生前贈与を考えたいけど、相続税が心配……。「相続時精算課税制度」を使うときに知っておきたい注意点とは?
配信日: 2025.01.25
この記事では、制度の概要とそのリスク、適用時に押さえるべき注意点を詳しく解説します。節税効果を最大化するための判断材料としてお役立てください。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
目次
小規模宅地等の特例の適用ができなくなる
小規模宅地等の特例は、被相続人の居住用等の宅地などを相続する際、一定の要件を満たしていれば、その評価額の80%を減額した上で、税額が算出される制度です。
制度の適用には様々な要件があり適用は簡単ではありませんが、80%という大幅な減額を受けられるという制度なので、相続時には適用の可能性を検討する人もかなりいます。
この特例は、相続または遺贈によって土地を取得した場合に適用が可能ですが、贈与の場合は適用されません。従って、相続人に生前贈与をする宅地などについて、相続時精算課税制度を選択すると、小規模宅地等の特例は適用できなくなります。
相続時精算課税制度は、評価額の高い宅地を相続する可能性のある人にとっては、大きな節税効果があります。その適用要件を満たす可能性があるのであれば、相続時精算課税制度を使うメリットと、小規模宅地等の特例を使うメリットとを比較して、どちらの方がより有利であるかを見極めた上で、対応する必要があります。
なお、念のために追記しておきますが、現金等の贈与時に相続時精算課税制度を使っても、それらの宅地などの贈与に使っていなければ、該当の宅地などに小規模宅地等の特例を適用することは可能です。
登録免許税や不動産取得税が、相続の場合と比べて高くなる
相続時精算課税制度によって不動産の贈与を受けると、登録免許税や不動産取得税がかかります。
登録免許税は、相続の場合、固定資産評価額の0.4%で済みますが、贈与の場合は2%が課税されます。また、相続すると不動産取得税は原則発生しませんが、贈与の場合は課税されます。
すなわち、不動産を相続時精算課税制度の対象とすると、相続時に受けられるはずの優遇税制が受けられなくなるので注意が必要です。
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孫を相続時精算課税制度の対象にすると、相続税が2割増しになる
相続時精算課税制度の贈与の対象は、子だけではなく、孫にすることも可能です。孫を対象にした場合、相続税が2割加算されるので、注意が必要です。
暦年贈与への変更ができない
一度、相続時精算課税制度を選択すると、あとで従来の暦年課税制度に戻そうと思っても、それはできません。そのため、将来的に問題のないことを確認した上で、届け出をする必要があります。
まとめ
相続時精算課税制度は、生前贈与を活用した資産承継に有効な制度ですが、適用にあたってはデメリットを十分に理解する必要があります。小規模宅地等の特例が適用できなくなる、登録免許税や不動産取得税が相続より高額になる、孫への贈与で相続税が2割増しになるなどの注意点があります。
また、一度制度を選択すると暦年課税への変更ができないため、慎重な判断が求められます。制度のメリット・デメリットを比較検討し、相続時の優遇税制とのバランスを考慮することが大切です。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー