、司法書士に依頼する場合の報酬を節約できます。相続人が配偶者と子どものみである、不動産の個数が多くないなどの場合、相続手続きとしては比較的すすめやすいといえます。

また、相続手続きに関する問合せや相談、修正対応なども必要となることが予想されますので、法務局が開いている平日の時間帯を使える人は、自分でやることを検討してみてもよいでしょう。

相続登記の申請を依頼することの多い司法書士の報酬は、依頼先によって異なりますが、自分ですることで5~15万円程度の報酬部分を節約できます。

相続登記の費用を抑えるコツ2:必要書類の収集などできる範囲のことは自分でやる

相続登記に必要な書類の収集など、相続登記の申請以外でできる範囲のことを自分でやることで相続費用の節約につながりやすくなります。

司法書士に依頼する業務は、相続登記の申請以外に、不動産の調査、戸籍等の必要書類の収集、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成などさまざまです。

このうち必要書類を収集したり、遺産分割協議書の作成は自分で行うなどで、司法書士に依頼する業務を相続登記の申請のみに限定するなどで、報酬を抑えられます。
司法書士の報酬や料金体系もさまざまですので、できるだけ報酬が安い司法書士を探す、報酬の交渉をすることも大切です。

相続登記の費用を抑えるコツ3:登録免許税の免税措置を活用する

一定の条件を満たす必要がありますが、相続登記には登録免許税の免税措置がありますので、以下の条件にあてはまる場合は、しっかりと活用しましょう。

・相続登記の前に相続人が死亡した場合
・相続する土地の価額が100万円以下の場合

免税措置は、令和4年度の税制改正によって令和7年3月31日まで延長されています。

登録免許税の免税措置の適⽤を受けるためには、免税の根拠となる法令の条項を「租税特別措置法第84条の2の3第2項により⾮課税」と申請書に記載する必要があります。記載がない場合は、免税措置は受けられませんので注意してください。

相続登記を自分で行う場合の注意点

相続登記を自分ですることで費用を節約できますが、自分で行う場合、どういった点に注意すればよいのでしょうか。

相続登記を自分で行う場合の注意点1:一部の不動産の相続登記ができていない

自分で相続登記するうえで注意したいのが、登記すべき不動産の一部が漏れているケースです。

例えば、一戸建ての自宅前の道路が私道で共有持ち分がある場合などで、土地建物だけを相続不動産として登記し、前面道路の持ち分に気づかないというケースがあります。その家を購入した本人であればまだしも、そうでなければ一般の方だと分かりにくいケースです。

また、登記事項証明書や固定資産税評価証明、名寄帳などで相続不動産を確定していきますが、住居表示に慣れている一般の方では、地番や家屋番号の特定からつまずいてしまうことがあります。

不動産の一部の相続登記をしていないことに気づかないまま、のちのち新たな相続が発生したときや売却するとなった際に登記漏れが発覚すると、手続きが非常に複雑になってしまう可能性があります。

相続登記を自分で行う場合の注意点2:思った以上に時間や手間がかかる

自分で相続登記してみたものの、想像以上に時間や手間がかかり後悔してしまう点にも注意しましょう。

戸籍や住民票など必要書類を郵送もしくはオンラインで請求できることもありますが、手続きに間違いがないか確認したり、書類に不足や不備があった際の対応は、基本的に平日の法務局が開いている時間帯になります。

また、戸籍謄本といっても、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集める必要があり、転籍や婚姻によって複数の市区町村で手続きしなければならないことも多いです。考えていた以上に時間や手続きの負担が大きく、途中で挫折してしまうケースもありますので注意しましょう。

相続登記を司法書士に依頼したほうがよいケース

自分でもできる相続登記ですが、司法書士に依頼したほうがよいケースはどういった場合でしょうか。

相続登記を司法書士に依頼したほうがよいケース1:相続登記が長年にわたって行われていない

2024年4月1日以降、相続登記が義務化されますが、これまでは義務も罰則もなく、相続不動産の名義が、被相続人の親(祖父)やその前の世代(曾祖父)等のままになっている場合があります。

