更新日: 2024.04.22 その他相続

相続する実家は売るといくらになる? 土地の価格を調べる方法を紹介

相続する実家は売るといくらになる? 土地の価格を調べる方法を紹介
相続した実家を売却処分する、もしくは遺産分割協議の準備で実際に売れる価格を知りたいという状況はよくあります。
 
実家がいくらで売却できるのか、価格を調べたいときにすべき調査方法が8つあります。ただし、調査方法ごとの特徴や調査方法を知って、自分の状況に適した方法を選ばなければ、正確な査定結果は得られない場合があります。
 
また、実際に売却する場合に、土地価格に影響を与える原因や理由を知っておくことはとても重要です。
 
この記事では、土地の価格を調査する際の公的指数やその他の調査方法を紹介し、土地価格に影響する条件や高く売る方法について解説しています。
FINANCIAL FIELD編集部

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土地価格の種類

土地の価値を評価する価格は、評価額を公表する団体や評価基準によっていくつかあります。
 
一般的には一物五価(いちぶつごか)といわれ、次の図表1にあるものが土地の基準価格として利用されています。
 
図表1

土地評価額の種類 発表団体と発表時期 土地評価額の評価方法や利用例
地価公示価格 ・国土交通省
・毎年3月
・1月1日時点の全国の標準地を、不動産鑑定士が正常な価格を判定し公示
・一般的な土地取引の指標や公共事業用地の取得価格算定の規準
・実勢価格は地価公示価格の1~1.2とされる
基準地価 ・都道府県
・毎年9月
・7月1日時点の全国の標準地を、不動産鑑定士が正常な価格を判定し公示
・都道府県での土地取引規制に際しての価格審査や地方公共団体等による買収価格の算定の規準
相続税路線価 ・国税庁
・毎年7月
・1月1日時点の宅地、田、畑、山林などが対象
・地価公示価格や基準地価の80%程度に設定
固定資産税評価額 ・自治体
・3年ごとの4月
・1月1日時点、直近は2024年、3年ごと評価替え
・地価公示価格や基準地価の70%程度に設定
実勢価格
(成約価格)
・自治体
・3年ごとの4月
・不動産流通機構
・常時検索可能 ・取引に参加した不動産会社が、実際に成約した価格を登録
・「レインズ・マーケット・インフォメーション」で誰でも無料で調べられる

※国土交通省 地価公示鑑定評価書の用語等の説明を基に作成
 

土地価格の調べ方一覧

土地価格の調べ方には、次の8つがあります。
 

●地価公示価格
 
●基準地価(都道府県地価調査)
 
●相続税路線価
 
●固定資産税評価額
 
●不動産ポータルサイト
 
●レインズ・マーケット・インフォメーション
 
●不動産会社
 
●不動産鑑定士

 
土地価格を調べる8つの方法それぞれについて解説します。
 

土地価格の調べ方1:地価公示価格

地価公示価格は、図表2の国土交通省のサイト「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」から、地図の該当箇所をクリックするもしくは住所を入力して、その地域内にある土地の評価事例を調べられます。
 
図表2


※国土交通省 国土交通省地価公示・都道府県地価調査より引用
 
例えば、地図の該当箇所のクリックもしくは検索窓へ「東京都 > 三鷹市」と入力して検索すると、図表3のような一覧表示になります。
 
図表3

※国土交通省 国土交通省地価公示・都道府県地価調査より引用
 
この一覧のなかに閲覧したい地点がある場合は、一覧の右側にある「詳細を開く」をクリックすれば表が下方向へ展開し、対象土地の法令制限などの詳細が確認できます。
 
同じ町名(〇丁目や〇〇町)の土地でも「最寄り駅に近い」「前面道路の幅が広い」「土地の間口が広い」など、土地の利便性が高い場合には土地単価が高くなることが分かります。
 
なお、地価公示価格は「売り手・買い手双方に売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情がない取引で成立すると認められる価格(正常価格)であり、使用、収益を制限する権利がない更地(土地のみ)の価格」としての評価です。
 
