更新日: 2019.06.21 相続

遺産の中身が原因で、相続トラブルになる

執筆者 : 黒木達也

遺産の中身が原因で、相続トラブルになる
相続財産の多くが現金や預金の場合は、相続人が多くても配分方法はそれほど難しくはありません。
 
ところが、分けることが困難なものや、買い手がつきそうにない不動産が多い場合は結構大変です。それがもとでトラブルになることもあります。
 
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黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

黒木達也

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執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

先祖名義の土地や山林がある

地方出身者の父親が亡くなった後、調べてみると父の先代が住んでいた土地や山林の名義がそのままになっており、父親が一切相続手続きをしていませんでした。おそらく登記費用が面倒だ、という理由でそのまま放置していた可能性が高く、父親は遺産分割の協議もしていなかったと思われます。最近こうした事例はかなり見られます。
 
実際に相続しても、どの程度利用価値があるかも特定できず、相続に消極的にならざるを得ません。都会で生活している人にとっては、利用価値の乏しい地方の不動産は全く魅力がないからです。
 
しかし、放置しておくわけにもいかず、遡って遺産の分割協議をする必要があると思われます。ただし誰の名義にするか、相続人が多い場合でさえ手を上げる人がおらず、押し付け合いトラブルになる可能性があります。その後に控えている納税などを考えると、皆が尻込みするのも当然です。
 
このような登記されていない土地が、日本全国には九州の面積を超えるほどの土地があるとされ、政府がその対策に乗り出し始めました。具体的には、こうした土地に対して「登記の義務化」を進める政策で、早ければ今年中に国会に法案が提出される見込みです。
 
地方のこうした土地には、家屋だけでなく農地であっても耕作放棄地に近い土地もあり、所有権がらみで、土地の利用方法が極めて制限されています。こうした土地を公共目的で活用する手法も検討されています。相続に意思のない土地に関しては、行政が無償で引き取り、公共目的に活用する案も検討されています。行政の対応を見ながら、相続と登記をどうするか、検討すればいいと思います。
 

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評価困難な書画・骨董がある

書画・骨董は、趣味の世界では高価に感じる人が多い半面、興味のない人にとってはそうは思えない場合もあります。このようなものが相続対象になっていると、当事者はその評価が出来ません。鑑定士などに依頼して評価額を正確に把握した後に、相続人同士で配分するか、全額現金化するかが、容易に決められれば比較的トラブルにはなりません。
 
ところが、これらを家宝として持ち続けるか、この際処分・現金化して配分するか、相続人の間で考え方が異なる場合は、トラブルになります。
 
また、勝手に気に入った骨董品を分け合ってしまっても面倒なことになります。まず評価額がわからないために、相続税の申告で悩みます。さらに分け合った骨董品の価値が後で判明したことで、高い骨董品を相続した人と二束三文の骨董品を相続した人との間で、トラブルになることもあります。
 
専門家に評価を依頼し、それをもとにした対応が望まれます。
 

家族名義の預金通帳が見つかる

相続税の申告に際して、最近では「名義預金」に対し税務署が厳しい眼で臨んでいます。具体的には「専業主婦の妻が5千万円以上の定期預金がある!」「中学生の孫が3千万円以上の貯金がある!」といった場合です。
 
とくに亡くなった本人が印鑑・通帳などをすべて管理していたために、引き出しが困難なときは、税務署から調べられます。相続人が気づかないでいた場合はチェックされます。相続人同士のトラブルではなく、税務署が相手のトラブルになります。
 
亡くなった父親が「家族が苦労しないように!」との親心で行っていた行為ですが、すべて相続税の課税対象になります。名義は変わっていても、すべて亡くなった人の相続財産に計算されます。これを防ぐには、最低限でも印鑑・通帳は必ず名義人が管理し、入金・出金を行っていることが必要です。
 
また、預金額が多くなるときは、面倒でも贈与契約書を必ず取り交わし、年間110万円以上の贈与になるのであれば、贈与税の支払い実績をつくっておくとよいでしょう。
 

入居率の悪いアパートがある

父親が相続税対策の一環だとして、郊外に所有する土地に銀行から借入れをして建てたアパートが相続対象です。予定通りの入居率が確保できれば問題はないのですが、周囲に同様のアパートが林立し家賃を下げても埋まらず、文字通りの「負動産」が残りました。相続しても「持ち出し」になるので、誰も相続を希望していません。
 
強引な貸付で話題となった事例でも明らかなように、「相続税対策として更地よりはアパートを」という手法が増加したため、思い通りの入居者を確保できず、ローンの返済で苦しんでいる人は多いと思います。郊外の空き地にアパートを建設することはハイリスクな選択で、結果として誤った相続税対策になると思います。
 
今後も収益の改善が望めないと思われるので、できれば相続時に売却するなどの手を打つのが望ましいといえます。相続希望者がいなければ、ローンの残高も考慮しつつ、土地を含め売却し、ローンの返済に充てることを検討すべきでしょう。
 

株式・投資信託の比重が高い

亡くなった親は株式投資が好きで、現金や預金より株式や投資信託など比率が相続財産の中で高い場合も、結構面倒です。その理由は、有価証券の価格は日々変動するため、相続発生時の価格と遺産分割決定後の価格が変わってしまうからです。
 
公平に配分しにくい資産になります。有価証券を売却して納税しようと考えている人にとっては、売却時の価格の下落が大問題です。さらに価格が上がり恩恵を受ける人と損をする人との間に、不公平感が生まれトラブルになることがあります。
 
しかし、株式や投資信託などの金融商品は、日々価格が変動するものと考え、価格の下落している時期には売却をせずに多少の期間は保有するくらいの意識は持っておく必要がありそうです。
 
執筆者:黒木達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト
 

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