このような場合、祖父の相続人、もしくは曾祖父の相続人に権利が承継されていることになりますので、相続人の数が一気に増える可能性があります。

不動産の相続登記には、遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印(印鑑証明添付)が必要ですが、相続人の数が増えると大変です。なかには海外在住や住所不明、連絡がつかないなどの相続人がいることも考えられるため、手続きに相当な時間と手間がかかる可能性があります。

このように、これまでの相続で相続登記が適正にされず放置されている不動産については、司法書士に依頼すべきでしょう。

相続登記を司法書士に依頼したほうがよいケース2:相続人の確定に時間と労力を要する

相続人の確定に相当な労力を要する場合も、自分で相続登記するには難しくなるケースです。

例えば、被相続人が親も子どもなく亡くなった場合、その兄弟姉妹が相続人になります(民法889条)。

このとき、被相続人に本当に子どもがいないか、他に兄弟姉妹がいないかを調査する必要があり、また、亡くなった兄弟姉妹がいる場合は、その子ども(代襲相続人)がいないかも調べる必要があります。

また、被相続人が過去に転籍や離婚している場合や認知された子どもがいる、養子縁組がされているなどの場合も相続人を確定させるのに時間がかかりやすいケースです。このように相続人の確定に時間や労力を要する場合は司法書士に依頼するほうがよいでしょう。

相続登記を司法書士に依頼したほうがよいケース3:相続登記に時間をかけたくない

相続登記に時間をかけたくない場合も司法書士に依頼するほうがよいでしょう。

例えば、相続人間の話し合いで、ようやく不動産を売却することに決まった場合など、他の相続人の意思が変わる前に、売却手続きを早くすすめたいこともあるでしょう。

また、主な相続財産が不動産で相続税を納付するための現金が準備できない場合に、相続税の資金確保のために不動産に担保を設定する場合もあります。

不動産に抵当権等の担保を設定するためには、相続登記が完了している必要があります。相続税の納付期限(相続開始の翌日から10ヶ月)を過ぎれば、加算税や延滞税が課せられますので、相続登記も納付期限に間に合うようにすすめなければなりません。

自分で相続登記するとなると、必要書類の収集や作成に想像した以上に時間がかかることも考えられます。相続登記に時間をかけたくないというときは、司法書士に依頼するほうがよいでしょう。

相続登記を司法書士に依頼したほうがよいケース1:物件の所在地が遠方

不動産の所在地が遠方にある場合も、司法書士に依頼したほうがすすめやすいでしょう。

不動産の相続登記をするには、不動産の所在地を管轄する法務局で手続きしなければなりません。相続登記はオンラインで申請することもできますが、専用のソフトをインストールしたり、必要書類の一部は郵送または窓口への持参が必要などの制約があります。

また、自分で登記を申請する場合、必要書類や記載間違いなどの不備を指摘されることも多く、修正対応などで遠方の法務局へ行くのは時間と手間がかかりますし、思った以上に労力を要することが考えられます。

司法書士はオンライン申請にも対応していますし、全国の不動産に対応できますので、物件の所在地が遠方の場合は、司法書士に依頼するメリットは大きいといえます。

相続登記の義務化・費用まとめ

2024年4月1日からの相続登記の義務化の内容、費用について解説しました。今後、相続財産に占める割合も多い不動産を相続することは誰にでもありうることです。

これまでは相続した不動産の売却予定などなければ、相続登記せず放置することもできましたが、義務化だけでなく、罰則が設けられ、登録免許税や司法書士への報酬などの費用についても考えることが必要です。

不動産の相続といっても、遺言書があるケースから遺産分割協議で決めるケースなどさまざまですし、相続人や相続財産にもいろいろな状況があり、相続登記にかかる手間や時間も異なります。

自分で相続登記できる場合もあるかもしれませんが、必要な作業やかかる時間、労力などを考え、司法書士に依頼すべきか判断し手続きする必要があります。
是非参考にしてください。

出典

国税庁「令和4年分 相続税の申告事績の概要」
法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
法務局「相続登記ガイドブック」
法務省民事局「所有者不明土地の解消に向けた民亊基本法制の見直し」
東京法務局「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)」
法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」
国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
法務局「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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