更新日: 2024.04.22 その他相続

抵当権抹消の手続きを自分でする方法とは? 基本情報から手順、必要書類、費用を解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

抵当権抹消の手続きを自分でする方法とは? 基本情報から手順、必要書類、費用を解説
金融機関から住宅ローンなどを借りるときに、お金を借りるための契約(金銭消費貸借契約)をしますが、多くの場合、融資の対象となる土地や建物に対して、抵当権を設定する契約を同時にします。
 
抵当権は、融資を受けた債務者が返済できなくなった場合に、金融機関が不動産を売却して優先的に貸付金の返済を受けられるようにする権利です。抵当権は、不動産の所有者の権利を制限するものであるため、債務を完済し、抵当権を設定しておく必要がなくなれば、通常は、「抵当権の抹消登記」をします。
 
抵当権の抹消登記は、司法書士に依頼できますが、自分ですることで抹消登記にかかる司法書士への報酬などを節約できます。ただ、一般の人が抵当権の抹消をするうえで、注意すべき事項もあります。
 
この記事では、自分で抵当権の抹消手続きをする方法や注意点、司法書士に依頼すべきケースなどについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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抵当権の抹消とは?

 
「抵当権の抹消」とは、抵当権の目的となっている債務が完済された場合などに、不動産登記簿に設定されている抵当権設定登記を削除する手続きです。
 
不動産登記制度は、その不動産がどのような土地・建物であるか、誰が所有しどのような権利が設定されているかなどを公示(誰でもみられる)することで、不動産取引の安全と促進を図るものです。
 
住宅ローンなど不動産を担保にお金を借りる際に、債権者(お金を貸す側)である金融機関は、抵当権を設定します。抵当権が設定されると、登記簿上に、抵当権設定の日付や債権額、債務者の情報などが記載されます。不動産にどのような権利が付いているか分かることで、不動産を売買などする際の判断ができ、取引の安全が図られます。
 
抵当権抹消登記の手続きは、住宅ローンなどの借入金を完済した際に、設定されている抵当権の情報を削除する手続きです。
 

抵当権抹消手続きはどんなときに必要?

 
抵当権の目的となっている債務が完済された場合に、必ず抵当権の抹消手続きをしなければならない法的な義務や罰則はありません。
 
ただ、のちほど紹介するように、抹消せずに放置するとのちのち不利益が生じる可能性がありますので、抹消手続きをしたほうがよいでしょう。
では、抵当権抹消登記は、どのようなときに必要なのでしょうか。
 

抵当権抹消手続きが必要なケース1.不動産を売却するとき

 
「不動産を売却」するには、抵当権を抹消する必要があります。
 
もし、住宅ローンなどの債務がまだ残っている段階で、家を売却することになった場合、住宅ローンの残債を売却収入などで完済したうえで、抵当権を抹消できなければ売却は難しいでしょう。
 
不動産売買契約書のなかでも、売主は買主に対して、所有権移転の時期(通常引渡し時)までに、抵当権やその他の賃借権、質権など、買主の所有権を制限する権利を抹消する義務が規定されます。
 
また、実態としては住宅ローン等を完済され、抵当権抹消登記をしていないだけの場合でも、第三者からは借入金等の債務が完済されているかは分かりません。そのため、不動産を売却するには抵当権の抹消登記が必要となります。
 

抵当権抹消手続きが必要なケース2.不動産を相続するとき

 
不動産の所有者が亡くなり相続が発生した際に、抵当権の抹消登記が必要となります。
 
相続財産に不動産がある場合、遺言書や遺産分割協議によって不動産を取得する相続人が決まると、亡くなった人(被相続人)から相続人に所有権を移転するための相続登記をします。
 
相続登記と抵当権抹消登記は異なる登記ですので、それぞれ申請する必要があります。(実務的な手続きでは、申請は同時に行い申請順位が異なります)。
 
不動産を相続するときに抵当権を抹消するケースとして次の2つが考えられます。
 

(1)住宅ローン等の債務を完済後も抵当権が残っている
(2)債務者が亡くなり団体信用生命保険で完済される場合

 
(1)のように、相続発生前に債務が完済されている場合、抵当権抹消登記後に相続登記することもできますし、相続登記後の抵当権抹消登記することも可能です。
 
一方、(2)の場合は、相続発生後に債務が完済されるケースになります。団体信用生命保険は、住宅ローン契約者に万一のことがあった場合に、残された家族に大きな負債を残さないために、ローンが完済される保険です。
 
団体信用生命保険によって債務が完済される場合、住宅ローン契約者(債務者)が亡くなった旨を金融機関に連絡し、必要書類を送付、金融機関の審査に一定の時間がかかります。この場合、相続登記後に抵当権抹消登記という順番になります。
 
いずれの場合も債務は完済されていますので、相続登記するにあたって抵当権の抹消登記をあわせて申請する必要があります。
   

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抵当権抹消手続きをしないとどうなる?

 
では、住宅ローンなどの債務を完済した後も抵当権を抹消せずに放置しているとどうなるのでしょうか。
 

抵当権抹消手続きしない場合のリスク1:売却が難しくなる

 
登記簿上に抵当権が残ったままでは、不動産の売却が難しくなります。買主には、債務が返済されているかが分かりませんし、前述のように、不動産を売却するには、売買契約上の義務として、抵当権の抹消手続きが必要です。
 
買主が住宅ローンを利用して購入する場合も、審査対象の不動産に他の金融機関の抵当権が残ったままだと、住宅ローン審査が難しくなり、住宅ローンの借入ができない可能性があります。
 
また、売却ではありませんが、所有者が不動産を担保に金融機関等から融資を受けようとする場合にも、抵当権が残ったままだと難しくなる可能性があります。
 

抵当権抹消手続きしない場合のリスク2:抵当権抹消手続きに時間や手間がかかる

 
抵当権の抹消を長年にわたり放置していた場合など、融資をした金融機関が合併や倒産などで消滅している可能性もありますので、手続きに時間や手間がかかる場合があります。
 
抵当権を抹消するためには、金融機関から送られてくる書類が必要です。
 
必要書類には、債務が完済されていることを証明するための書類などが含まれていますので、金融機関の名義や代表者などが変わっていると、集める資料が増え、抹消手続きの時間や手間がかかる可能性が高くなります。
 
不動産の売却をすすめるうえで、抵当権抹消登記にあまり時間をかけたくない場合もありますが、場合によっては、売却活動に影響する可能性があります。
 

抵当権抹消手続きしない場合のリスク3:必要書類を紛失する可能性がある

 
長期間、抵当権の抹消手続きをしない間に、必要書類を紛失する可能性もあります。必要書類には、有効期限のあるものもあり、期限が切れている場合、再発行の手続きが必要です。
 
また、必要書類のなかには登記識別情報や登記済証といった再発行の手続きができない書類もあります。その場合、別の手続きを踏む必要があるなど手間と時間がかかりやすくなります。
  

抵当権抹消手続きを自分でするときの流れ

 
抵当権の抹消手続きを自分でするときの流れについて解説します。
 
ここで注意すべきなのは、抵当権の抹消登記を申請する法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局ですので、あらかじめどの法務局か調べておきましょう。
 

抵当権抹消手続きの流れ1:抵当権抹消手続きに必要な書類を準備

 
抵当権の抹消手続きに必要な書類を準備します。必要書類は、金融機関から送られてくるものと自分で準備するものがあります。
 

抵当権抹消登記に必要な書類

・登記済証または登記識別情報
・登記原因証明情報もしくは弁済証書(解除証書)
・委任状(抵当権抹消手続きを所有者に委任)
・金融機関の法人番号

 
金融機関から送られてくる書類については、のちほど詳しく解説します。
 
その他、自分で準備すべき書類として、登記申請書があります。登記申請書は法務局もしくは法務局のサイトからダウンロードできます。
 
もし、転居や結婚によって登記簿上の所有者の住所や氏名が変わっている場合、抵当権抹消登記に合わせ住所や氏名の変更登記が必要です。このときに、住民票や戸籍謄本などの書類が必要となります。
 

