相続税対策として子どもたちへの贈与を検討しています。無駄遣いしないように、子ども名義の銀行口座を開設し、通帳と印鑑は私が保管してもいいですか?
配信日: 2024.12.10
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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名義預金とは
親が子ども名義の銀行口座に、年間110万円を入金したとします。贈与税の基礎控除は110万円なので、年間110万円までの贈与であれば、子どもに贈与税は課税されません。例えば、年間100万円を子ども名義の銀行口座に入金すれば、10年間で子ども1人あたり1000万円の現預金を無税で移転でき相続財産を減らすことができます。
しかし、親が子ども名義の銀行口座を開設し、通帳と印鑑を親が保管しているケースでは、この口座に入金しても実質的には贈与の実態はないとみなされます。
つまり、「名義預金」とは「贈与したつもりの預金」のことをいいます。形式的に親から子へ現預金を移しても、法律上、贈与は成立せず、被相続人(親)の相続財産として相続税の課税対象になります。
名義預金と認定されないためのポイント
相続税法上、贈与について、特に定義はなく、基本的に民法の規定によります。贈与は、単独行為ではなく契約です。一方が金銭などを無償で相手方に与える意思を示し、相手方が受諾することによって成立します(民法549条)。
したがって、子どもに贈与する場合、子どもがその事実を知らないと贈与は成立しません。つまり、親が子ども名義の銀行口座を開設し、通帳と印鑑を保管している状態で入金しても贈与は成立しません。
名義預金と認定されないためには、以下の対応をとりましょう。
(1) 毎回、贈与契約書を作成して、署名・捺印をする。より確実性を高めるために公正証書にする
(2) 子ども(受贈者)は、自分の作成した振込口座の通帳・印鑑を自身で管理・保管する
(3) 贈与金額は、親(贈与者)の銀行口座から子ども(受贈者)の口座へ振り込む
(4) 110万円を超える贈与は、子ども(受贈者)自身の資金で贈与税を支払う
(5) 子ども(受贈者)は通帳のお金を活用する
実態も考慮されますので、例えば、受贈したお金が長期間一度も使われていないケースなどでは、他の対応を行っていたとしても「名義預金」と認定されるリスクが残るため、子ども(受贈者)は通帳のお金を活用するようにします。活用方法のひとつとして、生命保険を活用すれば無駄遣いが防げます。
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生命保険の活用
死亡保険であれば、納税資金の確保に役立ちます。養老保険や個人年金保険、学資保険などの貯蓄型保険であれば、資産形成に役立ちます。医療保険や介護保険であれば、入院や介護のリスクに備えることができます。保険は中途解約すれば損なので、無駄遣いが防げます。
例えば、納税資金として活用する場合、契約者:子ども(受贈者)、被保険者:親(贈与者)、死亡保険金受取人:子ども(受贈者)として終身保険に加入します。そうすれば、親(贈与者)が死亡した場合、納税資金に死亡保険金(一時所得)を充てることができます。
生命保険に加入する場合、上記の留意点に加え、次の点にも注意してください。
(1) 保険料は、子ども(受贈者)の口座から引き落としをすること
(2) 贈与者は、子ども(受贈者)が加入した保険につき生命保険料控除を使わないこと
(3) 贈与を受ける際の口座を受贈者が普段利用している口座とし、その口座から保険料の引き落としをすること
以上のことを行うと、贈与がないものとされるリスクがより軽減されますので検討しましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
デジタル庁 e-GOV 法令検索 民法 (贈与) 第五百四十九条
国税庁 【誤りやすい事例6 -申告書第11表の付表3関係-】 被相続人以外の名義の財産(預貯金)
公益財団法人生命保険文化センター 生前贈与のポイント
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。