土地売買時に「売主が売り急いでいる、土地の上に劣化した古家が残っている」なら成約価格が下がり、「土地の希少性が高い、購入希望者が複数いる」なら成約価格が上がります。このように、成約価格は売却時の土地の状況によって影響を受けるため、「実際の成約価格」は地価公示価格の0.9~1.1と推測できます。
 
したがって、地価公示価格の平米単価が100万円なら、実勢価格の平米単価は90~110万円になる可能性があると判断できるのです。
 

土地価格の調べ方2:基準地価(都道府県地価調査)

基準地価は「都道府県地価調査」とも呼ばれ、都道府県知事が「土地取引規制に際しての価格審査」や「地方公共団体等による買収価格の算定の規準」になることを目的としています。そして、選定した標準地は、鑑定評価員による鑑定評価をもとに、毎年1月1日時点における標準地の1平方メートルあたりの正常な価格を判定し設定するルールです。
 
なお、基準地価は都道府県が公表するため、各都道府県のサイトから確認します。例えば、東京の基準地価なら東京都財務局のサイトに「地価公示価格(東京都分)」として掲載されています。図表4は令和5年の東京都基準地価格です。
 
図表4


※東京都財務局 東京都基準地価格より引用
 
基準地価と地価公示価格とは、不動産鑑定士による調査方法や調査地点が類似しており、調査のタイミングが「6ヶ月間」ずれているため、双方が土地価格の信憑性や動向を補完し合う関係にあるといえます。
 
そのため、最低限どちらかを調べればよく、万全を期すために双方を調べるという主旨の調査をすれば問題ないでしょう。図表5は「令和5年東京都基準地価格」の全体版です。
 
図表5

※東京都 令和5年東京都基準地価格より引用
 

土地価格の調べ方3:相続税路線価

相続税路線価とは、国税庁が全国の民有地について、相続税や贈与税を計算する際の土地の基準評価額とするために定めた、路線価の平米単価および評価倍率のことです。
 
原則として、相続税や贈与税の計算において、土地などの価額は時価(その時点の流通相場価格)により評価することとされています。しかし、納税者がおのおの相続税などの申告ごとに、土地の時価を自力で把握することは容易ではありません。
 
そのため、相続税などの申告の便宜や課税の公平を図る観点から、相続税などの算定に使用する全国統一の根拠価格として、国税局が毎年路線価を定めて公開しているのです。
 
図表6は、国税庁のサイト「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」です。
 
図表6


※国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表より引用
 
マップもしくは都道府県の一覧から調査したい土地をクリックして進み、町名まで指定します。図表7は「東京都三鷹市上連雀1丁目」の一部です。表示されたマップが対象土地を含む場所でなければ、隣り合う番号のマップを探します。
 
図表7

※国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表 57045より引用
 
路線価は、路線(道路)に土地評価額計算のための単価を1000円単位のアラビア数字とアルファベット記号1文字で「370D」などのように表示されます。数字が370なら1平米あたりの単価は37万円(370×1000円)という意味です。
 
なお、アルファベット記号は図表8(最左の表)にある「借地権割合」を表しています。賃料を支払って土地を借りて借地上に建物を建てている(借地権をもっている)場合に、借地権の財産的評価額を計算する際に用いる割合です。「370D」と付された路線に面する土地の借地権割合は「60%」ということになります。
 
図表8

※国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表 57045より引用
 
ただし、路線価を算出するには、路線価に面積を乗じたものに対して、次の式のように補正を加えて下方修正します。一般的に、土地の間口が狭い・土地の地形が悪い(きれいな四角の整形地でない)・土地に高低差があるなどがあると、活用効率や利便性が下がるからです。
 