抵当権抹消手続きの流れ2:登記申請書の作成

 
必要書類が準備できれば、登記申請書を作成します。
 
不動産の登記申請書は、所有権移転や抵当権の設定など権利関係が変わった場合や、登記名義人の住所や氏名が変更になったときの登記を法務局に申請するための書類です。
 
抵当権抹消登記の申請書の記載事項は次のとおりです。
 
(1)登記の目的
「抵当権抹消 順位番号後記のとおり」と記載されています。
順位番号は、何番目の抵当権を抹消するかを明確にするもので、記載事項9の不動産の表示で明記します。
 
(2)原因
ローンなどの債務を完済して抵当権が消滅した日とその原因を記載します。例えば、債務を完済し抵当権設定契約が解除された場合、「令和〇年〇月〇日解除(または弁済)」と記載します。
 
(3)権利者
現在の所有者の氏名と住所を記載します。登記簿上の住所・氏名と一致している必要があるので、もし、登記上の住所・氏名と一致していない場合、まずは住所・氏名の変更登記が必要です。
 
(4)義務者
金融機関等の名称、住所、代表者氏名・会社の法人番号を記載します。金融機関等の登記事項証明書(作成から3ヶ月以内のもの)を添付するときは、法人番号等の記載は不要です。
 
(5)添付情報
申請書に添付する情報が記載されていますので、必要書類が足りているか確認しましょう。なお、登記識別情報は、抵当権者の名称や登記の目的などを記載した封筒に封をして提出します。
 
(6)申請年月日と申請先法務局の名称
申請する日付、申請する法務局の名称を記載します。
 
(7)申請人兼義務者代理人
申請人かつ抵当権者(金融機関等)から登記申請の委任を受けた代理人として、現在の所有者の住所、氏名、連絡先(平日の日中に連絡を受けられるもの)を記載し、認印を押印します。記載事項3の権利者の住所、氏名と一致している必要があります。
 
(8)登録免許税
抵当権抹消登記にかかる登録免許税の額を記載します。登録免許税についてはのちほど解説します。
 
(9)不動産の表示
抹消する不動産の情報を、登記事項証明書を確認しながら記載します。土地、建物それぞれについて、不動産番号から所在地、地目、地積や床面積、建物の構造などの情報を記載します。マンションであれば建物と敷地権(敷地権の種類や割合)について記載します。
 
なお、自分で登記手続きをする場合、記載内容に不備があることも考えられます。登記申請書の記載内容に不備がある場合、法務局より「申請書作成時に使用した印鑑を持参して補正に来てください」という連絡がありますので、修正対応する必要があります。
 

抵当権抹消手続きの流れ3:法務局へ申請・登録免許税の納付

 
必要書類と申請書が準備できれば、法務局の窓口もしくは郵送で登記申請します。
 
申請時に登録免許税分の収入印紙を台紙に貼り付け、登記申請書と印紙を貼付した台紙に契印をします。登記申請から審査完了までは、1日~2週間程度かかります。
 

抵当権抹消手続きの流れ4:登記完了書類の受領

 
法務局で抹消登記が完了すると登記完了証が交付されますので、これを受領して手続きが完了します。登記完了証は窓口で受け取ることができるほか、登記申請時に返信用封筒(宛名記載と郵便切手を貼付)を提出することで、郵送で受け取ることもできます。
 

