相続法改正によって変化したものを再度チェック!
配信日: 2019.05.29 更新日: 2019.06.14
今までの遺産分割では、住む家はあるがお金がなく生活に困るといった不安がありました。そのリスクを軽減するための、相続法の改正になっています。
執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
配偶者居住権って何?
例えば、家族構成が夫、妻、子ども1人だとすると、もし、夫が亡くなった場合、配偶者の法定相続分は遺産全体の2分の1、子ども1人も2分の1となります。
自宅不動産が財産の大部分を占めるときには、配偶者は自分の住む場所を確保するために自宅不動産を取得することになります。そうすると、残りのお金で生活していくことになるため、将来の生活に不安が残ることになります。
または、遺産分割するために家を売却してお金に換えることも考えられますが、住む家がなくなります。
例えば、下記のケースでは
相続人→妻(遺産全体の2分の1)と子ども1人(遺産全体の2分の1)
遺産→自宅(2000万円)、預貯金(3000万円)の場合
相続分→妻(2500万円)、子ども1人(2500万円)
改正後の自宅不動産の価値は配偶者居住権と負担付所有権の価値に分けることができます。
仮に、配偶者居住権の価値(※1)が上記のように1000万円と評価された場合は、預貯金は1500万円を取得することが可能となります。ただし、配偶者居住権の価値の計算は煩雑となるため、できれば、税理士等に依頼するなども必要です。
配偶者居住権の価値は1000万円となり、居住する家(自宅)の配偶者の持ち分を約50%に圧縮できたことになります。
配偶者短期居住権とは?
夫が亡くなり、妻が相続開始のときに夫所有の建物に住んでいた場合に、夫の意思とは関係なく居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得することができます。取得するのは以下の2つの場合があります。
1.配偶者が夫所有の建物の遺産分割にかかわるときは、誰が相続するのか、居住建物の権利が確定するまでの間、または相続開始から最低6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までは居住建物を無償で使用する権利があります。
2.夫が居住建物を配偶者より他の人に遺贈した場合や、配偶者が相続を放棄した場合には、他の人が居住建物の所有権を取得したときに、配偶者に「配偶者短期居住権」の消滅を申し入れることができます。配偶者は申し入れを受けた日から6ヶ月間は無償で住むことができます。
今までの相続法では、上記のような場合には配偶者が居住することを保護されない現状でした。期間が6ヶ月あると、次の段階に進むための準備ができるのではないでしょうか。
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遺言書の書き方が変わった?
遺言書の作成の方法としては、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがあります。この中から自分に合う遺言書の作成方法を選びます。
この3つの中で変わったのが「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言は自分で作ることができるものですが、全てのものを自書(手書き)で作成し、保管も自宅というケースもありました。そのため、せっかく作成しても紛失してしまったり、書き換えられたりすることもありました。
今回の改正では、全て自書(手書き)だったものを、一部パソコンで作成することができるようになったのです。遺言書は自書(手書き)ですが、遺言書に添付する財産目録はパソコンで作成でき、通帳のコピーなど自書によらない書面を添付することで「自筆証書遺言」が作成できるようになります。
また、自宅ではなく、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が作られました。
約40年ぶりの相続法の改正です。法律も時代に合わせて変わっていきます。現在は平均寿命も延びて高齢化がますます進んでいます。残された配偶者の老後を守る手だてが必要です。今回は、配偶者の老後の環境を考えた改正ではないでしょうか。
住む家とお金をバランスよく相続することは大事なことです。自分の今後を考えるきっかけになれば幸いです。
【施行される日】
1.自筆証書遺言の方式緩和→平成31年1月13日から施行
2.配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む)や遺言書保管制度は公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める日から施行
施行日が制定されましたら、法務省のウェブサイトなどでお知らせがあります。
出典:※政府広報オンライン「約40年ぶりに変わる“相続法”相続の何が、どう変わる? 」
(※1)財務省「平成31年度税制改正の大綱(2/8)」「5その他(3)民法(相続関係)の改正に伴い、次の措置を講ずる 」
執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者