●路線価×各種補正率×土地面積

 
路線価による土地評価額の計算例は、図表9をご参照ください。
 
図表9


※国税庁 No.4602 土地家屋の評価より引用
 
いびつな土地形状によるマイナス補正をするために利用するのが「奥行価格補正率」や「奥行長大補正率」および「その他補正率」です。ただし、補正計算は非常に難解であるため、評価計算の専門家である税理士に正しく評価してもらうのが一般的です。
 

土地価格の調べ方4:固定資産税評価額

固定資産税の算定基準になる「固定資産の評価額」とは、知事または市町村長が総務大臣指定の固定資産評価基準に基づいて評価額を決定し、固定資産課税台帳に登録したものを指します。
 
固定資産税評価額は、3年に1度全件評価替えを行って新たな評価額を決定します。ちなみに、直近この評価替えを行った年度(基準年度)は2021年4月であり、2024年4月には次の評価替えを控えています。
 
固定資産税評価額を知るためには、おもに次の2つの書類を確認する方法があります。
 

●固定資産評価証明書
 
●固定資産税課税明細書

 
それぞれについて解説します。
 
<固定資産評価証明書>
役所の申請窓口で、本人もしくは委任を受けた代理人が、手数料を支払って交付申請をします。手数料額は役所によって異なりますが、1通目が400円程度になるのが一般的です。図表10は東京主税局の固定資産評価証明書のイメージで、「価格」と指示した先にある金額が土地の固定資産税評価額です。
 
図表10


※東京主税局 固定資産評価証明書の見方より引用
 
<固定資産税課税明細書>
固定資産税課税明細書とは、1月1日現在の不動産の登記名義人(登記上の所有者)に宛てて毎年5月頃に郵送される「固定資産税・都市計画税 納税通知書」とともに同封されている、図表11のような書類です。
 
見本書類で「一筆全体の価格です」と指示した先にある金額が、土地の固定資産税評価額です。ただし、様式は自治体によって体裁などが異なります。
 
図表11

※東京都主税局 都税:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)より引用
 

土地価格の調べ方5:不動産ポータルサイト

不動産ポータルサイトとは、不動産の購入を検討している方がパソコンやスマートフォンなどから、購入希望条件に合う不動産を自分で探す際に利用する民間のサイトです。今ではたくさんのサイトがありますが、そのなかから図表12「SUUMO」と図表13「アットホーム」を例示します。
 
<SUUMO>
 
図表12


※SUUMO (スーモ) 土地購入(宅地・分譲地・売地)情報探しならSUUMO(スーモ)土地より引用
 
<アットホーム>
 
図表13

※アットホーム 土地の物件情報を探すより引用
 
例示した2つの不動産ポータルサイトにかかわらず多くのサイトでは、マップもしくは地名の入力をするだけで、その地域で売り出している土地の情報を写真や所在図付きで表示が可能です。
 
調べたい土地と類似する条件(地域、面積など)の売出物件を探し、土地の売出価格を面積で割れば土地の単価が分かるため、その単価に自分が価格を調べたい土地の面積をかければ目安金額が分かります。
 
ただし、不動産ポータルサイトで見つけた土地の売出金額については、次の2つの理由によって、相場価格や実際の成約価格とは異なる場合があります。
 

●値引き交渉を見込んで高めの金額に設定している
 
●売り急ぎなどの売主ごとの売却事情は分からない

 
それぞれについて解説します。
 
<値引き交渉を見込んで高めの金額に設定している>
昨今では、購入申込の際に売出価格に対して値下げ交渉をするケースは少なくありません。また、その土地を気に入った方は少々高い金額を出してでも購入するため、不動産の売却時は相場金額よりも少し高めの設定で売りはじめるのが一般的です。
 
<売り急ぎなどの売主ごとの売却事情は分からない>
不動産価格は、需要と供給のバランスに影響を受け、売主の売却事情によっても変動します。
 
例えば、類似する土地が同時期にたくさん売りに出ている、もしくは売主が売り急いでいる場合は、安値競争になる可能性が高まります。一方で、その地域で売りに出ている土地が1つしかない場合や、売主が売却を急いでおらず高く売ろうとしている場合などは、値下げ交渉には応じてくれません。
 
したがって、不動産ポータルサイトで調べた金額は「売主の事情や市場の状況が分からない金額」だということを理解して活用しましょう。
 

土地価格の調べ方6:レインズ・マーケット・インフォメーション

不動産売却の多くは、不動産会社が仲介して行われます。
 
その際に、売主から依頼を受けて仲介業務を行った不動産会社には、特殊な場合を除いては、売却が完了した後に成約価格を不動産流通機構(いわゆるレインズ)に、成約事例として登録する義務があるのです。
 
現在売り出し中の不動産情報が載っているレインズ自体は、「不動産流通機構の会員である不動産会社しか利用できません」が、過去の成約事例が蓄積されたデータは、一般の方でもネット環境があれば無料で閲覧できます。不動産流通機構が運営する次の図表14のサイトは「レインズ・マーケット・インフォメーション」といいます。
 
図表14


※REINS Market Informationより引用
 
ここに掲載されている成約事例は実際に行われた売買契約の金額であるため、信憑性の高さはいうまでもありません。検索結果に添えられる「直近1年の取引情報グラフ」は、面積と価格を要素とする分布グラフであり、どの辺りの金額が相場相当なのかの推測に使えます。
 
ただし、不動産ポータルサイトの場合と同様に、売却時の売主の事情や市場の状況は読み取れません。また、検索できる物件種別は「マンション」と「戸建」に限られ、土地だけを探すことはできない点にもご注意ください。
 

土地価格の調べ方7:不動産会社

不動産会社は、ほとんどの不動産売買において、売主と買主を引き合わせて売買契約を締結します。そのため、高確率で売却できる精度の高い売買価格を調べるなら、不動産会社の売却査定以上に信頼できる方法はありません。
 
不動産会社は、売主の売却事情も、市場で競合する類似物件のことも熟知したうえで売却査定を行います。また、売却活動が始まってからも、状況が変化すれば売出価格を変更し、競合物件が多すぎたり、閑散期に入れば、市況が改善するまで売却活動を中止することもあります。したがって、土地価格を正確に知りたいなら、不動産会社へ売却査定を依頼するという選択肢は外せないのです。
 
なお、売却査定には次の2種類があります。
 

●簡易査定(机上査定)
 
●訪問査定

 
それぞれの特徴を解説します。
 
<簡易査定(机上査定)>
簡易査定とは、前述の「地価公示価格」「基準地価」「相続税路線価」「固定資産税評価額」「レインズの成約事例」「レインズの売出中の物件情報」などと売却査定対象の土地を比較して査定する方法です。このように、机上で査定が完了するため机上査定と呼ばれます。
 
<訪問査定>
訪問査定とは、査定担当者が査定対象物件を訪問して、物件の状態や環境面など現地でしか分からない情報を得て、簡易査定結果にさらなる補正を加え、最終的な査定金額を確定させる方法です。実際に不動産を売却する前提の売却査定では、ほぼすべての場合に訪問査定まで行っています。
 
なお、訪問査定の結果はレポートにまとめられ、担当者から売主へ「物件の評価」や「査定の根拠」などの詳細について解説します。また、売却活動の戦略や引き渡しまでのスケジュール感などを説明するまでがワンセットになるのが一般的です。
 
査定は基本的に無料ですが、訪問まで行う詳細な売却査定にはかなりの手間や労力をともないます。そのため、売却する気はなく、単に目安価格が知りたいだけという場合は、査定依頼を受けてもらえないか簡易査定のみになるかもしれません。
 

土地価格の調べ方8:不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の価値を公平に判定するべく、社会情勢・経済指標・市場動向・鑑定法に基づく計算・法律など、多角的な基準で不動産を分析・鑑定します。不動産鑑定の3つの方法は、「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」です。
 