抵当権抹消手続きはオンラインでもできる

 
抵当権の抹消手続きはオンラインで行うこともできます。ただし、次のような準備が必要です。
 

・電子証明書の取得
・登記・供託オンライン申請システムで申請者情報の登録
・申請用のソフトのインストール
・(登録免許税を電子納付する場合)インターネットバンキング

 
登記申請自体に必要な書類は、対面や郵送で行う場合と同じです。オンライン申請の詳しい手続きは、法務局の公式サイトで確認してください。
 

抵当権抹消手続きに必要な書類

 
ここでは抵当権抹消手続きに必要な書類について解説します。主には金融機関から送られてくる書類ですが、自分で抹消登記の手続きをするうえでどういったものかを知っておいたほうがよいでしょう。
 

・登記済証または登記識別情報
・登記原因証明情報もしくは弁済証書(解除証書)
・委任状
・金融機関の法人番号
・登記事項証明書

 

抵当権抹消手続きに必要な書類1:登記済証または登記識別情報

 
登記済証または登記識別情報は、住宅ローン等を借入する際の抵当権を設定するときに、金融機関に法務局が発行する書類です。いずれも、住宅ローンなどの債務を完済したときに、金融機関から送られてきます。
 
平成17年3月から、登記済証から登記識別情報に切り替わっていますので、契約時期によって登記済証が発行されているケースもあります。登記済証は、抵当権設定契約書に「登記済」の押印がされたもので、登記識別情報は、登記識別情報通知と記載された書面で12桁の数字とローマ字を組み合わせたものです。
 

抵当権抹消手続きに必要な書類2:登記原因証明情報もしくは弁済証書

 
登記原因証明情報もしくは弁済証書は、住宅ローンなどの債務が完済されていることを証明するための書類です。金融機関によって解除証書となっている場合もあります。
 
抵当権抹消の日付が空欄になっている場合は、ローンの完済日を記載します。分からない場合は金融機関に問合せましょう。
 
登記申請書の記載事項の1つである登記原因について、これらの資料をもとに「弁済」、もしくは抵当権設定契約の「解除」と記載します。
 

抵当権抹消手続きに必要な書類3:委任状

 
委任状は、金融機関が抵当権抹消登記の手続きを不動産の所有者に委任するための資料です。
 
原則として、登記の申請は、抵当権者である金融機関と所有者が共同で行う必要がありますが、すべての手続きに金融機関が立ち会うのは現実的ではありません。一般的には、金融機関の委任状を添付して所有者が手続きをします。
 

抵当権抹消手続きに必要な書類4:金融機関の法人番号

 
金融機関の法人番号は国税庁のサイトで調べることができます。
 
金融機関の代表者事項証明書や登記事項証明書等の書類(有効期限は発行から3ヶ月以内)で確認できる場合、法人番号は不要です。
 

抵当権抹消手続きに必要な書類5:不動産の登記事項証明書

 
不動産の登記事項証明書です。
 
法務局もしくはオンラインでも取得できますので、自分で準備する必要があります。申請書の不動産の表示等を記載する際に必要となります。
 

抵当権抹消手続きにかかる費用

 
抵当権抹消登記を自分でする場合にかかる費用について解説します。
 

抵当権抹消手続きにかかる費用1:必要書類の準備費用

   
金融機関から送られてくる書類は費用がかかりませんが、それ以外に準備する書類として登記事項証明書があります。
 
登記事項証明書は、法務局の窓口もしくはオンラインで請求でき、請求にかかる手数料は図表1のとおりです。
 
図表1

請求方法 手数料
書面請求 600円
オンライン請求・送付 500円
オンライン請求・窓口受領 480円
登記情報提供サービスで閲覧 332円

※法務省 登記手数料について、登記情報提供サービスの利用料金等一覧を基に作成
 
登記情報提供サービスは、登記事項をインターネット上で閲覧もしくはダウンロードできるサービスで、公印や証明文の記載はなく公的な効力はありませんが、登記事項の内容を確認することはできます。
 
