相続税対策として、孫に「毎年100万円ずつ」生前贈与しています。110万円までは「非課税」で贈与できると聞いたので、税金を取られることはないですよね?
配信日: 2024.12.17
本記事では、生前贈与の基本ルールについておさらいし、孫へ贈与するときの注意点について解説します。
執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)
FP2級
孫への生前贈与のメリット
相続税対策として、子ではなく孫へ生前贈与を行う方法はこれまでもたびたび活用されてきました。贈与の中でも「暦年課税制度(暦年贈与)」であれば、1年間で110万円まで非課税での贈与が可能です。
大切な孫に財産を渡したいという気持ちで贈与を行う人も多いですが、生前贈与は相続とは異なり、孫が資金を必要とする時期に少額ずつお金を渡せることもメリットです。さらに、孫への贈与は子への贈与よりも、相続税のうえでメリットとなる場合があるのです。
2024年1月1日の税制改正により、相続人に暦年贈与した場合は、図表1のように相続財産の加算対象期間を、これまでの相続開始前3年以内から7年以内にする変更がありました。
図表1
国税庁 令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります!
例えば、Aさんが2024年から毎年100万円を生前贈与して、2031年に死亡した場合を考えてみます。Aさんが子に対して暦年課税による生前贈与をしていた場合、亡くなる前3年以内の贈与は全額持ち戻しとなるため、2028年から2031年までに贈与された300万円は相続財産に加算されます。
一方、亡くなる前4~7年の贈与に対しては100万円を引いた額が加算されるため、2024年から2028年に贈与された400万円については、100万円を差し引いた300万円が相続財産に加算されます。
同じ金額を孫に生前贈与していた場合は、孫への生前贈与は生前贈与加算の対象外のため、相続財産への持ち戻しが発生しません。
ただし、孫は本来の相続順序を1回分飛ばすため相続税の節税になりますが、その場合、2割加算が適用されます。これは順当に相続した人と比べて公平性を欠くことのないようにするためのもので、最終的な税額に2割加算が反映される仕組みです。
生前贈与における注意点とリスク
しかし、生前贈与を行う際は注意点もあります。次のようなケースは生前贈与とみなされず、孫への贈与であっても、相続財産として扱われたり、加算税の対象となってしまったりする可能性があります。
●名義預金とみなされる場合
●定期贈与とみなされる場合
●贈与と認められない場合
贈与とみなされない可能性について、1つずつ詳しくみていきましょう。
名義預金とみなされる場合
祖父母が孫の預金通帳を作成し、毎年100万円ずつ振り込んで後から渡すという贈与の方法をとるケースがよくみられます。贈与では、あげる人ともらう人双方の同意が必要となるため、孫が知らないまま振り込まれているお金は贈与とみなされません。
この場合は、口座が孫名義でも祖父母自身の預金(名義預金)とみなされてしまいます。贈与ではないと判断されると、贈与していた資金が相続財産として再計算されることになり、加算税の対象となる可能性があります。
定期贈与とみなされる場合
暦年贈与として生前贈与を行うときは、毎回贈与契約を結んでお金を渡す必要があります。毎年、同日に同じ金額が孫の口座へ送金されるなど、機械的な贈与の場合は、定期贈与とみなされる可能性が高いでしょう。
定期贈与と暦年贈与はお金の流れは同じですが、税法上は異なります。例えば100万円を5年間にわたって贈与する場合、暦年贈与であれば非課税で行えます。
一方、あらかじめ500万円と総額を決めて、5年間に分けて贈与するという考え方が定期贈与です。この場合は、暦年贈与ではないので、110万円までの控除が使用できず、贈与税を支払う必要があります。
贈与と認められない場合
贈与では、あげる人ともらう人が承諾していれば口頭の約束でも成り立ちます。しかし、暦年贈与である証拠の書類として、贈与契約書を毎年作成しておくと安心です。
万一、税務署の調査が行われたときには、贈与の事実を証明する書類として贈与契約書が役立ちます。贈与が事実であっても、贈与契約書がないために贈与を否認されると、追徴課税となる可能性があります。
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まとめ
孫への生前贈与は、将来的な相続税の節税のためだけでなく、大切な孫への愛情の形でもあります。
しかし方法を間違えると、相続が発生したときに税務署の調査が行われたり、相続税が増え加算税まで求められたりする可能性があるため注意が必要です。名義預金や定期贈与などとみなされないよう、適切な方法で孫への贈与が進められるといいですね。
出典
国税庁 財産をもらったとき
国税庁 令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります!
国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
執筆者:古澤綾
FP2級