相続人が誰もいない・・・どうなる実家!
配信日: 2019.02.03 更新日: 2019.06.28
当時はバブルの絶頂期。都心部で地価が急上昇し、それが郊外にも波及していった時代です。都心に遠距離通勤するサラリーマンの姿をよく目にするようになったのもこの頃です。
当時、家を買った人は、30代から40代のファミリー世代が中心で、子どもの急増に伴い新たに小学校が建つほどの賑わいでした。そして、将来は、その子どもたちが新たに家庭を持って、町はさらに発展すると思われていました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
跡継ぎがなく目立つ空き家
しかし、代替わりの目安と言われる30年が経過し、遠距離通勤のサラリーマンは引退。その子世代の相当数が便利な場所を求めて地元を離れ、人口が大幅に減りました。
親世代も定年を機に田舎でのんびり、という人ばかりではなく、生活の利便性を求めて都心回帰する人も多く、空き家が増えました。さらに、昔からの農家や個人商店は後継者不足に悩まされ、人通りは少なく、町が年々寂しくなっていくのを感じます。
このような現象は、都心から離れた場所だからというよりも、むしろ都心に近く、昭和40年代頃の高度成長期に開発されたエリアのほうが、すでに深刻な問題になっているのではないでしょうか。
その頃に○○ニュータウンとして開発されたところでは、すでに「家の跡継ぎ」がなく、雑草が生い茂った土地に廃屋が残っているような光景も少なくありません。関東エリアの例ばかりで恐縮ですが、実家の相続をめぐる状況は、都市部の一部を除けば他のエリアでも大差ないかと思われます。
こうした事情などによって放置された空き家が社会問題化するなか、空き家の管理の適正化に向け、平成27年に「空家等対策特別措置法」が施行されています。
この法律により、空き家の適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告などの行政指導を行うことができ、それでも状況が改善されなかった場合は改善命令を出せるようになりました。
負の遺産のなすり付け合い
大都市圏など相対的に土地の相続税評価額が高いところでは、相続税が有利になる「小規模宅地等の特例」の適用を受けるために、早く遺産分割を進めなくては、という意識があります。また、資産価値の高いところは売却しやすいので、空き家にせずに現金化して相続人で分けることもできます。
問題は、買い手が付かない不動産です。最近では、「負動産」とも言われます。いざ相続が発生すると、こうした負の遺産のなすり付け合いが始まることがあります。
法律上、家の持ち主が亡くなると、跡継ぎの有無に関わらず、法定相続分通りに相続されることになり、相続人全員による管理義務が生じます。たとえ「実家は兄が相続して弟の私は他の資産だけ」という話になっていても、遺産分割が確定するまで相続財産は共有なのです。
本来、遺産分割がまとまらなければ相続人全員による「共同相続登記」をしたほうがよいのですが、実際は、不動産が死亡した人の名義のまま相続登記されずに放置されるケースが少なくありません。
そして、相続を先送りしているうちに次の相続が発生し、しまいには会ったこともない人が、法律上、その不動産を共有することになってしまうことがあります。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
相続放棄しても免れない管理責任
あれこれ考えるのは面倒だから、相続を放棄するという方法もあります。現金預金や換金できる資産がわずかしかなければ、相続手続きがわずらわしくなる気持ちも分かります。ただ、相続を放棄するには、相続が発生したことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをしなければなりません。
相続放棄が確定すると、相続開始時に遡って相続人でなかったことになります。そのため、1人の相続放棄によって相続人が大きく変わることがあります。
例えば、親が亡くなって子が全員相続を放棄すると、その子に子(被相続人の孫)がいても相続権は移らず、一般に被相続人である親の兄弟姉妹が相続人となります。親の兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その子(被相続人の甥や姪)が代襲して相続人となります。
したがって、相続放棄をした場合、次順位の相続人に伝えておかないと、空き家の管理をめぐって親族間でもめる原因になります。甥や姪からしてみれば、いきなり空き家を相続することになったと言われても困ってしまいます。この場合、甥や姪が相続を放棄すると相続人はだれもいなくなります。
相続する人がなく管理できない場合、最終的には、家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てを行い、その管理人に相続財産を引き継ぐという方法もありますが、手続きと費用をだれが負担するのかという問題も生じます。
また、法律上、「相続放棄した人は、その放棄によって相続人となった人が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を管理しなければならない(民法940条)」とされています。
相続放棄したからといって、すぐに管理責任を免れられるわけではありません。そうならないためにも、実家の相続は早めに対策を打っておく必要があるのではないでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部