<相続税対策>相続額に差をつける「遺留分」と「寄与分」の考え方
配信日: 2017.08.16 更新日: 2021.05.17
相続の基本配分は「法定相続」
被相続人となる父親が、長男夫婦の世話になったため、他の兄弟より多く、できれば全額、財産を相続させたいと考えたとき、果たして可能でしょうか。ここでは、4人の子のうち長男は同居し、先に亡くなった妻の介護などで大変世話になっていたが、他の3人の子は独立し別居、ときどき顔を出す程度、というケースを考えます。相続財産は、金融資産を含めると8千万円ほど確認できました。
とくに相続に関して問題が起きないときは、法律の趣旨に沿って決められます。これを「法定相続」といい、配偶者が亡くなっており子4人で法定相続する際は、それぞれ4分の1ずつになります。例えば、8千万円の遺産を4人で分ければ、相続額は1人2千万円ずつになります。貢献度などは考慮されずに決まります。
相続人の最低限の権利「遺留分」
しかし財産を譲る側が、「財産配分に差をつけたい」「あの子には財産を譲りたくない」「法定相続人以外の人にも贈りたい」と考えたとき、どれだけ相続額に差をつけられるでしょうか。例えば「財産全額を1人の相続人だけに譲る」という内容の遺言書は、果たして有効になるでしょうか。
もし1人に財産の全額贈るという遺言状を生かすと、他の法定相続人は通常の遺産相続ができなくなります。そのため、このような内容の遺言状が見つかっても、遺言状通りの極端な遺産配分はできません。法定相続人には、最低限の保障が得られる仕組みがあり、遺言状の効力より優先されるためです。
その保障額は、法定相続分の2分の1に当たる額で、法律で決められたこの権利を「遺留分」といいます。もし4人とも2千万円ずつ法定相続分があるケースに当てはめると、遺留分は1千万円ずつとなります。法定相続人であれば、必ずこの額は相続できる仕組みです。ただし、遺留分の権利のある人がこれを放棄することで、他の相続人の取り分を増やすことも可能です。
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貢献度が高い人が得る「寄与分」
「介護で献身的な協力をした」「家業を助け財産形成に協力した」といった人が、他の相続人より多く遺産相続が認められる仕組みも認められています。これが「寄与分」といわれるもので、遺言状書あれば、遺留分を侵害しない範囲で尊重され配分されます。遺言状がない場合でも、法定相続人同士の話し合いで決められます。意見が対立してまとまらないときは家庭裁判所の調停になります。
いくら1人の相続人の被相続人に対する貢献度が高くても、他の相続人の「遺留分」は守られます。先の遺産8千万円を4人で配分するケースでいえば、1人に多く遺産を配分しようとした場合、他の3人の遺留分が各1千万円ですので、それを総額の8千万円から差し引いた最大5千万円まで、寄与分として加算できます。
非相続人である親が亡くなった後では、子供同士の話し合いに配偶者なども口出しをし、寄与分をいくらにするか紛糾することがよくあります。とくに介護があった場合に、その貢献度をどう評価するかで、意見が対立します。もし親が特定の子に対して、寄与分として多くの金額を相続させたいときは、親の生前に話し合いをもち、遺言書を作成しておくと穏便に収まります。