葬儀代を準備するための生命保険について考える
配信日: 2021.03.23
60~70歳代の男性の相談者からときどき、「妻や子どもが困らないように、自身の葬儀代を準備するための生命保険を検討したい」と相談を受けることがあります。つまり、ご自身に万が一のことがあったときに、自身の葬儀代を準備するために生命保険を検討している、ということです。
では、どのように検討するのでしょうか?葬儀代を準備する手段にはさまざまな選択肢がありますが、今回は生命保険を活用するパターンを見ていくことにします。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
どのような保険商品がふさわしい?
自身の葬儀代を準備するためには、自身に万が一のことがあったときに、遺族が死亡保険金を受け取ることができる保険商品に加入する必要があります。つまり、「生命保険」ということです。では、定期保険と終身保険のどちらがふさわしいのでしょうか?
定期保険には満期がありますが、満期時には署名などの手続きを経ずに更新することが可能です。しかし、延々と更新し続けることができるわけではありません。定期保険の多くは、80歳や85歳の満期で更新することができなくなります。
定期保険とは異なり、終身保険には満期が存在しません。つまり、保険を解約さえしなければ、遺族は死亡保険金を受け取ることができるのです。つまり、自身の葬儀代を準備するための生命保険に加入したいと考えるならば、終身保険という選択に落ち着きます。
保険金はいくらにする?
では、葬儀代を準備する目的で契約する生命保険の死亡保険金は、いくらが望ましいのでしょうか?
冒頭に申し上げた60~70歳代の相談者のなかに、「死亡保険金の金額はいくらくらいを検討されていますか?」とおたずねした際に「300万円くらいかな?」と答えた方がいました。葬儀代を準備するための生命保険として、死亡保険金は300万円が必要なのでしょうか?
やはり、ここは何か目安となる数字がほしいものです。
生命保険文化センターの調査資料によると、葬儀の平均総額は184.3万円でした。つまり、平均的な葬儀を想定するのでしたら、葬儀代を準備する目的で契約する生命保険の死亡保険金は、180万~200万円が望ましいということになりそうです。
また、平均総額の内訳は、葬儀費用119.2万円、飲食費31.4万円、返礼品33.8万円となっています。
現在は、新型コロナウイルスの影響で多数の参列者を招くことは難しいかもしれませんが、もし参列者が予想よりも多くなった場合、飲食費や返礼品の費用などが増えることも考えられます。また、葬儀そのものを豪華な(?)なものにしたいということであれば、その分費用がかさみます。
このように、自身がどのような葬儀をあげたいかによっては、より高額な死亡保険金額での契約を検討することになるでしょう。
なお、返礼品とは香典返しなどのことを指します。香典返しの場合、受け取った香典のなかからお返しをすることになるかもしれません。返礼品の額については、状況によって変化があるのではないかと思います。
葬儀代を想定した生命保険を考える際には、自身の葬儀の見積もりを立て、その見積もりに見合った生命保険にする、という順序が良いのではないでしょうか。
(参考)生命保険文化センター「葬儀にかかる費用はどれくらい?」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役