浪費癖のある弟に親の遺産を渡すのが不安…すぐに使い果たさないようにするにはどうすれば?
配信日: 2020.08.30
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
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財産管理の心配
三男は、いま生活保護を受けています。遺産の2000万円を大切に使えば、生活保護が無くても生涯の生活費は賄えるはずです。兄2人は、経済的に安定しているので、三男の自立に遺産を役立てたいと考えています。
問題は、三男の財産管理能力です。経済的に困窮した原因の1つが浪費でした。仕事が順調なころは、高級な外車を乗り回し、相当な散財を繰り返していました。2000万円は大金ですが、浪費すればすぐになくなります。
浪費癖のある方は、計画的な消費ができません。一時期に大金を手にすると、短期間で使い果たし、さらに消費が止められなくなり借金をしてしまう場合もあります。三男に遺産をあげたいけど、あげても本人のためにならないかもしれないというジレンマに陥っています。
遺産の全てを三男に取得させるには
遺言が無いのであれば、相続財産は遺産分割協議により分割方法を決めることになります。相続人全員の合意が必要ですが、法定相続分と関係なく決めることもできます。相談者の場合、遺産分割協議書により遺産の全てを三男に取得させることは簡単です。
しかし、取得した財産は所有者が自由に使うことができます。身内であっても使い方を制限することはできません。
対策1. 兄が取得して三男に贈与
兄が遺産を取得し、そこから三男に必要な生活費を贈与。こうすれば三男が大金を一度に手にすることは無いので、浪費を防ぎ、安定した生活が可能になると考えられます。年間110万円までは贈与税もかかりません。ただし、以下を注意する必要があります。
・税務署に定期贈与とみなされると、さかのぼって贈与税を課税されるリスクがある。
・贈与者が認知症になると、贈与できなくなる。
・贈与者が死亡すると、贈与者の相続財産となる。
対策2. 通帳と口座印を兄が管理
遺産を三男の銀行口座に入金し、印鑑と通帳を兄が管理します。三男が取得した遺産の管理を兄に委任する「財産管理委任契約」です。所有者は三男ですから、贈与税の問題はありませんし、死亡時には三男の相続財産として扱われます。ただし、以下の点に注意が必要です。
・三男が認知症で意思能力がなくなると、委任契約は終了し、口座はロックさせる。
・三男の一方的な意思表示で兄の管理を終了させることが可能。
対策3. 民事信託で財産管理
民事信託を使えば、財産の利益を受ける権利と管理処分をする権利を分けることが可能です。三男には利益を取得させますが、財産の管理処分は兄。税法上は、財産権を持つ受益者(三男)を所有者とみなして課税されます。
まず、三男が相続人の協議により遺産を全て取得します。取得の条件として、取得した財産を信託財産として民事信託を組成する旨を遺産分割協議書に付記すれば確実です。
その後、長男か次男が受託者となり、三男と信託契約を締結します。金銭は受託者名義の口座で管理し、必要な生活費を三男に給付します。
民事信託のメリット
・委託者=受益者なので贈与税は発生しない。
・名義は受託者になるので、三男は勝手に使えない。
・受託者の認知症や死亡には、二次受託者(おい・めいなど)を設定することで対応できる。
・三男が亡くなった後の残余財産の分割方法も指定できる。
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まとめ
財産は、所有者の意志により管理処分されます。所有権は最強の物件ですから、本人のためであっても制約をかけることは困難です。財産管理の委任で支障がある場合には、信託による財産管理が選択肢になります。信託財産は所有者のいない特別な財産なのです。
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士