また、抵当権の抹消登記がすべて完了した後に、登記事項証明書で変更内容を確認したい場合、取得費用がかかります。
 

抵当権抹消手続きにかかる費用2:登録免許税

 
登録免許税は、不動産や会社などの登記の際にかかる税金です。
 
登録免許税は、不動産1個につき1000円です。
 
例えば、一戸建て住宅で、土地と建物に設定されている登記の抹消を申請する場合、それぞれ1個の不動産、計2個となり、登録免許税は2000円となります。
 
マンションの場合も、通常土地(敷地権として共有)と建物を所有するため、それぞれに対して登録免許税がかかります。
 
なお、建物がいくつかの分筆された土地にまたがっている場合などでは、不動産の個数増加分の登録免許税が高くなる場合があります。
 

抵当権抹消手続きを自分でやるときの注意点

 
抵当権抹消手続きを自分でやるときの注意点について解説します。
 

抵当権抹消手続きの注意点1:住所や氏名に変更があった場合

 
抵当権を設定したときから、結婚や引っ越しなどで氏名や住所が変更している場合、そのまま抵当権抹消登記の手続きはできません。まず、住所あるいは氏名の変更登記をしてから抵当権抹消登記をする必要がある点に注意しましょう。
 
住所の変更登記には、住民票の写しが必要となり、登録免許税は、抵当権抹消登記と同様に不動産1個あたり1000円です。氏名の変更登記には、戸籍謄本(もしくは戸籍抄本)、住民票の写しが必要となり、登録免許税は、不動産1個あたり1000円です。
 

抵当権抹消手続きの注意点2:必要書類の有効期限に注意

 
住宅ローンなどを完済してから時間が経過している場合、必要書類の有効期限や紛失がないか注意しましょう。
 
金融機関の資格証明書(代表事項証明書等)が必要な場合、発行から3ヶ月以内のものでなければなりませんので、期限が切れている場合には再請求に時間がかかります。
 
また、登記識別情報や登記済証を紛失している場合、事前通知など別の手続きが必要となります。
 

抵当権抹消手続きの注意点3:平日に時間がとりにくい場合

 
平日に時間がとりにくい場合は、登記申請を自分でするとしてものちのち後悔しないように注意しましょう。
 
抵当権抹消手続きは自分でできるとしても、必要書類の収集・確認、登記申請書の記載、登録免許税の納付、申請手続き等すべきことは少なくありません。こういった手続きを相談しながらすすめることも多くなるでしょう。
 
対面で手続きする場合、法務局の営業時間は平日8時30分~17時15分までに行く必要があり、記載事項や必要書類の不備があった場合の対応も平日中に行う必要があります。
 
もし、抵当権の抹消以外に住所変更等の手続きが必要となれば、申請する登記手続きが増える可能性もあります。平日に時間がとりにくい場合、自分で行うべきか司法書士に依頼すべきかを慎重に判断しましょう。
 

抵当権抹消手続きは法務局で相談できる

 
抵当権の抹消登記を自分でする際、法務局で相談することができます。完全予約制で、1回あたりの利用時間は20分程度ですが、1回で解決できない場合、改めて予約して相談することもできます。
 
相談方法は次の3つです。
 

・対面による相談
・WEB会議サービスによる相談
・電話による相談

 
限られた時間を有効に活用するためにも、事前に不動産の登記事項証明書や必要書類を準備のうえ相談するようにしましょう。
 
なお、登記申請書の作成を代わりにしてもらうことなどはできず、申請書の書き方や必要書類、手続きをすすめるうえでの注意点などを相談できます。
  

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼したほうがよいケース

  
抵当権の抹消登記を司法書士に依頼した場合、登録免許税等の費用のほか、1~3万円程度の報酬が必要となります。
 
では、費用がかかっても司法書士に依頼したほうがよいのはどういったケースでしょうか。
 

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼すべきケース1:登記識別情報等の必要書類を紛失している

