更新日: 2024.05.23 その他相続

親から相続した土地があるのですが、地方の山奥にあり使い道がないので相続したくありません。相続せずそのままにしたらペナルティーはありますか?

親から相続した土地があるのですが、地方の山奥にあり使い道がないので相続したくありません。相続せずそのままにしたらペナルティーはありますか?
土地の相続などの際に所有者についての登記が行われないなどの理由で、所有者が不明な土地が増加しています。
 
所有者が不明の土地の面積は、九州の土地面積よりも広いといわれています。こういった所有者不明の土地、つまりは管理されず放置されたままの土地は、その周辺の環境や治安悪化を招くだけでなく、防災対策や開発などを妨げてしまうのです。
 
そこで、所有者不明土地をなくすため、相続登記の申請が令和6年(2024年)4月から義務化されることになりました。
篠原まなみ

執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士

外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。

相続登記とは

相続登記とは、相続が発生した土地・建物(不動産)について、不動産の所在する管轄の法務局に不動産登記簿の名義を変更することです。相続の登記は、相続人が単独あるいは、共同でする必要がありますが、相続の手続きは複雑なので専門家(司法書士もしくは弁護士)に依頼して代理で申請してもらうこともできます。
 
相続登記は、一般的には、次のような流れで進みますが、案件により異なります。

(1) 相続する不動産を特定し、法定相続人の範囲を確定する
(2) 相続人の間で、亡くなった人の財産をどのように分けるかを協議・話し合い(遺産分割協議)※1を行い、その結果を文章にする
(3) 相続登記申請書を作成し、申請に必要な証明書類等※2を用意する
(4) 管轄の法務局に、登記申請をする。(持参・郵送・オンラインの方法があります)

ところで、相続登記には、不動産の価額や手続きの内容に応じて次の費用がかかります。

(1) 登録免許税※3(登記のときに国に納付する税金)
(2) 各種証明書の取得費用(戸籍謄本、住民票写しなど)
(3) (依頼をする場合には)司法書士や弁護士に支払う報酬※4

(※1)遺産分割協議で相続分を決める方法の他に、法律で定められた割合(法定相続)で亡くなった人の財産を相続する方法や、遺贈により不動産を取得する場合もあります。
 
(※2)申請に必要な証明書等の主な例としては、次が挙げられますが、ケースにより異なります。

1. 被相続人の住民票除票
2. 被相続人の戸籍謄本一式
3. 遺言書または遺産分割協議書
4. 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
5. 不動産を相続する人の住民票
6. 固定資産税納税通知書

(※3)固定資産税評価額の原則0.4%
 
(※4)5万円~10数万円程度(大まかな目安で、実際の報酬はケースによって異なります)
 

相続登記の義務化

これまでは、相続登記や住所等の変更登記の申請は任意でした。そのため、費用も手間もかかる手続きをしない相続人がいることで、第二相続、第三相続と進むにしたがい相続人が増えて複雑化します。その結果、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない所有者不明土地が増加します。
 
2022年度に地方公共団体が実施した地籍調査事業では、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しなかった土地の割合は、24%(出典:令和4年度国土交通省)にも及んでいます。この不動産所有者不明土地を減らすため、相続登記の申請が2024年4月1日から義務化されました。
 
相続などにより不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行う必要があります。また、遺産分割協議が行われた場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請する必要があります。
 
なお、上記のいずれの場合でも正当な理由がないのに申請をしなかった場合には、10万円以下の過料の適用対象となります。

<正当な理由の例>

1. 相続登記を放置したために相続人が極めて多数になっていて、必要な資料(戸籍謄本等)の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
2. 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
3. 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
など

 

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まとめ

相談者のように、相続した土地について「遠くに住んでいて利用する予定がない」「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった相続した土地を手放したいという場合には、国の制度として2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」が開始されました。相続人が一定の要件を満たした場合※5は、土地を手放して国庫に帰属させることができるというものです。
 
所有者が不明の土地を増やさないために相続人一人ひとりが自分事として考えましょう。
 
(※5)引き取ることができない土地があります。詳細は法務省 相続土地国庫帰属制度の概要を参照にしてください。
 
執筆者:篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者

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