更新日: 2024.04.02 贈与

親が70歳になり、毎年「100万円」贈与してくれるそうです。「生きているうちに」とのことですが、なにか注意点はありますか? 税金はかからないと聞きました

親が70歳になり、毎年「100万円」贈与してくれるそうです。「生きているうちに」とのことですが、なにか注意点はありますか? 税金はかからないと聞きました
親からの暦年贈与は、受取側からすれば非常にありがたい話ではありますが、なにか注意点はあるのでしょうか。「毎年110万円までであれば非課税」ということだけ認識している人も多いでしょう。
 
本記事では、暦年贈与の注意点について解説します。
小林裕

執筆者:小林裕(こばやし ゆう)

FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート

暦年贈与の注意点

そもそも暦年贈与とは、1年間(1月1日~12月31日)の贈与合計額が110万円以下の場合、贈与税が非課税となる制度を活用する贈与方法のことです。この方法だと資金使途の制限がないため、教育以外の生活費や娯楽費などに使っても全く問題がない自由度の高いお金を贈与することが可能です。
 
この暦年贈与の注意点は、贈与をした側の人が亡くなり相続を開始する際、一定期間分の贈与について「持ち戻し」が発生する点です。「持ち戻し」が発生すると、亡くなる前の持ち戻し期間中の贈与額が相続財産に加算されるため、相続税の課税対象になってしまいます。なお、「持ち戻し」は子をはじめとした法定相続人への贈与に適用されるため、孫への贈与には原則適用されません。
 
2023年まではこの「持ち戻し」の期間は3年間でしたが、2024年1月1日以降は段階的に7年間に引き延ばされることが決定しました。例えば2031年1月1日に亡くなった場合には、2024年1月1日以降に行った暦年贈与の金額が全て「持ち戻し」となり、相続税の課税対象となります。
 
以上の注意点を考慮した場合、暦年贈与を行う際には、祖父母から子への資産移転は可能な限り早急に行うことが望ましいという判断ができます。
 

都度贈与の注意点

都度贈与とは、教育費や生活費のうち通常必要と認められるものを、その都度贈与するという方法のことです。生活費や教育費の名目で受け取った財産のうち、その都度渡されたものには、税金を課せられないことが法律で定められています。
 
ただし、教育資金として使われたことを明確にしなくてはいけないので、領収書を保管しておく必要があります。また、贈与額や贈与日も明確にしておくことが望ましいです。現金の手渡しではなく、金融機関へ振り込みをしてもらうことによって、記録を残すとよいでしょう。
 
また、この方法においては、「未来に発生する教育費用」のための贈与は、非課税対象外となるケースがあるため、注意が必要です。
 
都度贈与は暦年贈与と比較した場合、資金使途の制限や領収書の保管といった注意点もありますが、「持ち戻し」に怯えなくていい点は最大のメリットでしょう。
 

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暦年贈与が定期贈与と見なされないための注意点

年間110万円までの贈与は、贈与時には非課税ですが、「定期贈与」と見なされてしまうと課税されます。例えば毎年100万円を10年かけて贈与した場合、「最初から1000万円を贈与する予定だったのではないか」と見なされる可能性があり、1000万円から110万円の基礎控除額を引いた890万円に対して課税されることになります。
 
そうなると、毎年分割して贈与をしてきた意味が薄れてしまうため、次項で注意点を紹介します。
 

贈与時期をずらす

毎年同じ月日にお金のやり取りがあると、定期贈与を疑われる危険性は高まるでしょう。
例えば、ある年の12月に贈与をしたのなら、次の年は12月以外の月でお金を振込むなどの工夫をするといいでしょう。
 

贈与額を一定にしない

税務署から指摘を受ける危険性を下げるため、毎年同額ではなく「ある年は100万円、翌年は70万円、その翌年は95万円」というように贈与額を毎年変化させることで、定期贈与と見なされる可能性を下げることができるでしょう。
 

非課税枠を利用し早めの贈与を

暦年贈与は非常に有効な贈与方法ではありますが、税制改正により「持ち戻し」期間が7年まで延びることが決定しました。贈与をする側の人の年齢や資金使途などを考慮し、暦年贈与と都度贈与をどのように活用するのか検討しましょう。
 
また、贈与を行う側の祖父母や両親の意思判断能力が低下してしまった場合には、贈与が認められないケースもあります。贈与は、可能な限り早めに行動することが大切です。
 

出典

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
財務省 令和5年度 税制改正の大綱
 
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート

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