更新日: 2020.04.06 その他相続
遺産分割で不公平にならない為に 知っておきたい遺産分割の特別受益とは?
特別受益が認められる場合の遺産分割について知っておきましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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特別受益って何?
例えば、遺産の総額3,000万円を長男・次男・長女3人で相続するケースを考えてみましょう。この場合、各人の法定相続分は1,000万円(3000万円÷3)となります。
しかし、長女が留学資金として600万円の留学資金の贈与を受けていたとしたらどうでしょうか。単純に遺産の総額3,000万円を3等分するだけでは不公平です。
そこで、民法903条1項で「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」としています。
つまり、共同相続人の中に被相続人から特別の利益を得ていた人がいる場合、その利益を特別受益とし、特別受益を受けた相続人の特別受益分を、受益者の相続分から控除すること(持ち戻し計算)によって相続人間の公平をはかっています。
生前贈与で特別受益が認められるケース
生前贈与で特別受益が認められるのは、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本」として贈与を受けたケースです(民法903条1項)。
結婚や養子縁組のための贈与の具体例としては、被相続人から結婚の際に持参金や結婚道具などの贈与を受けた場合、養子縁組の際に被相続人から居住用の家の贈与などを受けた場合などが挙げられます。
生計の資本としての贈与の具体例としては、相続人のマイホーム資金の援助、起業するときの事業資金、大学等の留学資金の援助などが挙げられます。
ただし、特別受益に該当し、持ち戻しの対象となるかは総合的に判断されます。
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生命保険金は特別受益にならない
被相続人が相続人の一人を受取人として生命保険契約を締結し、その後被相続人が死亡したことにより相続人が多額の生命保険金を受け取った場合、その保険金は特別受益として持ち戻し計算の対象となるでしょうか。
死亡保険金請求権は、その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって、保険契約者又は被保険者から承継取得するものではありません(本来の相続財産ではありません)。このような理由などにより、原則として、生命保険金は特別受益になりません。
ただし、生命保険金がかなり高額で、生命保険金が遺産に占める割合が50%を超えるような場合には、特別受益と判断されることがあり得ます。
生前贈与が特別受益とされた場合の持ち戻し計算
例えば、遺産の総額3,000万円を長男・次男・長女3人で相続するケースで、長女が大学等の留学資金として被相続人から、600万円の贈与を受けて場合、まず、遺産の総額に特別受益分600万円を加えます。
そして、このみなし相続財産3,600万円を、法定相続分に応じて割り算します。そうすると、各相続人の相続分は1,200万円(3,600万円÷3)となります。
ただし、長女は特別受益600万円を受けていますので、長女の相続分は、特別受益分を差し引いた600万円(1,200万円−600万円)となります。
以上より、長男、次男は各1,200万円の遺産を取得し、長女は600万円(他に生前贈与600万円)の遺産を取得することになり、相続人間の公平がはかられます。
なお、特別受益が認められるのは相続人のみです。相続人以外の第三者が生前贈与等で利益を得ても特別受益にはなりません。また、特別受益を認めさせたい場合は、遺産分割の際に相続人が主張する必要があります。争いになった場合は、家庭裁判所で遺産分割調停をすると良いでしょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。