遺言書が見つかっても、スグに開封はNG これってなんで?

配信日: 2019.07.04

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遺言書が見つかっても、スグに開封はNG これってなんで?
相続が話題になることが増えました。「相続を“争続”にしないための有効な手段は、遺言書を書いておくことです」というアドバイスを、あちらこちらでみかけます。いざ書いてみよう!実践する時の注意点を考えます。
 
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

遺言書が見つかっても、スグに開封はNG

相続財産が多い場合だけでなく、少ない場合も“争続”になるケースが多いので、遺言書を書いておくことはお勧めです。一般的な遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの方法があります。
 
簡単に書ける方法が「自筆証書遺言」です。これは名前のとおり自筆で書きますが、今年1月からパソコンで作成した財産目録や預金通帳のコピーが、添付書類として認められるようになりました。それぞれに署名捺印は必要です。
 
作成に証人も要りませんので、自分の好きな時に作成することが出来ます。来年7月施行で、法務局で保管してもらえる制度が創設されましたので、これまでのような紛失や破棄の心配は軽減されます。
 
自筆証書遺言で気をつける点は、開封の前に家庭裁判所で検認を受ける必要があることです。
 
遺言書を見つけたら、内容が気になりますのでスグに開けたくなりますが、ここは我慢が必要です。被相続人(亡くなった人)の住所地を管轄する家庭裁判所で「検認」(中身の確認)の手続きをしなければいけません。
 
この検認の手続きには、申立書・遺言者の出生から死亡時までの戸籍謄本・相続人全員の戸籍謄本が必要です。申立てから約1週間~1か月後、家庭裁判所から検認の期日が相続人全員に通知されます。
 
検認の当日、申立人(遺言書を発見した相続人・保管している人)は遺言書と印鑑を持参します。出席した相続人と家庭裁判所の職員の立ち合いのもと遺言書を開封し、内容を確認します。
 
その後「検認調書」が作成され、相続の手続きに必要な「検認証明書」を発行してもらいます。この流れをみると、想像以上に手続きに時間がかかることが分かります。
 
先日「すぐ死ぬんだから(内館牧子 著)」を読みました。その中で、主人公の夫が亡くなります。残されたのは主人公と長女、長男です。そこで自筆遺言書が見つかります。「お父さん、何のために遺言書なんか書いたんだろう」と開けてみると、今まで知らなかった別宅の存在が発覚する、という内容でした。
 
これは小説の世界かも知れませんが、しっかり「検認」を受ける場面も描かれていました。面倒なようでも、後々問題が起きないために「検認」は必要だと諭された気がしました。
 

公正証書遺言はハードルが高いの?

遺言を書きましょう、という話の中で、「やはり公正証書遺言がお勧め」と言われることが多いです。これには2つの理由があります。
 
(1)作成時に公証人が関わりますので、内容に不備があり効力を発揮出来なかったというリスクを避けられます。
(2)原本は公証役場に保存されますので、手元に保管したはずの“正本”を紛失しても大丈夫です。改ざんさせる心配もありません。

 
公正証書遺言を作成する流れは、以下のようになります。
 
<事前の準備>
・遺言書の原案を考える
・証人を決める 2人以上必要
・公証人に依頼し、打合せをする
・必要な書類を揃える
<当日>
証人同席で、公証人役場で遺言書を作成する
公証人が遺言者と証人の前で遺言書の原案を読み上げ、内容を確認する
遺言者、証人、公証人が著名捺印する
・・公正証書遺言が完成・・
原本は公証役場に保管。遺言者に正本が交付される
 
公正証書遺言を作成する時に必要な書類は、遺言の内容や財産により異なりますが、(1)遺言作成者の実印および印鑑証明書 (2)遺言作成者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本・相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票 (3)財産目録 (4)不動産の場合は、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書 などが代表例です。
 
検認の必要はありませんので、相続発生後の手続きを速やかに始めることが出来ます。自筆証書遺言に比べて費用が掛かりますので、事前に調べておくことは必要です。
 
2つの遺言書について見てきました。「遺言書を書こう」と一念発起して、まずしなくてはならないことは、相続資産の棚卸です。その上で「どの財産を誰に」を考えます。財産aはAさんに、財産bはBさんにと決めることになります。
 
どうしてそのように分けたのか、その理由や思いを「付言」として最後に残すことは大切です。残された家族に気持ちも伝えることで、遺言書は完成するのではないでしょうか。
 
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
 

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