なお、政府の地価公示価格や都道府県の基準地価、それらを引用する相続税路線価や固定資産税評価額などは不動産鑑定士の功績が大きいといえます。
 
プラント工場などの希少な物件や、病院やホテルなどの大規模な物件、企業が保有する資産の会計上の鑑定などの場面で活躍します。ただし、一般的な不動産の売買流通価格については本業ではありません。
 

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【2024年】全国の土地価格の動向

地価公示価格は、土地基準価格として日本においては最も信頼される公的指数です。図表15は、国土交通省が行った過去5年間の地価公示価格の推移の追跡考察です。
 
コロナショックによる緊急事態宣言は令和2年(2020年)の4月~令和3年(2021年)9月まで発動し、日本全国の人やものの移動が停止しました。
 
令和3年の地価公示価格は全国的に落ち込みますが、それ以降は2年をかけて全国的に上昇し、上昇率は令和4年(2022年)よりも令和5年(2023年)のほうが顕著に拡大しています。
 
マイホームの取得に関しては、低金利政策の継続や住宅取得支援政策によって住宅需要は堅調であり、地価上昇に寄与しています。
 
リモートワークの定着によって、都心一極集中の傾向が一部緩んで、地方都市の住宅需要の増加や地価の上昇は継続しています。
 
図表15


※国土交通省 令和5年地価公示の概要より引用
 
また図表16は、全国の都道府県および県庁所在地ごとの「住宅地の変動率」をまとめたものです。前年に始まった緊急事態宣言により令和3年(2021年)は地価公示価格が全国規模で下落していました。
 
関東地方と九州地方および北海道はコロナ前後で地価の上昇が著しいものの、関西地方はコロナ以前の停滞がコロナ後も尾を引いています。ただし、令和7年(2025年)の4~10月に開催予定の「expo2025 大阪・関西万博」によって弾みが付くことが期待されます。
 
図表16

※国土交通省 令和5年地価公示の概要より引用
 
コロナの終焉や円安によるインバウンド需要の増加、および旅客ひとりあたりの消費額は予想を上回る伸びを見せており、景気の回復が地価の上昇を巻き込んで相乗効果を見せるのか、注目が集まります。
 

土地の価格を左右する要因

土地の価値は「利便性」「需要」「希少価値」「外観・景観」に関する条件によって、土地の善し悪しや需要が変わります。
 
例えば、図表17にある条件をたくさん満たすほど価値や価格が上がり、満たさなければ価値や価格が下がるのが一般的です。ただし、後天的に条件を満たすようになったり条件から外れたりするケースがあります。
 
図表17

利便性 駅に近い ・土地の価値に最も影響を与える条件
・住宅地でも商業地でも駅までの距離は最重要
買い物が便利 ・居住用では全世代に強く影響する条件
・人口が増加する地域は後天的に備わるケースが多い
駅まで平坦 ・駅との往復を毎日する場合には平坦が好まれる
バス便が多い ・通勤通学のバス便が多いと駅からの遠さをカバーできる
需要 道路付け ・接する道路の幅が広い(法令で大きな建物を建てやすい)
・土地の間口が広い(間取りが設計しやすい、車両の進入が楽)
人気の駅 ・急行が止まる、ターミナル駅
・駅自体に人気がある、駅周辺が栄えている
人気の沿線 ・通勤通学に便利、あちこちへ出やすい
人気の地名 ・その場所に住みたいと憧れられる地名
コスパが高い ・便利な場所に近いのに土地価格は安い
方角がよい ・南向きで日当たりがよい
災害が少ない ・災害を避けたいのは全世代共通の希望
希少価値 地形がきれい ・きれいな四角形の整形地は見た目がよく利用効率も高い
人気の学校区 ・有名進学校などの学校区内にある
ランドマーク ・ランドマークになるものがある地域
物件が出ない ・売り物件がなかなか出ず、出ればすぐに売れる
外観・景観 眺望がよい ・小高い場所、桜並木がある、川が見える等
街並みが美しい ・その地域周辺に外観がきれいな建物が多い
区画が整理地 ・区画整理地など街区や道路が整然としている
荒廃していない ・ゴミがなく放置自転車や雑草が少ない
嫌悪施設がない ・工場、資材置場、ドブ川、墓地、火葬場、ため池など
夜道が明るい ・外灯があって明るい、夜でもある程度の人通りがある(治安)

