更新日: 2024.06.20 その他相続

親から生前、住宅資金として「1000万円」を受け取った兄。親の死後「遺産7000万円の半分もらう」と言ってきましたが、これって妥当なんですか? 私が「4000万円」受け取ることはできないのでしょうか…?

親から生前、住宅資金として「1000万円」を受け取った兄。親の死後「遺産7000万円の半分もらう」と言ってきましたが、これって妥当なんですか? 私が「4000万円」受け取ることはできないのでしょうか…?
相続によって遺族それぞれが受け取る遺産を決めるときに、亡くなった親から生前に贈与があった人がいる場合、どのように遺産分割をすればトラブルにならないのでしょうか。本記事で、試算をまじえて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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兄が親から生前にもらっていたお金の相続への影響は?

結論から記すと、相続での遺産分割に影響が出ます。
 
相続人(亡くなった人の財産を相続する人)が、親から生前にお金の贈与を受けていた場合、贈与されたお金が「特別受益(じゅえき)」として遺産の前渡しをされたとみなされます。
 
特別受益となるのは、相続人への遺贈または生前贈与のうち、「生計の資本(教育費や住宅ローンなど)」または結婚や養子縁組を目的とする贈与です。特別受益があった場合、そのまま法定相続分で分けると不公平になるので、特別受益の金額を遺産に加えて分割を行います。
 

親の遺産額7000万円を兄と私で公平に分けると相続金額はいくら?

タイトルのケースでは、兄が親から贈与されていた1000万円を相続財産として合算(持ち戻し)してから、特別受益分を減額して相続人それぞれが受け取る遺産額を決めます。それでは相続金額がいくらになるのか試算してみましょう。
 

<試算>

親の遺産額7000万円+兄が受け取った贈与1000万円=相続時のみなし相続財産8000万円

 
遺産の分割には「法定相続分」という分割割合が定められており、相続人が兄弟2人だけの場合、法定分割でそれぞれ2分の1です。


みなし相続財産8000万円÷相続人2人=相続見込み額1人4000万円
兄の場合:4000万円-特別受益1000万円=相続分3000万円
弟の場合:特別受益が無いので、相続分4000万円

兄が生前に贈与されていたお金を差し引いて再計算して公平に分けると、兄3000万円、弟4000万円です。この金額をもとに、相続税の申告が必要になります。
 

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遺産分割に導入された期間制限ルールは何年以内?

令和5年4月から遺産分割についての新たなルールが導入され、期間制限が10年になりました。家族が亡くなって「相続の開始」から10年たったあとに行う遺産分割は、原則として法定相続分または遺言による相続分(指定相続分)によって画一的に行うこととされました。
 
このルールは遺産分割がされずに長期間放置されて、相続が繰り返されることによって遺産の管理と分割が困難になることを防ぐ目的で制定されました。このルールは令和5年4月から前に始まった相続についても適用され、何年前に始まったかにかかわらず適用されます。
 
前記の試算での計算結果(兄3000万円、弟4000万円)は「具体的相続分」とされ、相続が始まってから10年以内に遺産分割が決まらないと「法定相続分(1人4000万円)」となり、相続人同士のトラブルになりかねません。
 

まとめ

相続人が、親から生前にお金の贈与(生計の資本としての教育費や住宅ローンなど)を受けていた場合、贈与されたお金が「特別受益」として遺産の前渡しをされたとみなされます。
 
相続人に特別受益があった場合、そのまま法定相続分で分けると不公平になるので、特別受益の金額を遺産に加えて分割を行います。遺産分割には相続開始から10年の期限制限ルールがあるため、相続が始まったら早めに弁護士など専門家に相談することが望ましいでしょう。
 

出典

裁判所 遺産分割Q&A
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
法務省民事局 遺産分割はお早めに
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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