更新日: 2024.05.20 贈与
78歳の祖父が「孫に渡すほうが得」と、毎年「100万円」を贈与してくれます。父に贈与しても「非課税」だと思うのですが、なぜ私なのでしょうか…?
本記事では、祖父から、子ではなく孫に暦年贈与するメリットについて解説します。贈与を受けた後に、思わぬ事態に陥らないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
暦年贈与とは
今回は祖父から孫へ毎年「100万円」を贈与するため、暦年贈与の制度を利用することになります。暦年贈与は、1年間(1月1日~12月31日)の贈与合計額が110万円以下である場合には、贈与税の課税を受けず非課税となる方法を指します。
この暦年贈与は、子どもだけでなく、孫など法定相続人以外への贈与にも適用されます。また、資金使途に制限がないお金を贈与することができるため、自由度の高い制度といえるでしょう。
暦年贈与の「持ち戻し」制度について
前項にて紹介した暦年贈与ですが、注意点も存在します。それが「持ち戻し」制度です。暦年贈与の制度では、贈与者が亡くなってしまい相続を開始するときに、一定期間分の贈与金額について「持ち戻し」制度が適用されます。
「持ち戻し」が発生した場合、贈与者が生前の持ち戻し期間中の贈与合計額が相続財産に加算され、相続税の課税対象としてカウントされるのです。
この「持ち戻し」期間は、2023年までは3年間でした。しかし2024年1月1日以降、段階的に7年間に延長されることが決定しています。例として、2031年1月1日に亡くなった場合、2024年1月1日以降に実施された歴年贈与の合計額が「持ち戻し」対象になり、相続税の課税対象になります。
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法定相続人以外への贈与であれば「持ち戻し」の対象外
前項にて「持ち戻し」制度について解説しましたが、この「持ち戻し」制度の対象となるのは、子や配偶者をはじめとした法定相続人へ贈与する場合です。逆にいうと、孫をはじめとした法定相続人以外への贈与では原則「持ち戻し」が適用されません。そのため、「孫に渡す方が得」という発想が祖父に生まれる訳です。
祖父としては、せっかく非課税と思いながら贈与をしても、自分が亡くなった際に持ち戻し対象となり、相続税が課税されてしまってはやり切れないですからね。
一方、前記制度を理解した上で子へ贈与するのであれば問題はありません。「若年の孫に大金を渡すのは不安」という人もいるでしょう。孫の年齢や判断能力などを総合的に考慮した上で、誰に贈与を行うべきかを判断するのが良いでしょう。
暦年贈与を有効に活用したい
本記事では、祖父から、子ではなく孫に暦年贈与するメリットについて解説しました。祖父としては、法定相続人ではない孫に贈与することによって、「持ち戻し」におびえる必要がなくなります。
「持ち戻し」制度について把握した上で、各家庭それぞれの事情を考慮し、誰に贈与をするべきかを家族で話し合って判断しましょう。
また、贈与を行う際には祖父母の意思判断能力が重要となります。仮に、贈与を行う祖父母の意思判断能力が低下している場合、贈与が認められないことがあります。暦年贈与は、必要に応じて早めに行うとよいでしょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
財務省 令和5年度税制改正の大綱
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート