更新日: 2024.04.30 その他相続
知り合いが「親が亡くなったのに預貯金を引き出せない」と言っていました。私の親も高齢なので心配です。生前からなにか対策できることはありますか?
しかし、親の死亡後は金融機関の預金口座が凍結され、現金を引き出せなくなる可能性が高いです。必要な手続きが終われば口座の凍結は解除されますが、一時的に子たちで費用を立て替えるなどの対応が必要になるでしょう。
本記事では、金融機関の口座名義人が死亡した際に行われる預金口座の凍結について解説します。その他にも、親が生きているうちに行える預金口座の凍結への対策もまとめているので参考にしてみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
金融機関の口座名義人が死亡すると口座が凍結される
金融機関は、口座名義人が亡くなったのを確認した時点で預金口座の凍結を行い、入出金や振込、自動引き落としといった手続きができなくなります。ただし、役所に死亡届を提出しただけでは預金口座は凍結されません。なぜなら役所が死亡届の提出状況を金融機関と共有していないからです。
金融機関の担当者が、新聞の訃報欄などから口座名義人の死亡を知るケースもありますが、確実性の高い情報を取得しないことには預金口座の凍結には至らないでしょう。
そのため、実際に口座名義人が死亡してから、預金口座が凍結されるまでにかかる時間は一律ではありません。親族などが金融機関へ口座名義人が死亡したことを申告し、その場で預金口座が凍結するのが一般的です。
相続手続きが終われば凍結を解除できる
預金口座を凍結されたら、半永久的に現金の引き出しや解約ができないわけではありません。遺産分割が完了し、口座名義人の財産を誰がどのように相続するかが確定すれば凍結を解除できます。
なお、預金口座凍結を解除する際には、遺言書や遺産分割協議書、口座名義人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)、法定相続人を確認できる戸籍謄本といった書類の提出が必要です。
口座凍結前に口座から現金を引き出してはいけない
口座名義人が死亡した後に、遺族が預金口座から現金を引き出しても罪に問われることはありません。しかし、死亡した口座名義人の預金は相続財産となり、相続人全員で共有する必要があります。共有財産である預金を引き出す際には、相続人全員の許可を得なければならないのです。
そのような状況で、相続人のうちの誰かが共有財産を勝手に引き出せば、他の相続人から不当利得返還請求を受けたり、損害賠償請求を起こされたりするリスクが高まります。
遺産分割前の相続預金の払戻し制度で一定額を引き出せる
遺産分割前の相続預金の払戻し制度によって、相続預金のうち一定額の引き出しが可能です。引き出せる金額の上限は、「相続開始時の預貯金残高×相続人の法定相続分×3分の1」で、金融機関ごと(同一金融機関の複数店舗に相続預金がある場合は全店舗)に150万円までと定められています。
手続きは、単独の相続人が金融機関の窓口で行います。手続きを行う相続人の本人確認書類や印鑑証明書、戸籍謄本または全部事項証明書(法定相続人全員を確認できるもの)、死亡した口座名義人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書などを提出することで、預金を引き出せます。
相続財産から葬儀費用の控除が可能
相続税の課税額を計算する際には、相続財産から葬式費用を控除できます。控除できるのは、以下のような費用です。
・火葬や埋葬、納骨費用(仮葬式と本葬式を行った場合は両方にかかった費用)
・遺体や遺骨の回送費用
・葬式の前後に発生した通常の葬式に欠かせない費用(お通夜など)
・葬式でお寺などに支払った読経料などのお礼にかかった費用
・死体の捜索、死体または遺骨の運搬費用
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
口座凍結を避けるために行える対策
口座名義人である親が死亡した際に、預金口座凍結を避けるために行える生前の対策は以下のとおりです。
・預金の一部を事前に引き出しておく
・任意後見制度
預金全額ではないにしても、必要最低限の金額を引き出して自宅に保管しておくのも方法の一つです。盗難に注意しなければなりませんが、どこで管理しているのかを子らと共有しておきましょう。
その他に、任意後見制度を利用することも検討してみてください。認知症や障害などに備えて、親が一人で決められるうちに任意後見人を選び、任意後見監督人の監督下で特定の法律行為を本人に代わって行える制度です。
親の死亡時を想定して預金情報を事前に共有しておこう
親が亡くなった場合に、葬儀やお墓にかかる費用は高額になる傾向です。しかし、金融機関の預金口座は、口座名義人の死亡を確認した後に預金口座の凍結を行います。凍結が解除されるまでは、さまざまな費用を子で立て替えなければならないケースも出てくるかもしれません。
そこで、親がまだ元気なうちに預金口座から現金を引き出しておくなど、預金口座の凍結に対処できるような方法を検討しておくとよいでしょう。
出典
一般社団法人全国銀行協会 遺産分割前の相続預金の払戻し制度のご案内
国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
厚生労働省 成年後見はやわかり 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー