【相談】孫への教育資金は非課税になるって本当ですか?

配信日: 2019.06.10 更新日: 2019.06.13

この記事は約 5 分で読めます。
【相談】孫への教育資金は非課税になるって本当ですか?
2019年3月31日までの期限付きで導入された孫などへの教育資金贈与の非課税制度が2年間延期されました。期限の延長は朗報ですが、適用対象が厳格化されましたので解説いたします。
 
西川誠司

執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)

2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、キャリアコンサルタント

ウェディングドレスショップ「Atsu Nishikawa」を17年間経営。
接客の中でこれから結婚するおふたりのお金の不安や子供を授かったときの給付金や育児休業のこと、また親からの贈与や年金のことの悩みを伺い、本格的にファイナンシャルプランナーとして活動を始めました。
みなさまの「小さな疑問や不安」を分かりやすく解決していくことを目指しています。

教育資金贈与の非課税制度とはどんなもの

まずは教育資金贈与の非課税制度についてお伝えいたします。
 
2013年度の税制改正で導入され、2019年3月31日までの期限付きで、祖父母などの直系尊属から30歳未満の孫(受贈者)が教育資金として一括贈与を受けた場合、1500万円まで贈与税が非課税になる制度です。
 
学校の入学金や授業料、制服など学校に関わるものが対象で、それ以外の塾、スイミング等の習い事にかかる費用、運転免許試験受験料、予備校代、通学定期代、留学費用(細かな規定あり)などは500万円が非課税の上限となります。
 
直系尊属とは本人の祖父母、父母などで、配偶者の直系尊属からの贈与は非課税とはなりません。さらにこの制度では、金融機関で専用の口座を開設し、教育資金として使った領収書や通帳の写し、カードの引き落とし明細などを、その金融機関に提出する必要があります。
 

2019年度の税制改革での変更点は

大きな変更点はやはり期限の2年間の延長です。2021年3月31日までに申し込みをした方がこの制度を利用できます。これは良い変更点です。
 
その他の主な変更点を、厳しくなった点を中心にまとめてみます。
(1) 受贈者の前年の合計所得金額が1000万円を超える場合は対象外となります。受贈者は実際に学校に通う対象者のことなので、1000万円を超えるケースは少ないでしょう。
 
(2) 23歳になった後の一部の教育費は対象外です。一部の教育費とはいわゆる「習い事」にかかる費用です。働きながら料理教室に通ったり、スポーツジムに通ったりするための費用は対象外となります。
 
23歳未満の受贈者の場合は非課税ということです。23歳以上でも教育訓練給付金支給の対象となる教育訓練の受講費用は非課税です。
 
(3) 30歳の時点で受贈者が在学中であれば、引き続き非課税措置期間を最長40歳まで延長できます。
 

【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断

教育資金口座の開設と預入

教育資金贈与の非課税制度を利用する際の流れを見てみましょう。まずは制度を活用するための「教育資金口座」を開設します。銀行や信託銀行などの金融機関で開設できますが、取り扱いのない金融機関もあります。
 
口座開設後、教育資金の預入をする前に口座を開設した金融機関経由で「教育資金非課税申告書」を管轄の税務署に提出しなければなりません。提出は金融機関が行ってくれます。その後、教育資金として最大1500万円まで預け入れることができます。
 

教育資金の支払いによる提出書類

非課税となる費用の支払いに対しての提出書類は以下の通りです。提出書類は支払い方法によって異なります。振り込む相手・金額・振込日時・内容が分かるものを印刷して提出することが原則です。
 
領収書があれば間違いありませんが、次のようなものもあります。
 
インターネットバンキングの振込完了画面を印刷した書面、ATMの利用明細、振込依頼書兼受領書、引落口座の通帳コピーおよび口座振替依頼書、クレジットカードの利用明細(WEBの場合はその利用明細画面を印刷した書面)、月謝袋(使い回しの場合はコピー可)。
 
基本的には全て書面にて提出しなければなりません。振込完了画面の印刷書類でも構いません。
 
ただし、提出期限があります。
(1) 教育資金を専用口座以外の口座から引き出して払った場合(立て替えた場合)は領収書記載の支払い日から1年以内です。
(2) それ以外の場合は翌年の3月15日までに提出する必要があります。

 

教育資金口座を終了する際は

教育資金口座を終了するのは、どんな時なのでしょうか。
 
(1) 受贈者(預金者)の30歳の誕生日の前日。ただし、30歳に達した時点で在学中であれば、この限りではない。
(2) 受贈者(預金者)が死亡した日。
(3) 口座の預金残高が0円となり、受贈者(預金者)と口座解約につき合意があった日。
(4) 2019年3月30日以降で本口座の残高が0円となった日 等です。

 
口座管理契約が終了する時点で口座に残高がある場合は、その残高に対して課税され、口座契約終了年の贈与税の課税額に加算されます。
 
さらに、残高の有無に関係なく、非課税対象とならないもののために支払った分に関して(たとえば、食事代に使った、宝石を買ったなど)は課税されるので、口座残高に加算した金額に対して課税されます。
 

まとめ

一括で1500万円の贈与ができる教育資金贈与の非課税制度は、人気のある制度です。教育費にはとても多くのお金がかかることは皆さんご存知でしょう。
 
ただ、気をつけなければならないこともあります。それは30歳になった時点で、教育費以外に使った場合、贈与税を支払わなければならないことです。
 
そんなことするわけないと思っていても、生活費に回してしまったり、受贈者が大学進学をしない、あるいは留学先で学校を辞めてしまったりすると、口座にお金が残っていればそこから贈与税を払えばすむのですが、残金がないのに税金を払わなければいけない、なんてケースも少なくありません。きちっと計画を立てることが大切です。
 
出典
文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」(領収書等に関するチェックツール 平成31年4月1日現在)
 
執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)
 

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集