筆者作成
 
それ以外に土地価格に影響するのが、販売方法に関する次の条件です。
 

●売り急ぎ
 
●競合の数
 
●売却時期

 
それぞれについて解説します。
 

土地価格を左右する要因1:売り急ぎ

その土地の場所がよほどの人気地区で希少価値が高いなどのケースでなければ、売主が売り急いでいるのに高い価格で売り出すことはしません。おおむね、相場よりも安いことを意識して、少しでも多くの方の購買意欲を刺激する価格に設定します。
 

土地価格を左右する要因2:競合の数

同時期に売りに出ている競合物件(ライバル)が多いと、土地需要が高くない地域では少ない顧客に対して土地の供給が過多になります。そのため、そのなかで勝つために値下げ競争になる可能性が高まるのです。
 

土地価格を左右する要因3:売却時期

不動産が動かない閑散期に売却活動をしても売れる確率は低く、高値で売れることも期待できません。もしも売却期間が長引いた場合には、いったん売るのを止めて、再度よい時期に売却活動を再開したほうがよいケースはたくさんあります。
 

実家(土地)を高く売る方法

実家(土地)を高く売る方法は、次の通りです。
 

(1)境界を確定させる
 
(2)再建築の可否を確かめる
 
(3)近隣へ声を掛ける
 
(4)分筆してから売る
 
(5)土壌汚染を調査する
 
(6)軟弱地盤を調査する
 
(7)古家の解体を検討する
 
(8)複数社へ査定依頼する
 
(9)相場より高く売り出す
 
(10)価格の上昇時に売る

 
それぞれについて解説します。
 

土地を高く売る方法(1)境界を確定させる

そもそも隣地との境界を確定させていない、境界標が移動して見当たらないなどで境界が曖昧でも、買主が承諾すれば売買できます。しかし、買主がローンを組む場合に銀行が境界確定や測量を融資条件にした場合は、ローンが組めない可能性があります。
 
また、隣地所有者と境界ポイントの見解が異なり、購入時より面積が小さくなる可能性があります。境界の確定や確定測量には数ヶ月と数十万かかりますが、売りやすい環境作りや将来の紛争予防のために、境界の確定や測量は優先事項としておきましょう。
 

土地を高く売る方法(2)再建築の可否を確かめる

土地が建築基準法上の道路に2m以上接道していなければ、今ある建物を取り壊して再建築できません。建築年が古い場合には、外見上は道路状のものに接道していても法律上の解釈では接道していないケースがあります。再建築できない土地は、買い手が極端に少なく価格もかなり安くなります。
 
その場合は、隣地を買い増しして適法に接道させる、もしくは隣地所有者に土地を売るなど、方法を考えて売らないといけません。
 

土地を高く売る方法(3)近隣へ声を掛ける

隣の土地がタイミングよく売りに出るケースはなかなかありません。そのため、隣地所有者が高値で買ってくれるケースは意外に多く、売却活動も短期間で済むというメリットがあります。相続した実家を売るなら、まずは隣地へ声を掛けるとよいでしょう。
 

土地を高く売る方法(4)分筆してから売る

敷地が大きい場合に、一括で売るよりも分筆して流動性(需要)を上げる方法があります。土地の購入者には建築費込みの予算があり、土地を予算内で探すため大きな土地を好みません。したがって、お金をかけて分筆をしても需要が大きくなり、単価が上がるケースは少なくないのです。
 

