更新日: 2019.01.10 相続

相続税の節税 行き過ぎた手法に厳しい措置が

執筆者 : 黒木達也

相続税の節税 行き過ぎた手法に厳しい措置が
相続税をどう節税するかということへの関心は最近高まっています。
 
とくに多くの人が相続税を支払う対象になって以来、税理士などの専門家に相談して相続税を節約する方法を、それぞれの立場で考えてきました。
 
しかし、節税が行き過ぎて本来の趣旨を超えた相続税対策には、国税当局が「相続税逃れ」として厳しく対応し始めました。
 
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黒木達也

Text:

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

黒木達也

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Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

相続税を節税のための知恵

相続税の非課税枠が引き下げられて以来、相続税はごく一部の人だけの問題ではなく、多くの人が納税対象になってきました。
 
東京などの大都市で50坪ほどの宅地と住宅を相続するだけで、相続税を納める可能性が高まります。
 
そのため、どのような節税対策が必要になるのか、真剣に考えるようになりました。
 
例えば、土地の評価を下げるためにアパートを建設する、少しでも子や孫への生前贈与をして相続財産を減らす、といった対応はかなり進められています。
 
節税の中でも小規模宅地等の特例制度は、条件しだいで土地の評価額が80%減額されるため、相続税対策の大きな柱として、どう活用するかが課題でした。
 
そのため、この適用基準を満たすために、様々な手法を駆使して、その条件を満たし、相続税を軽減しようとする努力もされてきました。
 
2018年に相続税法の一部改正が決まり、配偶者の居住権の確立、自筆遺言制度の簡素化、介護などによる特別寄与分の認定、被相続人の銀行口座からの引出し要件の緩和など、40年ぶりに大きな変更がありました。
 
その一環として、2018年4月から、相続税制の運用について、これまでより厳格化が進み、以前は利用可能であった節税手法に制限が加えられ、課税されるケースが増えてきました。
 

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小規模宅地の特例を厳格に適用

まず相続税を大幅に減額できる「小規模宅地の特例」について、適用される条件が厳格になりました。
 
この特例は、親と同居していた子が、親が亡くなった後に残された自宅を相続する場合、330㎡以下の面積の土地であれば、相続税額が80%減額され、20%分だけを相続税として支払えば済むという制度です。
 
納税する立場から見ると、納税額が大幅に少なくなり、きわめて魅力的な制度です。
 
自宅の土地と家など相続する財産が少ない状態のところへ、多額の相続税を掛けられたのでは、自宅を手放さざるを得なくなり、生活に困る人が出ることを防ぐことが本来の趣旨でした。
 
しかし実際には、子が親の家とは別に自宅を別に持っているにもかかわらず、名義を他の兄弟などの親族に変更して家を持たない「家なき子」状態を作り出し、相続に際しては小規模宅地の特例を活用して親の家を相続するケースが非常に多く見られました。
 
親との2世帯住宅であっても、子の名義分について、一度すべて親の名義にすることにより、特例の適用を受けることができました。
 
また資産管理をする会社組織にして、そこが所有する家に居住し、自宅を個人所有していないようにすることもできました。
 
こうした節税対策は、多くの制度に詳しい税理士も実際に助言をしてきました。
 

特例の適用を受けられないケース

今回の法改正で、自宅を相続する場合、次のケースは、小規模宅地の特例が厳格化されたことで除外されました。
 
それは、(1)相続の開始3年以内に、本人から見て3等親以内の親族が所有している日本国内の家に居住していた人、(2)相続開始3年以内に、相続人と関係する組織が所有している日本国内の家に居住していた人、(3)過去に親が住んでいる家を所有したことがある人、この3つのケースに該当する人については、小規模宅地の特例を受けることはできません。その場しのぎの対応ができなくなりました。
 
事業用の不動産についても、適用基準が厳しくなりました。
 
例えば、アパートなどを建て貸家建付地にしていると、小規模宅地の特例が適用され、事業用宅地については相続時に50%が減額対象になりました。
 
しかし相続開始される3年以内に、貸家建付地となった土地については、この特例が適用されなくなりました。事業用でも、相続が近くなってから、にわか仕立ての節税が出来なくなりました。
 
このように小規模宅地の特例の趣旨から外れ、短期間で形を整えることに注力して、恩典を受けようとするケースについて、厳しく規制され始めたことは事実です。
 

一般社団法人を利用した所得移転にメス

一般社団法人を設立しそこへ所得を移転し課税を逃れようとする手法も、これまでは実行できました。
 
しかしこの要件を満たすことが難しくなりました。これは、まず法人を設立して、その法人に自分の不動産や預金・株式などを移転し、その法人が移した財産を管理する仕組みをつくります。
 
一般社団法人は、利益を生み出す活動もできますが、それを配当で還元する必要はありません。自分が理事長など役員に就任し管理します。
 
そうすれば、自分が死亡した後に、子がその法人の理事長などに就任すれば、相続税をほとんど支払うことなく、実質的に資産を譲り渡すことが出来る仕組みでした。
 
この仕組みが簡単に利用できなくなりました。
 
設立された社団法人が子や兄弟などの親族で支配されていると「特定一般社団法人」と判断され、死亡などで財産移転が発生した場合は財産が遺贈されたと見なされ、すべてに相続税が課税されます。
 
具体的には、相続が発生する5年以内の期間に、同族の人が過半数役員を占めていた期間が3年以上あると特定一般社団法人となり、財産は遺贈されたものと見なされ課税されます。
 
これまでの抜け穴を利用したと思われる相続税の節税対策に対して、税収の減少を少しでも抑えたい国税当局が、真剣に対応してきている結果と思われます。
 
とくに一般社団法人を利用したこれまでの節税対策では、かなりの金額が無税で子などへ移転されていたことが見受かられ、普通に相続税を支払っている人からみれば、不公平感も生まれてきます。
 
こうした事情も考慮し、厳しく対応したといえます。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト
 

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