更新日: 2024.09.04 贈与

2024年から「贈与税」が嬉しい改正!年間110万の「非課税枠」が追加されたけど、相続時精算課税制度に注意点はある?

2024年から「贈与税」が嬉しい改正!年間110万の「非課税枠」が追加されたけど、相続時精算課税制度に注意点はある?
「相続時精算課税制度」について聞いたことはありますか。平成15年に創設された制度ですが、令和6年1月から制度が改正され、利用しやすくなりました。一方で、注意しなければいけないこともあります。今回は、新しくなった「相続時精算課税制度」について解説します。
廣重啓二郎

執筆者:廣重啓二郎(ひろしげ けいじろう)

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

相続時精算課税制度とは

贈与税の課税制度には、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」があります。
 
暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額に応じて課税される制度のことです。 ただし、1人当たり年間110万円の基礎控除額があるため、贈与を受けた金額が110万円以下なら、贈与税の申告は不要です。
 
相続時精算課税制度とは、贈与を受ける人(子や孫)が、2500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。
 
ただし、贈与をする人(親や祖父母)が亡くなったときに、その贈与をする人から受けた贈与財産を相続財産に加算して、相続税の計算をする必要があります。初めて相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与を受けた人が贈与税の申告期間内に書類の提出をすることが必要です。
 

新しい相続時精算課税制度の改正について

今回の改正によって、新たな相続時精算課税制度は、これまでの特別控除(累計2500万円)に基礎控除(年110万円)が追加されました。
 

1)贈与税の申告が不要

改正前、相続時精算課税制度は少額でも相続税の申告が必要でしたが、改正後は、年110万円以下の贈与について、申告が不要となりました。
 

2)年110万円の基礎控除内なら相続税がかからない

改正前の相続時精算課税制度では、全ての贈与財産を相続財産に加算する必要がありましたが、改正後は、年110万円までの贈与財産を相続財産に加算する必要がなくなりました。
 

3)生前贈与加算の対象外

相続時精算課税制度を利用した場合、年110万円以下の贈与は、期間に関係なく生前贈与加算の対象となりません。なお、暦年課税制度では、令和6年1月1日以後、相続開始前7年以内の贈与はなかったことになり、相続財産に加算することになりました。
 
ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、 総額100万円まで加算されません。
 

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相続時精算課税制度の注意点について

(1)暦年課税制度には戻れない

一度、相続時精算課税制度を選択した場合、暦年課税制度に戻れません。
 

(2)年110万円を超えた場合、贈与税申告が必要になる

贈与財産の額が110万円を超えた場合、贈与税申告が必要となり、超えた部分は相続開始前の期間に関係なく、必ず相続財産に加算する必要があります。
 

(3)小規模宅地等の特例が使えない

相続時精算課税制度を選択して、土地などを贈与した場合、小規模宅地等の特例が使えなくなります。小規模宅地等の特例が相続時に使えなくなると、相続税が高額になる可能性がありますので、注意が必要です。
 

まとめ

新しい相続時精算課税制度は、従来の制度に比べて利用しやすくなっており、税負担の分散や財産の円滑な移転を可能にするメリットがあります。
 
しかし、小規模宅地等の特例が使えなくなるなど、注意すべき点も多いため、制度を利用する際には事前に専門家と相談しながら計画を立てることが重要です。これにより、円滑な相続手続きと次世代へのスムーズな財産移転を実現できるでしょう。
 

出典

国税庁 No.4103相続時精算課税の選択
国税庁 参考 相続時精算課税制度のあらまし
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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