土地を高く売る方法(5)土壌汚染を調査する

以前に化学工場や染色工場、病院や研究施設だった、農薬や除草剤が大量に散布されていた、雑多な資材や機材が長年放置されていた場合があります。すると、化学物質・農薬・重金属・薬品が土壌に残留している可能性があり、健康被害の恐れが懸念されます。
 
場合により、購入者が利用する際に土壌入替えを要するケースもあるため、以前の土地の用途は調査すべきです。
 

土地を高く売る方法(6)軟弱地盤を調査する

建物を建築するのに地盤が弱ければ、固い岩盤層までコンクリート杭を打つ必要があり、その分の建築コストが上がります。液状化現象を恐れる方もいるでしょう。地盤調査は建築主がするものですが、売却時点で地盤が強固だと分かれば、高値で売れるチャンスが広がります。
 

土地を高く売る方法(7)古家の解体を検討する

古家はそのまま残してボロ家投資(安い物件取得費で行う賃貸事業)をする方は解体しないほうが喜びます。少しの補修で住もうとしている方への場合も同様です。
 
ただし、一般的には住宅用地を探す方へは更地のほうが売却しやすい傾向にあります。しかし、更地にすると固定資産税が3~4倍になる場合もあるため、古家を必ず解体するのではなく、更地にして売れ行きが大幅に改善するなら解体するとよいでしょう。
 

土地を高く売る方法(8)複数社へ査定依頼する

不動産会社の売却査定は会社により査定額や根拠が異なります。また、売却を任せてほしくて高い金額を提示する不動産会社もあります。そのため、面倒でも複数の不動産会社へ査定依頼をして、金額や査定根拠を比較すべきです。
 
査定後に売却するなら、複数社に依頼していることは、売却を任せる不動産会社選びに役立つため、売却査定は少なくとも3社以上に声を掛けましょう。
 

土地を高く売る方法(9)相場より高く売り出す

不動産は相場よりも高く売れるケースがあります。
 
また、購入希望者からの申込で、厳しい値下げ交渉を受けるケースもあります。そのため、よほど売り急いでいない場合は、売出価格を売却査定金額(相場金額)よりも10%ほど高額に設定して始まるケースがほとんどです。
 

土地を高く売る方法(10)価格の上昇時に売る

不動産価格は、小規模な乗降下を繰り返しながら、長期的にはゆっくりと上昇し続ける傾向があります。そのため、上昇基調が続いているような時期は、不動産の売却に適した時期だといえます。直近数年の地価公示価格の推移を見れば、土地の価格は上昇基調にあることが分かるため、今が土地の販売によい時期だといっても過言ではありません。
 

土地価格の相場目安は公的な基準価格を用いて計算できる

土地価格は、いくつかの公的な土地指数(地価公示価格、基準地価、相続税路線価、固定資産税評価額など)によって推測できます。流通相場は、おおむね地価公示価格や基準地価と同等と見ることができるため、それらの地価をそのまま売却価格の目安とするか「相続税路線価を80%で割る」または「固定資産税評価額を70%で割る」などで推測してもよいでしょう。
 
ただし、土地の売買価格は「売却時の経済状況」や「競合物件の数」および「売主の売り急ぎ」や「売却する時期」などの影響を強く受けます。少しでも高く売るなら、好条件が揃うように準備してから売却することをおすすめします。
 

出典

国土交通省 土地総合情報システム 地価公示鑑定評価書の用語等の説明
国土交通省 国土交通省地価公示・都道府県地価調査
国土交通省 都道府県地価調査
東京都財務局 令和5年地価公示価格(東京都分)の概要
東京都財務局 東京都基準地価格
東京都財務局 令和5年東京都基準地価格
国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表 57045
国税庁 No.4602 土地家屋の評価
東京主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
東京主税局 固定資産評価証明書の見方
東京都主税局 都税:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
SUUMO (スーモ) 土地購入(宅地・分譲地・売地)情報探しならSUUMO(スーモ)土地
アットホーム 土地の物件情報を探す
REINS Market Information
国土交通省 令和5年地価公示の概要
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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