 
必要書類のなかでも、登記原因証明書や委任状は紛失しても、通常再発行が可能ですが、登記識別情報や登記済証を紛失している場合は再発行ができません。
 
この場合、事前通知制度などを利用する必要があるため、手続きが複雑になりやすく司法書士に依頼したほうがよいでしょう。
 
事前通知制度は、正当な理由で登記識別情報もしくは登記済証を添付できない場合に、登記官から登記名義人である金融機関等に抵当権抹消登記の請求がされている旨の事前通知書を送付する制度です。
 
事前通知を受け取った金融機関等は、2週間以内に登記申請が真正である旨の申し出をする必要があります。こういったイレギュラーな手続きが必要となるケースでは司法書士に依頼したほうがよいでしょう。
 

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼すべきケース1:不動産の売買にともなって行う

 
不動産を売却するにあたって抵当権の抹消登記を行うケースは、司法書士に依頼したほうがよいでしょう。前述のように、不動産売買契約において売主は買主に対して抵当権を抹消する義務を負います。
 
もし、抵当権の抹消登記が期日に完了できなければ、契約手続きに影響するだけでなく、契約上の義務違反として違約金を請求される可能性もあります。そのため、不動産の売却にあわせて行う抵当権の抹消登記は司法書士に依頼すべきでしょう。
 

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼すべきケース1:抵当権の抹消登記が長年にわたり放置されている

 
長年抵当権の抹消が行われず放置されているケースでは、金融機関が合併や消滅でなくなっている、もしくは金融機関の名称や代表者が変わっている可能性も高くなります。このような場合、状況に応じて抵当権抹消登記の前に抵当権の移転登記が必要となることがあります。
 
また、大正や昭和初期に設定された抵当権など、相当な時間が経過している場合も手続きが複雑になりやすく司法書士に依頼したほうがよいでしょう。
 

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼すべきケース1:不動産の所在地が遠方にある

 
抵当権を抹消する不動産が、自宅より遠方にあるケースも司法書士に依頼したほうがよいかもしれません。
 
抵当権抹消登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局にする必要がありますので、遠方の場合、通常は郵送もしくはオンラインで手続きします。
 
ただ、対面で行う以上に、郵送やオンラインで行うと、登記申請書の記載内容や書類に不備がでやすく、修正対応の負担が大きくなる可能性があります。不動産の所在地が住んでいる場所と離れている場合、自分ですべきか慎重に判断しましょう。
 

抵当権抹消手続きまとめ

 
抵当権抹消手続きを自分でする方法や注意点を解説しました。
 
抵当権抹消登記が必要になれば、できるだけ早めに対応したほうがよいでしょう。法務局に相談しながらすすめることもできますが、特に、対面でなく郵送やオンラインで手続きする場合は慎重にすすめないと、思わぬ時間や手間がかかるかもしれません。
 
また、抵当権抹消登記といっても、それだけで終わる以外にいろいろな状況が考えられます。
 

・売買や相続に合わせて行われるケース
・所有者の住所や氏名が変更になっているケース
・債務が消滅してから長期間経過しているケース

 
不動産登記制度は、不動産の権利関係を公示して取引の安全を確保する制度ですので、登記手続きには、正確な記載内容と手続きが求められます。それぞれ状況にあわせて必要な手続きも変わってくるため、場合によっては司法書士に依頼したほうがよいこともあるでしょう。
 
是非参考にしてください。
 

出典

法務局 不動産登記の申請書様式について
法務省 登記手数料について
法務局 抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税
法務局 転勤等で引っ越した方へ(住所の変更登記手続きのご案内)一戸建て編
法務局 住宅ローン等を完済した(抵当権抹消の登記をオンライン申請したい方)
法務局 結婚等によって氏名に変更があった方へ(氏名の変更登記手続きのご案内)一戸建て編

法務局 登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問

法務省 登記情報提供サービスの利用料金等一覧
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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