更新日: 2020.08.05 その他保険
認知症保険の選び方って?チェックしておきたいポイントとは
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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認知症保険開発の背景
介護が必要となった主な原因の第1位は認知症です。認知症高齢者は年々増加し、2012年は462万人でしたが、2025年には730万人になると推計されています。実に高齢者の5人に1人が認知症になると予想されています。これを背景に生保各社では相次いで認知症保険を開発しています。
軽度認知障害(MCI)は、認知症患者数と同程度の人数がいる(2012年時点で約400万人と推計)といわれています。
MCIになると年間10~30%が認知症に進行するという研究データがあります。一方、正常なレベルに回復する方もいます(5年後に38.5%が正常化したという報告あり)。
つまり、MCIの段階で適切に対処できれば、認知症への進行予防や正常なレベルに回復することが期待できます。
政府が取りまとめた「認知症背策推進大綱」(認知症施策推進関係閣僚会議 令和元年6月18日)においても、認知症を「誰もがなりうる」として、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」ことを「予防」と定義し、認知症の人が暮らしやすい社会を目指す「共生」とともに2本柱の1つとして初めて目標に掲げ、認知症の進行段階に応じたさまざまな施策を掲げています。保険会社でも保障内容をMCIまで拡大しています。
認知症保険の選び方
医療保険に対するがん保険のように、支払条件を認知症に特化した介護保険が認知症保険です。通常の生命保険に加入する際よりも健康状態に関し少ない告知で加入できます。各社の認知症保険を比較する上で、特に、支払条件、不担保期間(保障されない期間など)の確認が大切です。
また、MCIを保障するかもチェックしましょう。MCIは、正常と認知症の中間の状態で、物忘れはあるが日常生活に支障がない状態です。MCI保障は認知症予防の費用として利用できます。
さらに、認知症をサポートする各種のサービスを提供する保険会社が多いので、どのような付帯サービス利用できるのかも確認すると良いでしょう。
認知症保険のチェックポイント
■支払条件
認知症(診断)保険金は、大まかには(1)認知症になった場合と(2)認知症になり公的介護保険の一定の要介護状態になった場合に保険金が支払われる2つのタイプがあります。その他、(2)に加えて認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅲ以上を条件とするものもあります。
保険会社により認知症の判定基準が異なりますので、パンフレットなどで認知症の定義を確認しておくことが大切です。一定の要介護状態に関しては要介護1以上を条件とするものが多いようです。要介護認定にはより軽度の要支援1以上や、要支援2以上とするものもあります。
■不担保期間
多くの認知症保険では認知症と診断されただけでは保険金が支払われず、責任開始の日から一定期間は保障をされないか、給付が制限される期間を設けています。90日、180日、1年、2年などさまざまです。
認知症保険の商品例
4大生命保険会社の認知症保険の商品概要について見てみましょう。各社、支払条件や不担保期間などに大きな差が見られます。
■A社の認知症保険
・支払条件
所定の認知症と医師によって診断確定された場合に、認知症診断保険金が支払われます。所定の認知症軽度障害と医師によって診断確定された場合は、軽度認知症障害診断保険金が支払われます。診断確定は、認知機能検査および画像検査の両方を要します。
・軽度認知症障害診断保険金について
認知症診断保険金の金額の10%となります。軽度認知障害診断保険金支払後も、認知症診断保険金または死亡保険金は全額支払われます。
・死亡保険金について
認知症診断保険金の金額の10%となります。
・解約返戻金について
認知症保障保険には、解約払戻金がありません。ただし、保険期間が終身かつ保険料払込期間経過後の場合には、認知症診断保険金額の10%の解約払戻金があります。
・不担保期間
認知症または軽度認知障害に対する保障については、責任開始の日から1年間は不担保期間となり、不担保期間が経過した後に保障を開始します。
■B社の認知症保険
・支払条件
生まれて初めて当社所定の器質性認知症と診断確定されたとき、認知症保険金が支払われます。 生まれて初めて当社所定の軽度認知障害、または当社所定の器質性認知症と診断確定されたときは軽度認知障害給付金が支払われます。
・軽度認知障害給付金について
認知症保険金の金額の10%となります。
・死亡保険金、解約返戻金について
死亡保険金・高度障害保険金、解約返戻金はありません。ただし、保険料払込方法が有期払の場合には、保険料払込期間満了後に基本保険金額×5%の死亡返還金および解約返戻金があります。
・不担保期間
責任開始日から180 日以内に診断確定された器質性認知症・軽度認知障害は保障されません。
■C社の認知症保険
・支払条件
生まれて初めて器質性認知症と診断確定され、かつ公的介護保険制度に基づき、要介護1以上の状態と認定され、その認定の有効期間中であるときに認知症保険金が支払われます。
生まれて初めて器質性認知症と診断確定されたとき、または生まれて初めて軽度認知障害と診断確定されたときは軽度認知障害保険金が支払われます。
・軽度認知障害保険金について
軽度認知障害保険金表により計算される金額(認知症保険金の金額の10%が上限)
・死亡保険金について
保険料払込期間満了後に死亡したとき認知症保険金額・軽度認知障害保険金の10%が支払われます。
・解約返戻金について
保険料払込期間中の返戻金はありません。
・不担保期間
認知症保険金・軽度認知障害保険金は、契約日から 2 年以内に支払事由に該当した場合、各特約の既払込保険料相当額が支払われます。
■D社の認知症保険
・支払条件
認知症と診断され、かつ、公的介護保険制度において要介護1以上と認定され、有効期間中であるとき認知症保険金が支払われます。
・死亡保険金、解約返戻金について
ありません。
・不担保期間
契約日から2年以内は保険料相当額しか支払われません。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー